Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第五章 アランの力は留まる事を知らず、全てを巻き込み、魅了していく

第三十八話 軍神降臨(4)

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   ◆◆◆

 リーザの手から赤球が放たれる。
 響き渡る爆発の轟音。
 衝撃波が目前の全てをなぎ払う。
 もう何度も見た光景。

「……!」

 なのにリーザは目を見開いた。
 なぜならクラウスが、

(避けた?!)

 ように見えたからだ。
 ように、と表現したのは、クラウスが避けたのではなく、自分が外したような気もするからだ。
 あまりにも奇妙な感覚。『狙いをずらされた』ような、狙うという行為そのものを第三者に邪魔されたような感覚。
 それだけじゃない。クラウスの回避動作は明らかに人外の速さだった。

(あの動きはまるで――)

 リックのようだった、という考えをねじ伏せるために、頭を振る。
 一体何をした? 
 そう問い詰めるかのように、クラウスを睨みつける。

「……」

 対するクラウスは微動だにしない。
 クラウス自身、リーザの問いに対する答えを探していたからだ。

(自分はいま……何をした?)

 動作そのものは単純。横に跳んだだけだ。
 しかしその速度は明らかに異常。
 膝と足首には重い痛みが残っている。
 この痛みの原因も自分は知っている。
 先ほど、自分は確かに膝と足首で魔力を爆発させた。
 なんでこんな事が出来た?
 咄嗟の思いつき?
 そうは思えない。
 なぜなら、思い付きでは説明できないもっと奇妙なことがあるからだ。
 相手の攻撃が完全に読めていた。どういう動作で、いつ撃たれるのかまで。
 まるで未来を予知したかのようだった。そう、『アラン様のように』。
 自分はアラン様と同じ境地に目覚めたのか?

(いや、違うこれは――)

 目覚めたというよりは、『借りている』という感覚。
 今ならはっきりと分かる。後方から少しずつ近づいてきているアラン様の存在を、アラン様の意識が自分の背に繋がっているのをしっかりと感じる!
 アラン様を背負っているような、アラン様が自分に乗り移ったかのような感覚!

「雄々々々ォッ!」

 それに気付いた瞬間吼えていた。
 同時に頭の中で声が響く。

“ここからだ。やるぞ、クラウス!”

 それはアラン様の声なのか、懐かしき誰かのものか、どちらか分からなかったが、

「御意に!」

 力強い返事と共に、クラウスは地を蹴った。
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