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第五章 アランの力は留まる事を知らず、全てを巻き込み、魅了していく
第三十六話 選択と結末(5)
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◆◆◆
その後、事はフレディが想像した通りになった。
アラン達の足は門の近くで止まってしまった。
この門は収容所唯一の出入り口である。これを通る以外の脱出方法は壁を乗り越えるか破るしかないのだが、はしごのようなものは収容所内に存在せず、そして壁を破る力もアラン達には無い。
そしてその門前には新たな部隊が陣取り、道を塞いでいた。
それはサイラスとラルフ達。
アラン達は間に合わなかったのだ。アランはこの部隊が収容所に辿り着く前に脱出する算段であった。しかしリリィの足が遅くなったことで、その予定が狂ってしまったのだ。
アランは物陰に身を隠しながら、様子をうかがっていた。
(あの部隊を力ずくで突破することは不可能に近い)
収容所内に散開してくれればその好機が訪れるかもしれない、アランはそんな事を期待していたが、門の前に陣取る部隊は動く気配を全く見せなかった。
そしてアランはある事に気がついた。
(あの男……確かサイラスといったか? なぜ、あいつは空を見ている?)
指揮官らしき男、サイラスの意識の向きが妙なのだ。
サイラスの意識は上へ向いている。
この状況で鳥を眺めているとは思えない。
一体何を――アランがそう思った瞬間、事は始まった。
「!」
直後、アランは振り返った。
感じ取ったのだ。後方にいる男が、リリィを撃ったあの男が動き出した事を。
男は、フレディは再び矢を構え、そして放った。
その方向は、
(上?!)
であった。
これが何を意味するのか、アランはすぐに察した。
空を眺めていたサイラスの意識がその矢の存在を捉える。
その矢は、アラン達が隠れている場所のすぐ傍に落ちた。
サイラスの意識が隠れているアランの方に向く。
そしてサイラスは口を開いた。
「そこに敵が隠れているぞ!」
サイラスは「敵」と表現した。隠れている者がこの収容所に囚われているただの無能力者かもしれないのに。
その声から刹那遅れて、兵士達の意識が一斉にアラン達の方に向く。
ラルフの意識も同様だ。
前列にいる兵士達が手を前にかざし、攻撃態勢を取る。
「撃て」という命令が発せられればすぐに実行できる構えである。
しかし、サイラスはその命令をすぐには出さなかった。
サイラスは横目にラルフの様子をうかがっていた。
そして、ラルフはサイラスが期待した通りに動いた。
サイラスの傍を離れ、前列に歩み出たのだ。
そこまで待ってから、サイラスはようやく声を上げた。
「撃て!」
兵士達の手が、ラルフの手が眩く発光する。
そしてそれらの手から光弾が放たれるよりも一瞬早く、壁の向こうにいるアランが動いた。
「危ない!」
アランはそう叫びながらリリィとクラウスを突き飛ばし、自身は逆の方向に飛んだ。
直後、兵士達の手から光弾が放たれる。
アランは当然それらを察知していたが、アランの意識はその中のある一つにのみ向けられていた。
それはラルフが放った光弾。
そのひときわ大きい光弾が壁に激突した瞬間、
「っ!」
アラン達の耳を轟音が襲った。
轟音は二つ。
一つはアラン達が隠れている壁を貫いたものだ。
もう一つはさらに奥にある壁に穴を空けたことによるもの。
ラルフが放った光弾は二枚の石壁を抜いたのだ。
「……」
その尋常では無い威力に、リリィは恐怖を通り越したような表情を浮かべた。
「……」
そしてそれは敵兵達も同じだったらしく、場は奇妙な静寂に包まれた。
この静寂を破ったのはアラン。
アランはクラウスに向かって声を上げた。
「クラウスはここに残れ!」
その言葉がリリィを守れという命令であることをクラウスは瞬時に察したが、異を唱えずにはいられなかったため口を開いた。
「しかしアラン様!」
無謀すぎる、という意を含めた当然の反論。
これにアランは即座に答えた。
「俺では防御魔法を張れない!」
リリィの盾になれるのはお前しかいない、という意を込めた言葉。
「……」
その答えにクラウスは何も返せなかった。
そしてアランはクラウスに背を向け、無謀の場に飛び出した。
その後、事はフレディが想像した通りになった。
アラン達の足は門の近くで止まってしまった。
この門は収容所唯一の出入り口である。これを通る以外の脱出方法は壁を乗り越えるか破るしかないのだが、はしごのようなものは収容所内に存在せず、そして壁を破る力もアラン達には無い。
そしてその門前には新たな部隊が陣取り、道を塞いでいた。
それはサイラスとラルフ達。
アラン達は間に合わなかったのだ。アランはこの部隊が収容所に辿り着く前に脱出する算段であった。しかしリリィの足が遅くなったことで、その予定が狂ってしまったのだ。
アランは物陰に身を隠しながら、様子をうかがっていた。
(あの部隊を力ずくで突破することは不可能に近い)
収容所内に散開してくれればその好機が訪れるかもしれない、アランはそんな事を期待していたが、門の前に陣取る部隊は動く気配を全く見せなかった。
そしてアランはある事に気がついた。
(あの男……確かサイラスといったか? なぜ、あいつは空を見ている?)
