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最終章

第五十八話 おとぎ話の結末(1)

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   ◆◆◆

  おとぎ話の結末

   ◆◆◆

「「邪魔だ!」」

 二人の強者から放たれた同じ言葉が重なり、戦場に響き渡る。

「ぅわあっ!?」「ぎゃぁっ!」

 オレグが拳を、ディーノが槍斧を振るうたびに悲鳴が生まれる。
 二人の狙いは同じ。総大将の撃破。
 だが、状況は違う。
 オレグには仲間が、遊撃部隊がいる。
 しかしディーノは本当にたった一人だ。
 ゆえに、オレグの方が前進が速い。
 そしてその瞳にアランの姿を捉えたオレグは、

「いざ!」

 気勢を叩きつけると同時に踏み込んだ。
 しかしその声に応えたのはアランでは無かった。

「鋭ィッヤ!」

 真っ先に立ち向かったのはやはりケビン。
 踏み込みの勢いを乗せながら、上段に構えておいた二刀を×字に交差させながら振り下ろす。
 が、

「!?」

 その一撃は片手で「軽く」叩き払われた。
 ケビンの姿勢が大きく崩れ、隙だらけになる。
 がら空きになったその急所に、

「破ッ!」

 オレグが閃光のような拳を繰り出す。
 しかし直後に響いた音は肉を砕いたものでは無かった。
 光魔法特有の炸裂音。
 人外の豪腕を止めたものは、二人の間に割り込んだバージルが展開した盾。
 とんでもない腕力だがこれなら止められる、バージルは一瞬そう思ったのだが、

(硬いな。ならば、)

 これならばどうだ、そんな声がバージルの心に響いた瞬間、

「!」

 バージルはそれを感じ取った。
「どくん」と、オレグの心臓が一際大きな鼓動を打ったを。
 そしてその腕に散りばめられた銀色が輝きを増したのを。
 オレグはその輝きを力に変え、

「破ァァッ!」

 先よりも太く速い閃光を放った。
 その一撃は光の盾を打ち砕き、

「っ!」

 その盾を産み出していたバージルの左手に突き刺さった。
 左手の骨がひび割れ、砕ける。
 だがそれでもオレグの拳は止まらず、

「「うおぁっ?!」」

 そのままバージルの体を、後ろにいるケビンまで巻き込んで突き飛ばした。
 さらに追撃を加えようと、足に力を込める。
 しかしオレグはその足を前に出さなかった。
 オレグの脳には独特の、そして強い波が響いていた。
 クラウスが放った無明剣の波。
 狙い通りの直撃、ゆえに、

(入った!)

 クラウスはそれを叫んだが、

「何?!」

 まったく効いていない、それも感じ取れたゆえにクラウスは驚きの声を上げた。
 今のオレグは脳を活動させていない。だから効くわけが無いのだ。
 そしてオレグが足を止めたのは別の理由であった。 
 脳に響く絶望の波を無視しながら半歩下がり、背を浅くそらす。
 すると直後、直前まで頭蓋があった場所を分銅と鎖が通り過ぎていった。
 無明剣による硬直を期待して放たれたカイルの一撃。
 そしてオレグは触れずとも感じ取った。

(冷却魔法か)

 変幻自在の軌道で放たれる必殺の可能性を持つ攻撃。
 厄介だ、そう思った瞬間にオレグは優先順位を変え、地を蹴り直した。

「!」

 狙われている、それを察したカイルが反射的に光弾を放つ。
 それに周りの魔法使い達が習い、

「「「雄雄ォ!」」」

 大盾兵達が一列の壁となってオレグに向かって突撃する。
 何発かの光弾がオレグに炸裂。
 しかしその足は揺るがない。
 そして直後にぶつかった大盾兵達も、

「「「うああっ?!」」」

 その足を止めるどころか逆に吹き飛ばされた。
 だが、その吹き飛ぶ大盾兵の下に一匹の蛇が這っていた。
 足首を狙って放たれていたカイルの鎖。
 その蛇は大盾兵の体に隠れたまま、オレグの足に飛びかかったが、

「むんっ!」

 直後、その蛇の頭は気勢と共に繰り出されたオレグの一足に踏み潰された。
 あまりの力に分銅が地面にめりこむ。
 そしてオレグは即座に足を分銅から離すと同時に、左へ半歩ほど体をずらした。
 直後に後方から飛んできた別の分銅がオレグの眼前を横切る。
 後頭部を狙った一撃。直前の光弾を利用した跳弾。
 そうして二匹の蛇の奇襲をさばいたオレグは、

「疾ッ!」

 改めてカイルに向かって踏み込んだ。
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