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第四章 神秘はさらに輝きを増し、呪いとなってアランを戦いの場に連れ戻す
第三十四話 武技乱舞(7)
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そして壁の残骸を乗り越えたバージルは声を上げた。
「ヨハン!」
目標の名を叫ぶ。
これで相手が足が止めてくれるなどとは思っていない。ただ威圧したかっただけである。相手の心に声を叩き付けたいだけなのだ。
直後、その声に応えるかのように、バージルの前方に三人の魔法使いが姿を現した。
ヨハンの側近だ。
これにバージルは自身の心が昂ぶるのを感じた。
ここに重要戦力である側近を置いていったということは、ヨハンが近くにいるか、またはかなり焦っているということ。
ヨハンを追い詰めている、その昂ぶる事実に身を委ねたバージルは走りながら構えた。
足を前に出しながら槍斧を水平に一閃。
斧頭が描いた三日月の軌跡が光る刃となって放たれる。
対する三人の構えは防御。
身を寄せ合いながら前にかざした手を重ね合わせ、防御魔法を合体させる。
三つの手の平から作り出された目に眩いほどの防御魔法。バージルが作り出す光の壁と同等に見える。
バージルが放った三日月はその壁にわずかに食い込んだが、
「!」
直後、三日月は甲高い音を発しながら砕け散った。
軽く止められたように見えた。我が三日月の力はアンナが放ったあれには遠く及んでいないということが明らかになった。
ならば、と、バージルは光の壁を展開。
三人が放つ反撃の光弾を受け止めながら突進。
そして、あと三歩でぶつかり合う、というところまで距離が詰まった瞬間、
「ぐっ!?」
バージルの体が大きくよろめいた。
原因は真横から飛んで来た光弾。
威力からして目の前にいる側近が放ったものだ。
どうやって? その答えは今まで提示されてきたものと同じ、跳弾だ。この三人は閃光魔法以外なら大抵のことは出来るのだ。
しかしバージルはすぐに体勢を立て直した。
幸運にも槍斧に当たっていたからだ。
いや、不運かもしれない。
バージルは気付いていない。自身の槍斧に亀裂が入ってしまったことを。
自身の武器が限界を迎えたことも知らぬまま、バージルは光の壁を三人が展開する防御魔法にぶつけた。
瞬間、バージルの足がぴたりと止まった。
互角であった。持続力は分からないが、硬度は間違いなく同等。
押し合うだけの膠着状態である。が、バージルはこのままでいいと思っていた。
その理由はすぐに明らかになった。
バージルの背後に二つの影が迫っている。
クレアとリックだ。
その足音に側近達も気が付いた。
僅かに先行していたクレアがバージルの左横を駆け抜ける。
バージルから見て左側に立つ側近は、自身の視界にクレアの姿が映ったと同時に、右手をかざした。
しかし遅い。その手の平が発光し始めるよりも早く、クレアが一閃。
肘関節への一撃。クレアは自身の指先が相手の肘に触れたと同時に、そこから魔力を発散させた。
「っっ!」
指と肘の接点が眩く輝き、側近の顔が苦悶に歪む。
側近の腕は嫌な音を立てながらありえない方向へ曲がり折れた。
ここでクレアは手を止め、反対側に回り込んだリックの方をちらりと見た。
リックは相手の動きを関節技で封じていた。
バージルから見て右側に立つ側近から左手を向けられたリックは、目にも留まらぬ速さでその左腕を掴み、捻ったのだ。
そしてリックはその手の平が空の方へ向くように捻り上げつつ、相手の脇の下に入り込んだ。
これで相手はもう何も出来ない。左手から光弾を放っても空に向かって飛ぶだけだ。防御魔法を展開しても同じ。脇の下に潜り込んでいるから接触することは無い。そして右手のほうはバージルを食い止めるために光の壁を維持し続けなければならない。
安全を確保したリックはクレアと目を合わせ、「いつでもどうぞ」という意思を返した。
それを察したクレアは声を上げた。
「中段!」
攻撃箇所の指定である。
しかし中段は広い。打つにしても選択肢は一つでは無い。
にもかかわらずクレアがそう指示したのは、中段ならどこを打ってもいいと判断したからだ。
その中からクレア自身はみぞおちを選んだ。
そして、リックの深層意識はそれをしっかりと読み取っている。
必然的に二人の型は同じものとなった。
「「破っ!」」
左右から挟みこむように放たれたリックとクレアの突きが、側近のみぞおちにめりこむ。
リックとクレアの腕を棒と見立てて三人を串刺しにしているかのような形。
クレアとリックの手に内臓を破壊する感触が伝わった。
打たれた二人の顔が苦悶に歪み、展開している協力魔法の輝きが弱まる。
それを確認したクレアとリックは同時に後方へ飛び退いた。
その直後、膠着状態は崩れた。
