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第六章 アランの力は遂に一つの頂点に
第四十五話 伝説との邂逅(6)
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「……」
リックと女がぶつかり合う様子を、ルイスは複雑な心境で見ていた。
訓練の成果は出ていた。
この二週間、ルイスはリックに女の癖を覚えさせていた。ルイスは女の戦い方を真似てリックと打ち合ったのだ。あの組み手は女との模擬戦だったのだ。
直前に女の頭の中を隅々まで見ていたからそんなことが出来た。つまり、ルイスは女の「写し」を作ったのだ。
しかし一つ問題が起きた。
錬度が高すぎたのだ。
高いほうが良いに決まっているのだが、そのせいでリックが自分のイメージを女に重ねてしまった。
「……これはいよいよ、バレてしまったかな?」
そしてルイスは誰かに尋ねるように呟いた。
その答えを既に知っているのに、だ。
ゆえに、ルイスの顔には自棄的な笑みが浮かんでいた。
◆◆◆
「雄雄雄ォッ!」
リックが吼えながら女に襲い掛かる。
閃光のように繰り出される拳と蹴り。
それらを受け流しながら、距離を取ろうとする女。
逃げるなと、その場に縫いつけようとするかのように光弾の雨が降り注ぐ。
逃げ道そのものを塞ぐかのように、炎が女の背後に奔る。
先ほどまでの緊張感が嘘のような苛烈な反撃。
それもそのはず、
「……っ」
女が手を出さなくなったからだ。
なぜ、という言葉が女の心の中でこだましていた。
しかしその答えは浮かび上がってこない。
だが、
(お前ならば、)
何か知っているのだろう? そんな思いを込めた視線を女はアランに向けた。
二人の視線が交わる。
「――っ!」
瞬間、アランの心臓が高鳴ったのを、女は聞き逃さなかった。
女は気付いていた。
リックがルイスの影を女に重ねたとき、アランが驚いていたことを。
偶然にしては出来すぎている、と思ったことを。
視線が交わる瞬間まで、どうしてそんなことをしてくれたのかを考えていた。
思い当たる節は一つあった。
その記憶を覗かれたから、アランの心臓は高鳴ったのだ。大切なものを覗き見られた、そんな気がしたのだ。
そして、女はその記憶を見た上で、叫んだ。
(聞いているのだろう?! ルイス!)
迫り来る拳を受け流しながら、
(これだけは、はっきりと言っておく!)
飛び交う光弾と炎を避け、
(今の私に誰かのために譲る道など無いッ!)
女はどこかにいるかつての親友に対し、反撃の狼煙を上げた。
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