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第六章 アランの力は遂に一つの頂点に
第四十六話 暴風が如く(18)
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自分が理解出来ない何かで防御された、やはり「あの男」と同じ、という事実が影となって心を蝕む。
ゆえに、足が自然と後退する。
そしてその影を払うために、光弾を連射。
相手を知れば、理解出来ればこの影は消える。弱点でもいい。それを探るための遠距離攻撃。
「あの男」とは何か違うところがあるのではないか、完璧と呼べる「あの男」ほどでは無いのではないか、そんな期待を込めた攻撃。
しかしその期待はことごとく裏切られる。
盾すら構えず、その身に受けるディーノ。
そして、その攻撃からシャロンの弱気を感じ取ったディーノは、
「でぇやっ!」
直後、踏み込むと同時に槍斧を真横に一閃した。
「っ!」
これを女は「大きく」跳び退いて回避。
やはり、
(読めなかった!)
からだ。
そしてこの一撃で気付いたことがあった。
先読み出来ない上に、
(見えない!)
のだ。
暗いせいでさらに不利になっている。
しかも相手は影を纏っているため、闇に溶け込んでしまっている。
いまの一撃はとりあえず大きく動いたおかげで避けることが出来た。
だが、
「げほっ!」
次の一撃はどうにもならなかった。
シャロンの全身に衝撃が走り、吹き飛ぶ。
破裂した内臓が振動し、痛みがあふれる。
その激痛の中で、シャロンは盾で殴られたのだと理解した。
後退による回避を読んだ、体当たりのような一撃。
まるで岩がぶつかったかのような衝撃。
背中が地面に激突し、さらなる痛みが生まれる。
が、シャロンはその痛みを振り払うかのように叫んだ。
(思い出して、そして考えなさい、シャロン!)
「あの時」はほぼ一方的に負けたが、何も得られなかったわけでは無い。
「あの男」は決して無敵というわけでは無かった!
この男も同じであるならば、あの戦いで得た情報が通じるはずだ!
そう、己に活を入れながら立ち上がる。
しかし既にディーノは目の前。
ほとんど見えずとも、接近は正確に察知出来た。
そうだ思い出した。まず第一に重要なのは、この、
(音!)
であることを。
思考の波は読めずとも、足音や、武器が空気を裂いた時に生じる音波は普通に聞き取れる。
その事実を確認するように叫びながら、シャロンはディーノが放った袈裟の一撃を大きく横に転がって回避。
そして体勢を立て直すと同時に虫を展開。
音の情報を可能な限り正確に拾うためだ。
しかしそのうちの何匹かには、別の仕事を与えていた。
その仕事とは、
(貼り付け!)
接触であった。
あの男の体は膜のような何かに覆われている。
その膜が思考の波を著しく減衰させてしまっている。
ならば、相手の皮膚に虫を貼り付けてしまえばいい。虫は、魂は膜を普通に通過することが出来る。
魂の波も影響を受けるゆえに、こちらに情報を返すには一度膜の外に出なくてはならない。なので情報の伝達は遅くなる。しかしそれでも全く読めないよりはマシだ。
シャロンはそう思い、期待していた。
が、
「!?」
その思いも直後に虚しく消えた。
ディーノが迎撃用の虫を展開したのだ。
その防御に対してこちらの無勢は明白。
仕事を任せた虫達があっという間に食い散らかされる。
その全滅を感じ取ったシャロンは、
(こいつ……っ!)
虫も使えるのかと、焦りを強めた。
そして同時に湧き上がった怒りにシャロンは歯軋りした。
予想がついたからだ。誰に教えてもらったのか。
間違い無くナチャだろう。
だが、今のシャロンにはその怒りをルイスに当てる余裕すら無かった。
重い足音と共に、目の前の闇が濃くなる。
「っ!」
直後、シャロンが驚きに思わず息を呑んだのと同時に、薄白い線が逆水平に走った。
寸でのところで後退してこの一撃を回避。
しかし次の瞬間、
「ぐっ!」
またしても盾。
だが先ほどのような威力では無い。
吹き飛ばすのでは無く、よろけさせて次に繋げることが目的と思われる一撃。
逃げなければ。しかしどこに? どっちに?
幸運にも、その答えは既に視界の中にあった。
ゆえに、シャロンは何も考えずにその場所に向かって飛び込んだ。
影が蠢き、銀閃が水平に奔り始める。
だが、その薄白い光はシャロンの肉に食い込むか否か、というところで止まった。
重い金属音が場に反響する。
刃を食い止めたそれは、中ほどで折れた柱の残骸であった。
そしてシャロンはその場に留まらず、すぐに離脱。
その背中を追いかけてきた白刃がかすめる。
ディーノは自身の圧倒的有利を自覚し始めていた。
シャロンが光弾を撃ったのがその証拠。それは、崩落よりも自分に近付かれることのほうが危険だと判断したということ。
ディーノがそれらをあえて全て受けたのは、崩落にアランが巻き込まれる事態を避けるためだ。
そして、ディーノの攻めは直後に激しさを増した。
銀閃が線から円へ、円から線へと、絶え間無く繰り返され、絡みつくように折り重なる。
「……っ!」
それらを時に間一髪で避けるシャロン。
いや、もはや回避では無く、ただ逃げていると表現した方が正しい。背中を向けている時間の方が圧倒的に長い。
ゆえに、足が自然と後退する。
そしてその影を払うために、光弾を連射。
相手を知れば、理解出来ればこの影は消える。弱点でもいい。それを探るための遠距離攻撃。
「あの男」とは何か違うところがあるのではないか、完璧と呼べる「あの男」ほどでは無いのではないか、そんな期待を込めた攻撃。
しかしその期待はことごとく裏切られる。
盾すら構えず、その身に受けるディーノ。
そして、その攻撃からシャロンの弱気を感じ取ったディーノは、
「でぇやっ!」
直後、踏み込むと同時に槍斧を真横に一閃した。
「っ!」
これを女は「大きく」跳び退いて回避。
やはり、
(読めなかった!)