バージルの光の壁が協力魔法を押し破り、後ろにいた三人を撥ね飛ばしたのだ。
そしてバージルは地の上を滑る三人に向かって槍斧を構えた。
追い討ちである。
「ヨハン!」
目標の名を叫ぶ。
これで相手が足が止めてくれるなどとは思っていない。ただ威圧したかっただけである。相手の心に声を叩き付けたいだけなのだ。
直後、その声に応えるかのように、バージルの前方に三人の魔法使いが姿を現した。
ヨハンの側近だ。
これにバージルは自身の心が昂ぶるのを感じた。
ここに重要戦力である側近を置いていったということは、ヨハンが近くにいるか、またはかなり焦っているということ。
ヨハンを追い詰めている、その昂ぶる事実に身を委ねたバージルは走りながら構えた。
足を前に出しながら槍斧を水平に一閃。
斧頭が描いた三日月の軌跡が光る刃となって放たれる。
対する三人の構えは防御。
身を寄せ合いながら前にかざした手を重ね合わせ、防御魔法を合体させる。
三つの手の平から作り出された目に眩いほどの防御魔法。バージルが作り出す光の壁と同等に見える。
バージルが放った三日月はその壁にわずかに食い込んだが、
「!」
直後、三日月は甲高い音を発しながら砕け散った。
軽く止められたように見えた。我が三日月の力はアンナが放ったあれには遠く及んでいないということが明らかになった。
ならば、と、バージルは光の壁を展開。
三人が放つ反撃の光弾を受け止めながら突進。
そして、あと三歩でぶつかり合う、というところまで距離が詰まった瞬間、
「ぐっ!?」
バージルの体が大きくよろめいた。
原因は真横から飛んで来た光弾。
威力からして目の前にいる側近が放ったものだ。
どうやって? その答えは今まで提示されてきたものと同じ、跳弾だ。この三人は閃光魔法以外なら大抵のことは出来るのだ。
しかしバージルはすぐに体勢を立て直した。
幸運にも槍斧に当たっていたからだ。
いや、不運かもしれない。
バージルは気付いていない。自身の槍斧に亀裂が入ってしまったことを。
自身の武器が限界を迎えたことも知らぬまま、バージルは光の壁を三人が展開する防御魔法にぶつけた。
瞬間、バージルの足がぴたりと止まった。
互角であった。持続力は分からないが、硬度は間違いなく同等。
押し合うだけの膠着状態である。が、バージルはこのままでいいと思っていた。
その理由はすぐに明らかになった。
バージルの背後に二つの影が迫っている。
クレアとリックだ。
その足音に側近達も気が付いた。
僅かに先行していたクレアがバージルの左横を駆け抜ける。
バージルから見て左側に立つ側近は、自身の視界にクレアの姿が映ったと同時に、右手をかざした。
しかし遅い。その手の平が発光し始めるよりも早く、クレアが一閃。
肘関節への一撃。クレアは自身の指先が相手の肘に触れたと同時に、そこから魔力を発散させた。
「っっ!」
指と肘の接点が眩く輝き、側近の顔が苦悶に歪む。
側近の腕は嫌な音を立てながらありえない方向へ曲がり折れた。
ここでクレアは手を止め、反対側に回り込んだリックの方をちらりと見た。
リックは相手の動きを関節技で封じていた。
バージルから見て右側に立つ側近から左手を向けられたリックは、目にも留まらぬ速さでその左腕を掴み、捻ったのだ。
そしてリックはその手の平が空の方へ向くように捻り上げつつ、相手の脇の下に入り込んだ。
これで相手はもう何も出来ない。左手から光弾を放っても空に向かって飛ぶだけだ。防御魔法を展開しても同じ。脇の下に潜り込んでいるから接触することは無い。そして右手のほうはバージルを食い止めるために光の壁を維持し続けなければならない。
安全を確保したリックはクレアと目を合わせ、「いつでもどうぞ」という意思を返した。
それを察したクレアは声を上げた。
「中段!」
攻撃箇所の指定である。
しかし中段は広い。打つにしても選択肢は一つでは無い。
にもかかわらずクレアがそう指示したのは、中段ならどこを打ってもいいと判断したからだ。
その中からクレア自身はみぞおちを選んだ。
そして、リックの深層意識はそれをしっかりと読み取っている。
必然的に二人の型は同じものとなった。
「「破っ!」」
左右から挟みこむように放たれたリックとクレアの突きが、側近のみぞおちにめりこむ。
リックとクレアの腕を棒と見立てて三人を串刺しにしているかのような形。
クレアとリックの手に内臓を破壊する感触が伝わった。
打たれた二人の顔が苦悶に歪み、展開している協力魔法の輝きが弱まる。
それを確認したクレアとリックは同時に後方へ飛び退いた。
その直後、膠着状態は崩れた。
バージルの光の壁が協力魔法を押し破り、後ろにいた三人を撥ね飛ばしたのだ。
そしてバージルは地の上を滑る三人に向かって槍斧を構えた。
追い討ちである。
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