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第六章 アランの力は遂に一つの頂点に

第四十二話 魔王(4)

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   ◆◆◆

 戦いはすぐに終わった。
 いや、戦いと呼べるようなものでは無かった。
 ただ一方的であった。
 それでもオレグはわざと「手間」をかけた。
 操られている村人達を先に無力化したのだ。
 操っている死霊使いを倒せばそれで終わる話である。
 なのにそうしたのは、力の差を見せ付けるためだ。
 貴様の技に価値は無い、ということを知らしめるためだ。
 そして、オレグのその思いは死霊使いに対してのものでは無かった。

「……」

 オレグは拳についた血を拭い(ぬぐい)ながら、その思いを魔王に向けていた。
 この戦いでの死者はただ一人。
 死霊使いの体から流れた赤色が、華のように大理石の床に広がっていた。
 オレグはその華に対してすら哀れみの念を抱かなかった。

「……ふん」

 オレグはその死を鼻で笑ったあと、振り返った。
 そして、オレグは魔王に対して声を上げた。

「魔王様、なぜこのような者をここに呼んだのです?」

 オレグは知りたかった。
 オレグは少し恐れていた。
 まさか、このような技を我が国に取り入れるつもりなのかと。
 軍を強くするために、このようなものに頼るつもりなのかと。
 オレグはあえて、魔王の心を覗くようなことはしなかった。
 魔王の口から答えが聞きたかったからだ。

「……」

 しかし魔王の口はすぐには開かなかった。
 魔王はまず首を振った。
 お前が危惧しているようなことは考えていないという思いをこめて。
 その後、魔王はようやく口を開いた。

「心配するな、オレグ」

 その言葉は透き通るようにオレグの心に響いた。
 しかしオレグの心は晴れなかった。
 それを察した魔王は言葉を続けた。

「ただ一つ、気に掛かっていることがあるだけだ」

 心配事? それはなんなのですか? とオレグは心で尋ねた。
 が、直後に魔王の口から出た言葉はその答えでは無かった。

「この死霊使いと呼ばれていた者の技に、その答えがあるのではと思ったのだ。……が、どうやらハズレだったようだ」

 その言葉に魔王は、「この技に対しての思いはお前と同じである」、という心の声を添えた。

「……」

 が、オレグの心はまだ晴れなかった。
 魔王はそれも察したが、

「……」

 それ以上、言葉を重ねることは無かった。
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