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第四章 神秘はさらに輝きを増し、呪いとなってアランを戦いの場に連れ戻す
第三十一話 頂上決戦(8)
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◆◆◆
同時刻――
城を失ったクリス達はある味方陣地にて休息を取っていた。
重症を負ったディーノは布と杭で作られた簡素な仮設住居の中で、ほぼ寝たきりの生活を送っていた。
しかし不便とは感じなかった。サラの手厚い看護があったからだ。
その日、ディーノはベッドの上で汚れたぼろ布の天井を見つめながら、物思いにふけっていた。
それはこの仮設住居での生活における日課のようなものになっていた。
考えることはいつも同じであった。アランとリックの戦いのことであった。
集中するために目を閉じる。
暗闇の中、ディーノは二人の戦いの一挙一動を思い浮かべた。
(やっぱり――)
すごい、その言葉を心の奥底にしまい込みながら、ディーノは二人の神秘を紐解こうと思考を重ねた。
(……まだ、わからないことがあるが――)
アランとリックがどうしてあのように相手の攻撃を避けることが出来たのかは分からなかったが、一つ分かることがあった。
(とりあえず、速く動くことは真似出来そうだな)
ディーノは二人が見せた尋常ならざる加速を思い出しながら、意識を自身の内側に向けた。
体の中に張り巡らされている光の線を感じ取る。
(多分、こいつを使えば二人と同じようなことが出来る)
試したわけでは無い。が、ディーノは確信に近いものを抱いていた。
(そういえば、アランはどうなったんだろうか)
ゆっくりと息を吐くことで意識を光の線から外しつつ、ディーノはアランのことを想った。
(生きているのか――)
生死について少し触れたところでディーノは再び息を吐いて意識を切った。
死んだと考えるのが普通である、という結論にしか辿りつかないことが分かっていたからだ。
嫌な結論に達すると分かっていることを深く考えるのはよそう、そう思ったディーノは意識を暗闇にゆだねた。
(少し眠るか)
体から力を抜き、怪我人らしく静臥することにする。
そして、心地よいまどろみがディーノの身を包み始めた頃、
「ちょっと水を汲んできますね」
という、サラの声が耳に入った。
目を開くと、外に出ようとするサラの背が見えた。
その背にディーノが、
「ああ、気をつけてな」
と声を掛けると、サラは「ええ」という返事と視線を返し、外へ出て行った。
(……よく考えなくても気をつけることなんて何も無いな。今のはちょっとおかしかったか)
サラの姿が見えなくなった後、ディーノはそんなことを考えながら室内を見回した。
床敷きの上に服が置かれている。
針が刺さっているのを見る限りに、破れ目を直している途中のようだ。
「……相変わらず不器用だな」
その縫い目を見たディーノは思わずぽつりとそう漏らした。
サラは家事があまり上手くない。
それでも会ったばかりの頃よりはかなりマシになった。最初は何も出来ないと言っていいほどだった。
しかし作法だけは良いから何をやっても様になる。
「……この怪我が治ったら、また教えてやるか」
粗い縫い目を見つめながらそう呟くと、違和感がディーノの下腹部を襲った。
(……便所)
断る相手がいないため、心の中で呟きながらディーノはゆっくりと上半身を起こした。
体に鈍い痛みが走る。
「くそ、やっぱりまだ痛むな」
ディーノは見えないものに向かって悪態を吐きながら、傍に置いてあった松葉杖に手を伸ばした。
同時刻――
城を失ったクリス達はある味方陣地にて休息を取っていた。
重症を負ったディーノは布と杭で作られた簡素な仮設住居の中で、ほぼ寝たきりの生活を送っていた。
しかし不便とは感じなかった。サラの手厚い看護があったからだ。
その日、ディーノはベッドの上で汚れたぼろ布の天井を見つめながら、物思いにふけっていた。
それはこの仮設住居での生活における日課のようなものになっていた。
考えることはいつも同じであった。アランとリックの戦いのことであった。
集中するために目を閉じる。
暗闇の中、ディーノは二人の戦いの一挙一動を思い浮かべた。
(やっぱり――)
すごい、その言葉を心の奥底にしまい込みながら、ディーノは二人の神秘を紐解こうと思考を重ねた。
(……まだ、わからないことがあるが――)
アランとリックがどうしてあのように相手の攻撃を避けることが出来たのかは分からなかったが、一つ分かることがあった。
(とりあえず、速く動くことは真似出来そうだな)
ディーノは二人が見せた尋常ならざる加速を思い出しながら、意識を自身の内側に向けた。
体の中に張り巡らされている光の線を感じ取る。
(多分、こいつを使えば二人と同じようなことが出来る)
試したわけでは無い。が、ディーノは確信に近いものを抱いていた。
(そういえば、アランはどうなったんだろうか)
ゆっくりと息を吐くことで意識を光の線から外しつつ、ディーノはアランのことを想った。
(生きているのか――)
生死について少し触れたところでディーノは再び息を吐いて意識を切った。
死んだと考えるのが普通である、という結論にしか辿りつかないことが分かっていたからだ。
嫌な結論に達すると分かっていることを深く考えるのはよそう、そう思ったディーノは意識を暗闇にゆだねた。
(少し眠るか)
体から力を抜き、怪我人らしく静臥することにする。
そして、心地よいまどろみがディーノの身を包み始めた頃、
「ちょっと水を汲んできますね」
という、サラの声が耳に入った。
目を開くと、外に出ようとするサラの背が見えた。
その背にディーノが、
「ああ、気をつけてな」
と声を掛けると、サラは「ええ」という返事と視線を返し、外へ出て行った。
(……よく考えなくても気をつけることなんて何も無いな。今のはちょっとおかしかったか)
サラの姿が見えなくなった後、ディーノはそんなことを考えながら室内を見回した。
床敷きの上に服が置かれている。
針が刺さっているのを見る限りに、破れ目を直している途中のようだ。
「……相変わらず不器用だな」
その縫い目を見たディーノは思わずぽつりとそう漏らした。
サラは家事があまり上手くない。
それでも会ったばかりの頃よりはかなりマシになった。最初は何も出来ないと言っていいほどだった。
しかし作法だけは良いから何をやっても様になる。
「……この怪我が治ったら、また教えてやるか」
粗い縫い目を見つめながらそう呟くと、違和感がディーノの下腹部を襲った。
(……便所)
断る相手がいないため、心の中で呟きながらディーノはゆっくりと上半身を起こした。
体に鈍い痛みが走る。
「くそ、やっぱりまだ痛むな」
ディーノは見えないものに向かって悪態を吐きながら、傍に置いてあった松葉杖に手を伸ばした。
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