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第五章 アランの力は留まる事を知らず、全てを巻き込み、魅了していく
第三十七話 炎の槍(7)
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「……」
クラウスはリーザを見つめたまま考えていた。先の攻撃の正体を。
しかしそれはやはりわからなかった。
が、クラウスの本能はある言葉を理性に伝えた。
そしてクラウスの心に浮かび上がったのは、
(……わからぬが、今の攻撃自体は脅威というほどのものではない)
という、単純な結論。
そう、脅威では無い。あくまでも先の攻撃「だけ」ならば。
真に警戒すべきは――
「!」
次の瞬間、その警戒すべきものがクラウスの目に映った。
それはリーザが放った光弾。
これに対しクラウスは体勢を整えながら防御魔法を展開。
「っ!」
複数の炸裂音と盾を展開する左手に伝わる衝撃がクラウスの意識を揺らす。
重い。これだけでわかる。直撃は危険。倒れたところに撃ち込まれるような事態だけは避けなければならない。
そして、この数発だけで防御魔法が限界を迎えたことも察したクラウスは、防御魔法を消しながら地を蹴った。
クラウスの体が鋭く右に流れ、真左を光弾が通り過ぎる。
その動きをリーザの目が追う。
二人の視線が交わる。と同時にリーザは再び光弾を放った。
それはクラウスの移動先を狙った偏差射撃であったが――
「!」
次の瞬間、クラウスの動きが止まった、ように見えた。
違う、という言葉が心に浮かぶよりも早くリーザは狙いを修正した。
逆方向に、左から右に反転しようとしている、そう思ったからだ。
しかしその直後、
(!?)
クラウスはまたも動きを変えた。
今度こそ止まった「ように」見えた。
違和感の正体はすぐにわかった。
クラウスの像が少し大きくなったからだ。
前に移動したのだ。姿勢をほとんど変化させずに、軸足の力だけで前に流れたのだ。
リーザからはほとんど動いていないように見えるほどの姿勢制御。
あまりにも見事すぎて距離感を失いそうになる。
湧き上がる焦燥感と恐怖。その冷たく逆毛立つ感覚に突き動かされるまま、リーザは後ろに地を蹴りながら光弾を放った。
速さを重視した真正面への射撃、であったが、クラウスはこれを小さな動きで回避。半歩分、身をそらしただけだ。
楽に避けられた。しかしそれより問題なのはクラウスの像のさらに大きくなったこと。引き撃ちをしたにもかかわらずだ。
次の踏み込みで捕まる、直感でそう判断したリーザはすかさず両手を前にかざした。
重ねられたリーザの両手から瞬く間に薄赤く輝く光弾が生み出される。
が、それを見てもクラウスは足を止めなかった。
そろそろ使うだろうと思っていたからだ。とりあえずの対処も決めてある。
クラウスは腰を落としながら刀を持つ右手を後ろに引き絞った。
刃は顔の真横に置きつつ地に水平に。
刃の先端には前に突き出された左手が添えられている。
閃光魔法の構えに似た突進突きの姿勢。
クラウスは左手を見せ付けるようかのように輝かせた。
来る、その言葉がリーザの心に浮かんだ瞬間、「だん」という音が彼女の耳を打った。
その音が勝負の合図となった。
地を強く蹴ったクラウスの体が勢いよく前に飛び出す。
対するリーザは手にある魔法を発動。
赤い光弾が瞬く間にふくらみ、そして弾ける。
生じた衝撃波が目の前にいるクラウスに襲い掛かる。
が、衝撃波が最初にぶつかったのはクラウスの体では無かった。
それはクラウスの左手から展開された防御魔法。
轟音と共にクラウスの体が激しく揺れる。
踏みとどまれる、そんな感覚がクラウスの中に芽生えかけた瞬間、
「!?」
強風に煽られた傘のようにクラウスの防御魔法が「ぐにゃり」とゆがみ、そしてはじけ消えた。
「ぐっ!」
衝撃波にクラウスの体が押し戻され、口から嗚咽が漏れる。
しかし直後、
「!」
顔色を変えたのはリーザの方であった。
クラウスが倒れなかったからだ。大きく後ろにふらついたが、それだけにとどまった。
リーザは最大の警戒と共に距離を取りながら手に魔力を込めなおしたが、
(……来ない?)
