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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(27)
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閃光があふれ広がり、周囲を塗りつぶし始める。
純白では無い。銀が混じった、まだらな白。大量の光の魔力が描く特有の銀世界。
そのまだら模様の中には、人の形をしたものがあった。
それは一つでは無かった。そして次々と増えていた。
デュランにとってはそれはどれも見覚えのある形であった。
それもそのはず。今は無き故郷の者達を投影したからだ。
対し、ヘルハルトが広げる銀世界の中に浮き上がるのは天使の姿。
デュランとヘルハルト、二人が広げ始めた銀色の領域は間も無く接触し、己が領地を主張し合うかのようにせめぎ合い始めた。
戦士達と天使達が銀色の中でぶつかり合う。
そのせめぎ合いにデュランも切り込んでいた。戦士達を導くように先頭を走っていた。
詠唱の段階から読み合いは始まっていた。
これは大規模な精神汚染と精霊の大量展開を同時に行う技。
精神汚染の内容には戦士に関する記憶が代々継承されてきた。
戦場の中での無慈悲で無念な死の恐怖、勝利の名誉などだ。
この点に関しても対照的だった。
ヘルハルトは前者のような暗い重い感情を、デュランは後者の明るく熱い感情を採用していた。
だから二人の立ち位置もまた対照的であった。
ヘルハルトが後方からの飛び道具に徹しているのに対し、デュランは先頭を走っていた。
天使の群れが放つ恐怖の感情を、暗く重い波を戦士達が相殺することでデュランを支えていた。
デュランの背中を押し支えるその感情は、勇気であった。
ゆえにデュランは迫る恐怖に打ち勝とうとするような感覚で大剣を振るっていた。
戦士達の勇気が共鳴し、デュランの心に響き続ける。
支えるのは心だけでは無い。デュランが隙を突かれれば、手にある剣でかばう。
デュランの眼に映るのは一面のまだらな銀色と、数えきれないほどの天使の剣、剣、剣。
そのすべてをへし折ろうとするようにデュランが大剣を振るい、戦士達がその動きに合わせる。
まだらな銀色を塗りなおそうとするかのように、白い剣閃が幾重にも折り重なり、白い火花と雷を散らす。
あまりにも多すぎてどれが自分のものかわからなくなるほど。
踏み込む、切りかかる、受ける、避ける、かばう、それらすべてが常に同時に起き続ける。
すべての戦士と心が繋がっているゆえに、どれが自分の動きかすらわからなくなってしまいそうになる。
自分が最前であるゆえに、多くの戦士達から援護されているゆえに、背を押されているゆえに、自分の背中を後ろから見ているようにすら感じる。
すると間も無く、目の前の銀色から伝わってくる感情に変化が起き始めた。
恐怖の中に殺気が色濃く表れ始める。
その鋭く激しい感情は瞬く間に恐怖を押しのけ、デュランの心に突き刺さり始めた。
殺気、殺気、殺気、踏み込めば踏み込むほどに、大剣を振るえば振るうほどにそれは強くなっていった。
天使の攻撃も殺意に引きずられて変わっていた。繊細さは消え、体当たりなどの豪快で激しい動きばかりになっていった。
全身を使って殺意を表現しようとしているかのよう。まさに殺伐激越(さつばつげきえつ)。
その激しい殺意が前方で、一点で収束するのをデュランは感じ取った。
これは危険だ、そう思った。回避行動を取るべきだと、理性は言った。
だが、直後に戦士達の声が次々と響いた。
足を止めるな、我々が守る、お前はただ前へ、と。
その声と共に戦士達がデュランの前に飛び出す。
左右から一人ずつ、続けて両肩を跳び越すように斜め上からも一人ずつ、さらに頭上から一人、合計五人の戦士達がデュランの前に立つ。
五人の戦士達は頭上からの一人を頂部として正五角形の形を組み、重心となる点に向けて剣先を向けた。
剣が伸び、五本の線が五角形の重心で交わる。
線から魔力が流れこみ、重心が薄い円の形で広がり始める。
その膨らみと同時に線も形を変えていった。
より多くの魔力を流し込もうとするかのように、太くなっていく。
対し、流し込むほどに戦士達は人の形を失っていった。
五角の盾を形成し維持する、その機能だけを残しておぼろげなものに変わっていった。
剣だった線は手元側が細り、先端側が太く変化。
そして完成したのは丸い重心から五つの三角が伸び生えた形。
