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第四章 神秘はさらに輝きを増し、呪いとなってアランを戦いの場に連れ戻す
第三十三話 盾(4)
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(……どうすればいい?)
バージルの心に影が差す。
直後、見えざる悪魔がその影、バージルが抱いた不安を現実のものとした。
敵兵士達が少し前進したのだ。
距離を詰められた。それはすなわち、光弾の威力が増すと言うこと。
そして、同じ防御では絶対に耐えられないということでもある。
(……どうすればいい?!)
叫べども望む答えは見出せない。
が、望んでいない答えなら思いついた。
「……」
これしか手が無い、と思った。しかし、口にするにはためらいが生まれる手段だった。
それでも言うしかなかった。
「……すまない! 次は守ってやれない! 自力でなんとかしてくれ!」
分かっていたのか、覚悟していたのか、クレアはすぐに答えた。
「分かっています。御気になさらず」
その言葉を聞いた瞬間、バージルはクレアから離れるように前へ飛び出した。
ほぼ同時に、閃光がバージルの目に飛び込む。
バージルは足を止めず、前進しながら光の壁を展開した。
壁に光弾が次々と着弾する。
しかし、その数は先よりも遥かに少なかった。
包囲網の中心から離れたからであった。この攻撃は円の中心点であるバージルとクレアに向かって放たれたもの。全ての攻撃が同時に炸裂するため、その一点においては凄まじい火力を発揮するが、円の中心から離れるだけで被弾数が一気に落ちる。
バージルは余力を持って攻撃を凌いだ後、クレアの安否を確認するために後ろへ振り返った。
すると、クレアも同じように移動しているのが目に入った。バージルから付かず離れずという感じの距離を取っている。
分かっている、というのはこの攻撃を凌ぐ術も含めての言葉だったのだろう。
その傷で今の攻撃をよく避けたものだ、とバージルは思った。
しかもクレアは右足だけで立っている。一本足であの攻撃をくぐり抜けたとは、驚きしかない。
そして直後、バージルの心に再び影が差した。
それは自虐の念。
なんて情けないザマだ。助けに来たというのにこれでは意味が無いではないか、という思考。
この場に飛び込むこと自体が普通の人間には出来ない芸当なのだが、その事実はバージルの心を照らす光にはならなかった。
そんな負の思考はバージルの心に一つの映像を浮かび上がらせた。
それは「こうしていたほうが良かったのではないか」という考え。
その映像に描かれているのは、傷ついたクレアに肩を貸し、ひきずるように場から撤退する自身の姿であった。
(……)
実は、この考えはさっき既に思いついていた。
これを選ばなかったのは単純に自信が無かったからだ。クレアを抱え運びながらこの場から逃げることは難しいと思ったからだ。
(……この期に及んで、俺はまだ自分の命が惜しいのか)
暗いバージルの心が生み出した結論は、自分の心にとどめを刺すものであった。
はっきり言ってバージルが自分を責める必要性は一切無い。それどころか、バージルは自信を褒め、勇気付けるべきである。縁が濃いとは言えない相手のために無謀の場に飛び込んだのだから。
それに、命を惜しむことを卑下するのも最適とは言えない。この場面では無駄に命を散らす方が間違いであろう。問題は現在の状況が有利になるかどうかなのだ。少なくとも、今回は敵の攻撃を無傷かつ消耗を抑えて凌ぐことが出来た。結果だけ見れば悪い選択では無い。
しかしバージルにはそういう考え方が出来なかった。これは彼の気質であった。バージルの思考は負の方向に偏る傾向があった。
だが時に、そのはきだめのような暗く重い心の中から、輝かしい宝石が生まれることがあるのだ。
その時は、バージルにとって運命の時となるその瞬間は、確実に近づいていた。
バージルの心に影が差す。
直後、見えざる悪魔がその影、バージルが抱いた不安を現実のものとした。
敵兵士達が少し前進したのだ。
距離を詰められた。それはすなわち、光弾の威力が増すと言うこと。
そして、同じ防御では絶対に耐えられないということでもある。
(……どうすればいい?!)
叫べども望む答えは見出せない。
が、望んでいない答えなら思いついた。
「……」
これしか手が無い、と思った。しかし、口にするにはためらいが生まれる手段だった。
それでも言うしかなかった。
「……すまない! 次は守ってやれない! 自力でなんとかしてくれ!」
分かっていたのか、覚悟していたのか、クレアはすぐに答えた。
「分かっています。御気になさらず」
その言葉を聞いた瞬間、バージルはクレアから離れるように前へ飛び出した。
ほぼ同時に、閃光がバージルの目に飛び込む。
バージルは足を止めず、前進しながら光の壁を展開した。
壁に光弾が次々と着弾する。
しかし、その数は先よりも遥かに少なかった。
包囲網の中心から離れたからであった。この攻撃は円の中心点であるバージルとクレアに向かって放たれたもの。全ての攻撃が同時に炸裂するため、その一点においては凄まじい火力を発揮するが、円の中心から離れるだけで被弾数が一気に落ちる。
バージルは余力を持って攻撃を凌いだ後、クレアの安否を確認するために後ろへ振り返った。
すると、クレアも同じように移動しているのが目に入った。バージルから付かず離れずという感じの距離を取っている。
分かっている、というのはこの攻撃を凌ぐ術も含めての言葉だったのだろう。
その傷で今の攻撃をよく避けたものだ、とバージルは思った。
しかもクレアは右足だけで立っている。一本足であの攻撃をくぐり抜けたとは、驚きしかない。
そして直後、バージルの心に再び影が差した。
それは自虐の念。
なんて情けないザマだ。助けに来たというのにこれでは意味が無いではないか、という思考。
この場に飛び込むこと自体が普通の人間には出来ない芸当なのだが、その事実はバージルの心を照らす光にはならなかった。
そんな負の思考はバージルの心に一つの映像を浮かび上がらせた。
それは「こうしていたほうが良かったのではないか」という考え。
その映像に描かれているのは、傷ついたクレアに肩を貸し、ひきずるように場から撤退する自身の姿であった。
(……)
実は、この考えはさっき既に思いついていた。
これを選ばなかったのは単純に自信が無かったからだ。クレアを抱え運びながらこの場から逃げることは難しいと思ったからだ。
(……この期に及んで、俺はまだ自分の命が惜しいのか)
暗いバージルの心が生み出した結論は、自分の心にとどめを刺すものであった。
はっきり言ってバージルが自分を責める必要性は一切無い。それどころか、バージルは自信を褒め、勇気付けるべきである。縁が濃いとは言えない相手のために無謀の場に飛び込んだのだから。
それに、命を惜しむことを卑下するのも最適とは言えない。この場面では無駄に命を散らす方が間違いであろう。問題は現在の状況が有利になるかどうかなのだ。少なくとも、今回は敵の攻撃を無傷かつ消耗を抑えて凌ぐことが出来た。結果だけ見れば悪い選択では無い。
しかしバージルにはそういう考え方が出来なかった。これは彼の気質であった。バージルの思考は負の方向に偏る傾向があった。
だが時に、そのはきだめのような暗く重い心の中から、輝かしい宝石が生まれることがあるのだ。
その時は、バージルにとって運命の時となるその瞬間は、確実に近づいていた。
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