クラウスはすぐに攻めてくる気配を見せなかった。
クラウスは視線を細かく動かしながら、あるものを探していた。
クラウスはリーザの弱点を見抜いていた。
先の一合でわかったことは三つ。
まず第一にリーザは防御魔法で爆発の衝撃を防御していること。
第二に、リーザ本人ものけぞりながら少し後ろに押されていること。
そして最後に、腰を深く落とし、少し上に向けて放っていること。
そうしなければ、反動を地面の方に向ける工夫をしなければ、自分も吹き飛んでしまうのだろう。
これら三つのことから、次の攻め方はすぐに決まった。
相手の対応が同じならば次で決められるだろう、が、実行にはあれが必要。
そんなことを考えながら視線を動かしていると、
(……あった。しかも都合の良い位置)
勝機を見出したクラウスはそれに向かって地を蹴った。
この時、一つの幸運がクラウスに訪れた。
リーザがクラウスから視線を外したのだ。
その理由はすぐにわかった。
クラウスの瞳に映ったのはリーザに襲い掛かる複数の光弾。
味方の攻撃か、ただの流れ弾か。どちらにしてもリーザは対処しなくてはならない。
リーザがその光弾を防御魔法で受け止めている間に、クラウスは一気に目標物に接近。
そして、クラウスは地面に落ちていたそれ――大盾を引き摺るように拾い上げた。
クラウスはリーザを見つめたまま考えていた。先の攻撃の正体を。
しかしそれはやはりわからなかった。
が、クラウスの本能はある言葉を理性に伝えた。
そしてクラウスの心に浮かび上がったのは、
(……わからぬが、今の攻撃自体は脅威というほどのものではない)
という、単純な結論。
そう、脅威では無い。あくまでも先の攻撃「だけ」ならば。
真に警戒すべきは――
「!」
次の瞬間、その警戒すべきものがクラウスの目に映った。
それはリーザが放った光弾。
これに対しクラウスは体勢を整えながら防御魔法を展開。
「っ!」
複数の炸裂音と盾を展開する左手に伝わる衝撃がクラウスの意識を揺らす。
重い。これだけでわかる。直撃は危険。倒れたところに撃ち込まれるような事態だけは避けなければならない。
そして、この数発だけで防御魔法が限界を迎えたことも察したクラウスは、防御魔法を消しながら地を蹴った。
クラウスの体が鋭く右に流れ、真左を光弾が通り過ぎる。
その動きをリーザの目が追う。
二人の視線が交わる。と同時にリーザは再び光弾を放った。
それはクラウスの移動先を狙った偏差射撃であったが――
「!」
次の瞬間、クラウスの動きが止まった、ように見えた。
違う、という言葉が心に浮かぶよりも早くリーザは狙いを修正した。
逆方向に、左から右に反転しようとしている、そう思ったからだ。
しかしその直後、
(!?)
クラウスはまたも動きを変えた。
今度こそ止まった「ように」見えた。
違和感の正体はすぐにわかった。
クラウスの像が少し大きくなったからだ。
前に移動したのだ。姿勢をほとんど変化させずに、軸足の力だけで前に流れたのだ。
リーザからはほとんど動いていないように見えるほどの姿勢制御。
あまりにも見事すぎて距離感を失いそうになる。
湧き上がる焦燥感と恐怖。その冷たく逆毛立つ感覚に突き動かされるまま、リーザは後ろに地を蹴りながら光弾を放った。
速さを重視した真正面への射撃、であったが、クラウスはこれを小さな動きで回避。半歩分、身をそらしただけだ。
楽に避けられた。しかしそれより問題なのはクラウスの像のさらに大きくなったこと。引き撃ちをしたにもかかわらずだ。
次の踏み込みで捕まる、直感でそう判断したリーザはすかさず両手を前にかざした。
重ねられたリーザの両手から瞬く間に薄赤く輝く光弾が生み出される。
が、それを見てもクラウスは足を止めなかった。
そろそろ使うだろうと思っていたからだ。とりあえずの対処も決めてある。
クラウスは腰を落としながら刀を持つ右手を後ろに引き絞った。
刃は顔の真横に置きつつ地に水平に。
刃の先端には前に突き出された左手が添えられている。
閃光魔法の構えに似た突進突きの姿勢。
クラウスは左手を見せ付けるようかのように輝かせた。
来る、その言葉がリーザの心に浮かんだ瞬間、「だん」という音が彼女の耳を打った。
その音が勝負の合図となった。
地を強く蹴ったクラウスの体が勢いよく前に飛び出す。
対するリーザは手にある魔法を発動。
赤い光弾が瞬く間にふくらみ、そして弾ける。
生じた衝撃波が目の前にいるクラウスに襲い掛かる。
が、衝撃波が最初にぶつかったのはクラウスの体では無かった。
それはクラウスの左手から展開された防御魔法。
轟音と共にクラウスの体が激しく揺れる。
踏みとどまれる、そんな感覚がクラウスの中に芽生えかけた瞬間、
「!?」
強風に煽られた傘のようにクラウスの防御魔法が「ぐにゃり」とゆがみ、そしてはじけ消えた。
「ぐっ!」
衝撃波にクラウスの体が押し戻され、口から嗚咽が漏れる。
しかし直後、
「!」
顔色を変えたのはリーザの方であった。
クラウスが倒れなかったからだ。大きく後ろにふらついたが、それだけにとどまった。
リーザは最大の警戒と共に距離を取りながら手に魔力を込めなおしたが、
(……来ない?)
クラウスはすぐに攻めてくる気配を見せなかった。
クラウスは視線を細かく動かしながら、あるものを探していた。
クラウスはリーザの弱点を見抜いていた。
先の一合でわかったことは三つ。
まず第一にリーザは防御魔法で爆発の衝撃を防御していること。
第二に、リーザ本人ものけぞりながら少し後ろに押されていること。
そして最後に、腰を深く落とし、少し上に向けて放っていること。
そうしなければ、反動を地面の方に向ける工夫をしなければ、自分も吹き飛んでしまうのだろう。
これら三つのことから、次の攻め方はすぐに決まった。
相手の対応が同じならば次で決められるだろう、が、実行にはあれが必要。
そんなことを考えながら視線を動かしていると、
(……あった。しかも都合の良い位置)
勝機を見出したクラウスはそれに向かって地を蹴った。
この時、一つの幸運がクラウスに訪れた。
リーザがクラウスから視線を外したのだ。
その理由はすぐにわかった。
クラウスの瞳に映ったのはリーザに襲い掛かる複数の光弾。
味方の攻撃か、ただの流れ弾か。どちらにしてもリーザは対処しなくてはならない。
リーザがその光弾を防御魔法で受け止めている間に、クラウスは一気に目標物に接近。
そして、クラウスは地面に落ちていたそれ――大盾を引き摺るように拾い上げた。
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