からだ。
そしてこの一撃で気付いたことがあった。
先読み出来ない上に、
(見えない!)
のだ。
暗いせいでさらに不利になっている。
しかも相手は影を纏っているため、闇に溶け込んでしまっている。
いまの一撃はとりあえず大きく動いたおかげで避けることが出来た。
だが、
「げほっ!」
次の一撃はどうにもならなかった。
シャロンの全身に衝撃が走り、吹き飛ぶ。
破裂した内臓が振動し、痛みがあふれる。
その激痛の中で、シャロンは盾で殴られたのだと理解した。
後退による回避を読んだ、体当たりのような一撃。
まるで岩がぶつかったかのような衝撃。
背中が地面に激突し、さらなる痛みが生まれる。
が、シャロンはその痛みを振り払うかのように叫んだ。
(思い出して、そして考えなさい、シャロン!)
「あの時」はほぼ一方的に負けたが、何も得られなかったわけでは無い。
「あの男」は決して無敵というわけでは無かった!
この男も同じであるならば、あの戦いで得た情報が通じるはずだ!
そう、己に活を入れながら立ち上がる。
しかし既にディーノは目の前。
ほとんど見えずとも、接近は正確に察知出来た。
そうだ思い出した。まず第一に重要なのは、この、
(音!)
であることを。
思考の波は読めずとも、足音や、武器が空気を裂いた時に生じる音波は普通に聞き取れる。
その事実を確認するように叫びながら、シャロンはディーノが放った袈裟の一撃を大きく横に転がって回避。
そして体勢を立て直すと同時に虫を展開。
音の情報を可能な限り正確に拾うためだ。
しかしそのうちの何匹かには、別の仕事を与えていた。
その仕事とは、
(貼り付け!)
接触であった。
あの男の体は膜のような何かに覆われている。
その膜が思考の波を著しく減衰させてしまっている。
ならば、相手の皮膚に虫を貼り付けてしまえばいい。虫は、魂は膜を普通に通過することが出来る。
魂の波も影響を受けるゆえに、こちらに情報を返すには一度膜の外に出なくてはならない。なので情報の伝達は遅くなる。しかしそれでも全く読めないよりはマシだ。
シャロンはそう思い、期待していた。
が、
「!?」
その思いも直後に虚しく消えた。
ディーノが迎撃用の虫を展開したのだ。
その防御に対してこちらの無勢は明白。
仕事を任せた虫達があっという間に食い散らかされる。
その全滅を感じ取ったシャロンは、
(こいつ……っ!)
虫も使えるのかと、焦りを強めた。
そして同時に湧き上がった怒りにシャロンは歯軋りした。
予想がついたからだ。誰に教えてもらったのか。
間違い無くナチャだろう。
だが、今のシャロンにはその怒りをルイスに当てる余裕すら無かった。
重い足音と共に、目の前の闇が濃くなる。
「っ!」
直後、シャロンが驚きに思わず息を呑んだのと同時に、薄白い線が逆水平に走った。
寸でのところで後退してこの一撃を回避。
しかし次の瞬間、
「ぐっ!」
またしても盾。
だが先ほどのような威力では無い。
吹き飛ばすのでは無く、よろけさせて次に繋げることが目的と思われる一撃。
逃げなければ。しかしどこに? どっちに?
幸運にも、その答えは既に視界の中にあった。
ゆえに、シャロンは何も考えずにその場所に向かって飛び込んだ。
影が蠢き、銀閃が水平に奔り始める。
だが、その薄白い光はシャロンの肉に食い込むか否か、というところで止まった。
重い金属音が場に反響する。
刃を食い止めたそれは、中ほどで折れた柱の残骸であった。
そしてシャロンはその場に留まらず、すぐに離脱。
その背中を追いかけてきた白刃がかすめる。
ディーノは自身の圧倒的有利を自覚し始めていた。
シャロンが光弾を撃ったのがその証拠。それは、崩落よりも自分に近付かれることのほうが危険だと判断したということ。
ディーノがそれらをあえて全て受けたのは、崩落にアランが巻き込まれる事態を避けるためだ。
そして、ディーノの攻めは直後に激しさを増した。
銀閃が線から円へ、円から線へと、絶え間無く繰り返され、絡みつくように折り重なる。
「……っ!」
それらを時に間一髪で避けるシャロン。
いや、もはや回避では無く、ただ逃げていると表現した方が正しい。背中を向けている時間の方が圧倒的に長い。
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