光り輝く五芒星。まるで星の魔法陣。
それが完成したのとほぼ同時に、収束した殺意は五芒星の盾にぶつかってきた。
純白では無い。銀が混じった、まだらな白。大量の光の魔力が描く特有の銀世界。
そのまだら模様の中には、人の形をしたものがあった。
それは一つでは無かった。そして次々と増えていた。
デュランにとってはそれはどれも見覚えのある形であった。
それもそのはず。今は無き故郷の者達を投影したからだ。
対し、ヘルハルトが広げる銀世界の中に浮き上がるのは天使の姿。
デュランとヘルハルト、二人が広げ始めた銀色の領域は間も無く接触し、己が領地を主張し合うかのようにせめぎ合い始めた。
戦士達と天使達が銀色の中でぶつかり合う。
そのせめぎ合いにデュランも切り込んでいた。戦士達を導くように先頭を走っていた。
詠唱の段階から読み合いは始まっていた。
これは大規模な精神汚染と精霊の大量展開を同時に行う技。
精神汚染の内容には戦士に関する記憶が代々継承されてきた。
戦場の中での無慈悲で無念な死の恐怖、勝利の名誉などだ。
この点に関しても対照的だった。
ヘルハルトは前者のような暗い重い感情を、デュランは後者の明るく熱い感情を採用していた。
だから二人の立ち位置もまた対照的であった。
ヘルハルトが後方からの飛び道具に徹しているのに対し、デュランは先頭を走っていた。
天使の群れが放つ恐怖の感情を、暗く重い波を戦士達が相殺することでデュランを支えていた。
デュランの背中を押し支えるその感情は、勇気であった。
ゆえにデュランは迫る恐怖に打ち勝とうとするような感覚で大剣を振るっていた。
戦士達の勇気が共鳴し、デュランの心に響き続ける。
支えるのは心だけでは無い。デュランが隙を突かれれば、手にある剣でかばう。
デュランの眼に映るのは一面のまだらな銀色と、数えきれないほどの天使の剣、剣、剣。
そのすべてをへし折ろうとするようにデュランが大剣を振るい、戦士達がその動きに合わせる。
まだらな銀色を塗りなおそうとするかのように、白い剣閃が幾重にも折り重なり、白い火花と雷を散らす。
あまりにも多すぎてどれが自分のものかわからなくなるほど。
踏み込む、切りかかる、受ける、避ける、かばう、それらすべてが常に同時に起き続ける。
すべての戦士と心が繋がっているゆえに、どれが自分の動きかすらわからなくなってしまいそうになる。
自分が最前であるゆえに、多くの戦士達から援護されているゆえに、背を押されているゆえに、自分の背中を後ろから見ているようにすら感じる。
すると間も無く、目の前の銀色から伝わってくる感情に変化が起き始めた。
恐怖の中に殺気が色濃く表れ始める。
その鋭く激しい感情は瞬く間に恐怖を押しのけ、デュランの心に突き刺さり始めた。
殺気、殺気、殺気、踏み込めば踏み込むほどに、大剣を振るえば振るうほどにそれは強くなっていった。
天使の攻撃も殺意に引きずられて変わっていた。繊細さは消え、体当たりなどの豪快で激しい動きばかりになっていった。
全身を使って殺意を表現しようとしているかのよう。まさに殺伐激越(さつばつげきえつ)。
その激しい殺意が前方で、一点で収束するのをデュランは感じ取った。
これは危険だ、そう思った。回避行動を取るべきだと、理性は言った。
だが、直後に戦士達の声が次々と響いた。
足を止めるな、我々が守る、お前はただ前へ、と。
その声と共に戦士達がデュランの前に飛び出す。
左右から一人ずつ、続けて両肩を跳び越すように斜め上からも一人ずつ、さらに頭上から一人、合計五人の戦士達がデュランの前に立つ。
五人の戦士達は頭上からの一人を頂部として正五角形の形を組み、重心となる点に向けて剣先を向けた。
剣が伸び、五本の線が五角形の重心で交わる。
線から魔力が流れこみ、重心が薄い円の形で広がり始める。
その膨らみと同時に線も形を変えていった。
より多くの魔力を流し込もうとするかのように、太くなっていく。
対し、流し込むほどに戦士達は人の形を失っていった。
五角の盾を形成し維持する、その機能だけを残しておぼろげなものに変わっていった。
剣だった線は手元側が細り、先端側が太く変化。
そして完成したのは丸い重心から五つの三角が伸び生えた形。
光り輝く五芒星。まるで星の魔法陣。
それが完成したのとほぼ同時に、収束した殺意は五芒星の盾にぶつかってきた。
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