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第五章 アランの力は留まる事を知らず、全てを巻き込み、魅了していく

第三十六話 選択と結末(11)

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(! 追撃が来る!)

 立ち上がるのは間に合わないと判断したアランは即座に横転。
 直後、大量の光弾がアランが寝ていた場所に着弾。
 土煙が舞い上がり、転がっていたアランの姿が包まれる。
 そのように見えた直後、アランは地の上を滑りながら、土煙の中から飛び出してきた。
 自らそうしたわけではない。敵が放った光弾によって弾き出されたのだ。
 そこへさらなる追撃。
 再びアランが転がり、そしてまた土煙が舞い上がる。
 しかし直後、土煙は掻き消えた。
 ラルフが放った光弾のせいである。着弾時に生じた余波が煙を吹き飛ばしたのだ。
 視界が開けたと同時に、兵士達が再び光弾を放つ。
 それによって生じた土煙をラルフが再び払う。
 この視界の確保と攻撃という流れは延々と繰り返された。
 アランの周囲を大量の光弾が飛び交う。
 耳が機能しなくなるほどの着弾音が場に響いている。
 アランはこの苛烈な攻撃を跳び、転がり、懸命に避けていた。
 しかし徐々に被弾は積み重なってきている。
 致命傷はなんとか避けている。ラルフの光弾に対しての集中力は切らしていない。
 攻撃する兵士達とラルフの顔に緊張は無い。
 時間の問題だと思っている。
 だがその中に一人、サイラスだけが違う表情を浮かべていた。
 サイラスは神妙な面持ちをしていた。

(……妙に粘るな)

 アランを追い詰めている。時間の問題のように見える。普通は。
 しかし何故かそうは思えないのだ。
 際どいが、アランは回避し続けている。
 そしてその回避が少しずつ上手くなっているように見えるのだ。

(……いや、気のせいでは無い。不恰好だが、アランの回避は良くなってきている)

 陸に揚げられた魚のように地の上を倒れたり跳ねたりしているが、それでもちゃんと避けている。

(……)

 サイラスは感付き始めていた。
 それが何かは分かっていない。
 対し、アランは「それ」に対して叫びを上げていた。

(……糞、糞っ!)

 激しい攻撃を受けながらアランは毒を吐いていた。

(……あれが、『台本』さえあれば!)

『台本』が強く機能していればこんなことにはならなかった。サイラスの電撃魔法も見切っていただろう。

(今の自分にはあれが必要なんだ!)

 直後、立ち上がりかけていたところに被弾。

「!」

 姿勢が大きく崩れる。
 そこへ迫る複数の光弾。

(あ、これはマズ――)

 避けられない。
 アランに出来た抵抗は歯を食いしばることだけだった。

「っっ!」

 直後、アランの体に複数の痛みが走り、意識が白く染まった。
 再び崩れるアランの体勢。
 このままだと確実に倒れる、というような挙動。
 そこへさらに複数の光弾が迫っている。
 それを見たサイラスは表情を少し緩めた。
 これはさすがに決まったか? と感じたからだ。
 しかし、その言葉がサイラスの脳裏に浮かび始めた瞬間、

『右手側の――を利用して―――――つつ、左手側の光弾を――』

 アランの中で「それ」が開いた。
 白む意識の中、「それ」をおぼろげに感じ取ったアランの体が自然と動き始める。
 そこへ光弾が到着。

「!」

 直後、サイラスの顔に驚きが浮かんだ。
 アランが体勢を立て直したからだ。
 しかも普通ではないやり方だ。

(右腕で光弾をわざと受け、その反動で立った?!)

 しかも立ち上がりながら光弾を一つ斬り払っている。
 まぐれのように、偶然のように見える。普通は。
 当然ながらサイラスにはそう思えない。
 今の動きには「技」があるからだ。
 さらにそれだけでは無い「何か」も感じる。
 そして、直後のアランの動きはサイラスをさらに驚かせた。

「!?」

 さらに迫っていた複数の光弾を全て切り払ったのだ。
 先ほどまで追い詰められていた、みっともなくのたうち回っていた者とは思えない動き。
 しかも尋常な剣速では無い。瞬間に三撃だ。
 サイラスは驚きだけでなく、別の感情も同時に抱いていた。
 それは既視感。
 先の剣速が師と同等かそれ以上に見えたからだ。
 型が似ているだけだと思った。最初は。
 そして直後、サイラスの心に言葉が浮かんだ。
 まさか、「あの技」も使えるのか? という疑惑。
 期待感めいたものが込められたその眼差しを、サイラスはアランに向けた。
 対するアランはその感情を受け取らなかった。
 正確には『受け取れなかった』。
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