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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

エピローグ(1)

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   ◆◆◆

  エピローグ

   ◆◆◆

 あれから半年が経った。
 だけどこの義手を見るたびに、昨日のことのように思い出せる。
 あの戦いからいろいろ変わった。
 みんなの意識が変わった。良い方向にも、悪い方向にも。
 人を疑うことが多くなった。こいつは乗っ取られているんじゃないか、そんな疑いの視線を感じるのが当たり前になった。互いを監視することが日常になった。
 でもみんなで協力し合わなければあの厄災には立ち向かえない。そのことをみんなわかっている。
 だからみんなは慎重になりつつも手を取り合うようになった。
 俺も、いや、俺達も変わった。
 いま、俺はナンティと暮らしている。
 ナンティとの生活は穏やかだ。あの地獄のような戦いを夢で見ることはもう無くなった。
 裕福とは言えないが満足している。俺の人生はこれ以上大きく変わることは無い。そんな気がしている。そう願ってる。
 かつての戦友達もそれぞれの新しい人生を歩んでいる。
 時々手紙で連絡を取り合う。会って飲むこともある。
 ほとんどのやつは俺と同じように穏やかな生活を送っているが、中にはそうじゃないのもいる。
 そう、例えば――

   ◆◆◆

「そう、お別れなのね。再会はだいぶ先になりそうな感じ?」

 王妃のような私室でシャロンが尋ねると、対面のソファーに座っているルイスは答えた。

「ああ、もしかしたらもう会うことは無いかもしれない」

 危険さを匂わせるその言葉に、シャロンはあえて尋ねた。

「想像はついてるんだけど、あえて聞くわ。ここを出てどうするつもりなの?」
「世界をめぐる」
「だと思った。本当にあなたはすごいというかなんというか……あの戦いからまだたった半年なのに、本当にタフな人ね」

 少しあきれた口調でそう言ったシャロンはあることをひらめき、再び口を開いた。

「じゃあ、軍船を出してあげようか?」

 それは豪華な申し出であったが、ルイスは首を振った。

「ありがたい申し出だが、やつらがまた海上で襲ってくる可能性は捨てきれない。お前達の戦力を信用していないわけでは無いが、今回は歩いて行けるところまで行くつもりだ」

 そのもっともな返事に、シャロンはおとなしく申し出を引き下げた。
 これ以上話すたいことは無い――その空気を感じ取ったルイスは、

「じゃあ元気で。サイラスと幸せにな」

 と、淡白に別れの挨拶をしながらソファーから立ち上がった。
 立ち上がってどこへ行く、それを感じ取ったシャロンは口を開いた。 

「あ、次はそのサイラスに挨拶しに行くの? 彼なら――」

 ルイスは手をかざし、シャロンの言葉をさえぎりながら口を開いた。

「大丈夫だ。彼の居場所は知ってる」

   ◆◆◆

 サイラスは城では無く、街で仕事をしていた。
 そのほうが早いからだ。情報を城で受け取ろうとすると、伝達者の手続きが増えて時間がかかってしまう。
 だからサイラスは安宿の一室を借り、そこで仕事をしていた。
 そのありふれた一室でルイスはサイラスと会い、

「本当にいいのか? 私で」 

 サイラスは確認するように尋ねた。
 その念を押した言い方に対し、

「ああ」

 と、ルイスは軽い調子で答えた。
 そう言われてもサイラスの戸惑いは消えなかった。
 なぜなら、とても重い話だからだ。
 だからサイラスは重ねて内容を尋ねて。

「私にシャロンに関する全権をゆずる、本当にそれでいいのか?」

 だからルイスは理由を答えた。

「もとからそうするつもりだった。以前そう言わなかったか? もう一度言うが、これを任せられるのはお前ぐらいしかいない。シャロンもお前を好いているしな」

 それでもサイラスの戸惑いは消えなかった。
 だからルイスはさらに言葉を付け加えた。

「まあ、でも、お前が戸惑うのもわかる。あれから時間が経って色々変わったからな。お前が感じている通り、引継ぎの理由もそうだ」
「どう変わったんだ?」
「私はすべてを終わりにするつもりだったが、予定外の仕事が大量に増えてしまった。だから世界をめぐる。同じようなことが他でも起きている可能性は高いからな」

 この話はこれで終わり、そう言うかのように、ルイスは下ろしていた旅の荷物を持ち上げ、ドアのほうに向かって歩き始めた。
 その背に対し、サイラスは思わず口を開いた。

「一人で行くのか?」

 返事を間違えればサイラスがついてきかねない勢いがその言葉にはあった。
 だからルイスは振り返り、はっきりと答えた。

「ついてこなくていい。お前はこの地をシャロン達と一緒に守ってくれ。それも大事な仕事であり、お前達にしかできないことだ」

 そう言われてはサイラスにはどうしようも無かった。
 サイラスが言葉を失ったのを感じ取ったルイスは再び背を向け、

「じゃあ、達者でな」

 と、シャロンにしたのと同じように淡白な別れの言葉を残して部屋から出て行った。
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