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第七章 アランが父に代わって歴史の表舞台に立つ
第四十九話 懐かしき地獄(8)
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◆◆◆
そして戦いはクリスが感じ取った通りに進んだ。
開幕の挟撃はやはり伏兵の妨害によって上手くいかなかった。
ゆえにガストン軍はカルロの街への突撃に切り替えた。
その際、ガストン軍の総大将は右翼の部隊と合流した。左翼側の部隊はその時点で壊滅寸前になっていたからだ。左翼側の伏兵部隊を指揮しているのはカイルであった。
そしてガストン軍は被害を出しながらもクリス達を振り切り、カルロの街に向かって突撃した。
しかしそこまでだった。
クリスが予想した通り、ガストン達は最後の壁を、防衛部隊を突破することは出来なかった。
ガストン達の足はそこで止まり、追いついて来たクリス達とアンナ達に挟撃される形になった。
そして戦いは終わった。ガストン軍はクリスの降伏勧告を受け入れた。
◆◆◆
その後、クリスは降伏した総大将を呼び出した。
遠目からでは分からなかったが、総大将は意外に若い男であった。
二十代前半に見える顔つき。
こんな若者があのような死闘の指揮をしていたのかとクリスは思ったが、その答えはすぐに予想がついた。
だからクリスは尋ねた。
「話の前に、まずは名前を聞かせてもらえるか?」
これに若者は口を開いた。
「ガストンで構いません。我が一族はその名を継いでいますので。生まれた日に授けられた名前も別にありますが、そちらは身内でしか使いません」
それを聞いたクリスは「やはりな」と思った。
心を読むまでも無かった。世襲制にはままあることだからだ。
そしてクリスは早速本題に入った。
「……さて、貴殿を呼びつけたのは君達の今後の処遇について話し合うためだけでは無い。一つ聞きたいことがあったからだ」
これにガストンは「私に答えられることであればなんなりと」と、丁寧な返事をしたが、それが本心からのものでは無いことをクリスは感じ取った。
しかしそれは今はどうでもよかった。
だからクリスは尋ねた。
「……どうしてもっと早く降伏を受け入れなかった?」
「……」
ガストンはすぐには答えなかった。
しかし彼の心は正直であり、それを読み取ったクリスは口を開いた。
「……最初に我々とぶつかった際に勝ち目はほぼ無いと分かっただろう? なのになぜ、あんな分の悪い賭けに出た? どうして突撃なんて手を選んだ?」
「……」
ガストンはやはり答えなかった。
されどやはり、彼の心は正直であった。
クリスは感じ取った。彼の心には炎の一族に対しての不信感だけで無く、恨みのようなものが混じっていることを。
だからクリスは尋ねた。
「そんなに我々のことが信用出来ないか? 無謀な勝負に命を賭けるほどに? なぜ?」
その質問に対し、ガストンはようやく重い口を開いた。
「……『炎の一族』の一人であるあなたからそのようなことを聞かれるとは、少々驚きました。……これは悪趣味な遊びですか? 本心からの質問とは思えないのですが」
その答えはクリスにとって予想外のものであった。
だからクリスは尋ねた。
「どういうことだ?」と。
そしてガストンは答えた。
その答えを聞き、感じ取ったクリスは思った。
なんと厄介な問題なのかと。
だからクリスは誰かに相談すべきだと思った。
そして戦いはクリスが感じ取った通りに進んだ。
開幕の挟撃はやはり伏兵の妨害によって上手くいかなかった。
ゆえにガストン軍はカルロの街への突撃に切り替えた。
その際、ガストン軍の総大将は右翼の部隊と合流した。左翼側の部隊はその時点で壊滅寸前になっていたからだ。左翼側の伏兵部隊を指揮しているのはカイルであった。
そしてガストン軍は被害を出しながらもクリス達を振り切り、カルロの街に向かって突撃した。
しかしそこまでだった。
クリスが予想した通り、ガストン達は最後の壁を、防衛部隊を突破することは出来なかった。
ガストン達の足はそこで止まり、追いついて来たクリス達とアンナ達に挟撃される形になった。
そして戦いは終わった。ガストン軍はクリスの降伏勧告を受け入れた。
◆◆◆
その後、クリスは降伏した総大将を呼び出した。
遠目からでは分からなかったが、総大将は意外に若い男であった。
二十代前半に見える顔つき。
こんな若者があのような死闘の指揮をしていたのかとクリスは思ったが、その答えはすぐに予想がついた。
だからクリスは尋ねた。
「話の前に、まずは名前を聞かせてもらえるか?」
これに若者は口を開いた。
「ガストンで構いません。我が一族はその名を継いでいますので。生まれた日に授けられた名前も別にありますが、そちらは身内でしか使いません」
それを聞いたクリスは「やはりな」と思った。
心を読むまでも無かった。世襲制にはままあることだからだ。
そしてクリスは早速本題に入った。
「……さて、貴殿を呼びつけたのは君達の今後の処遇について話し合うためだけでは無い。一つ聞きたいことがあったからだ」
これにガストンは「私に答えられることであればなんなりと」と、丁寧な返事をしたが、それが本心からのものでは無いことをクリスは感じ取った。
しかしそれは今はどうでもよかった。
だからクリスは尋ねた。
「……どうしてもっと早く降伏を受け入れなかった?」
「……」
ガストンはすぐには答えなかった。
しかし彼の心は正直であり、それを読み取ったクリスは口を開いた。
「……最初に我々とぶつかった際に勝ち目はほぼ無いと分かっただろう? なのになぜ、あんな分の悪い賭けに出た? どうして突撃なんて手を選んだ?」
「……」
ガストンはやはり答えなかった。
されどやはり、彼の心は正直であった。
クリスは感じ取った。彼の心には炎の一族に対しての不信感だけで無く、恨みのようなものが混じっていることを。
だからクリスは尋ねた。
「そんなに我々のことが信用出来ないか? 無謀な勝負に命を賭けるほどに? なぜ?」
その質問に対し、ガストンはようやく重い口を開いた。
「……『炎の一族』の一人であるあなたからそのようなことを聞かれるとは、少々驚きました。……これは悪趣味な遊びですか? 本心からの質問とは思えないのですが」
その答えはクリスにとって予想外のものであった。
だからクリスは尋ねた。
「どういうことだ?」と。
そしてガストンは答えた。
その答えを聞き、感じ取ったクリスは思った。
なんと厄介な問題なのかと。
だからクリスは誰かに相談すべきだと思った。
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