指揮官らしき男、サイラスの意識の向きが妙なのだ。
サイラスの意識は上へ向いている。
この状況で鳥を眺めているとは思えない。
一体何を――アランがそう思った瞬間、事は始まった。
「!」
直後、アランは振り返った。
感じ取ったのだ。後方にいる男が、リリィを撃ったあの男が動き出した事を。
男は、フレディは再び矢を構え、そして放った。
その方向は、
(上?!)
であった。
これが何を意味するのか、アランはすぐに察した。
空を眺めていたサイラスの意識がその矢の存在を捉える。
その矢は、アラン達が隠れている場所のすぐ傍に落ちた。
サイラスの意識が隠れているアランの方に向く。
そしてサイラスは口を開いた。
「そこに敵が隠れているぞ!」
サイラスは「敵」と表現した。隠れている者がこの収容所に囚われているただの無能力者かもしれないのに。
その声から刹那遅れて、兵士達の意識が一斉にアラン達の方に向く。
ラルフの意識も同様だ。
前列にいる兵士達が手を前にかざし、攻撃態勢を取る。
「撃て」という命令が発せられればすぐに実行できる構えである。
しかし、サイラスはその命令をすぐには出さなかった。
サイラスは横目にラルフの様子をうかがっていた。
そして、ラルフはサイラスが期待した通りに動いた。
サイラスの傍を離れ、前列に歩み出たのだ。
そこまで待ってから、サイラスはようやく声を上げた。
「撃て!」
兵士達の手が、ラルフの手が眩く発光する。
そしてそれらの手から光弾が放たれるよりも一瞬早く、壁の向こうにいるアランが動いた。
「危ない!」
アランはそう叫びながらリリィとクラウスを突き飛ばし、自身は逆の方向に飛んだ。
直後、兵士達の手から光弾が放たれる。
アランは当然それらを察知していたが、アランの意識はその中のある一つにのみ向けられていた。
それはラルフが放った光弾。
そのひときわ大きい光弾が壁に激突した瞬間、
「っ!」
アラン達の耳を轟音が襲った。
轟音は二つ。
一つはアラン達が隠れている壁を貫いたものだ。
もう一つはさらに奥にある壁に穴を空けたことによるもの。
ラルフが放った光弾は二枚の石壁を抜いたのだ。
「……」
その尋常では無い威力に、リリィは恐怖を通り越したような表情を浮かべた。
「……」
そしてそれは敵兵達も同じだったらしく、場は奇妙な静寂に包まれた。
この静寂を破ったのはアラン。
アランはクラウスに向かって声を上げた。
「クラウスはここに残れ!」
その言葉がリリィを守れという命令であることをクラウスは瞬時に察したが、異を唱えずにはいられなかったため口を開いた。
「しかしアラン様!」
無謀すぎる、という意を含めた当然の反論。
これにアランは即座に答えた。
「俺では防御魔法を張れない!」
リリィの盾になれるのはお前しかいない、という意を込めた言葉。
「……」
その答えにクラウスは何も返せなかった。
そしてアランはクラウスに背を向け、無謀の場に飛び出した。
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