Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(22)

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 爆音と共に散った白い羽と赤い花びらは混じり合い、空中でのたうつ紅白の大蛇となっていった。
 同時に放たれた衝撃波という激流に乗って、紅白の蛇は四方八方に散らばり、周囲の木々に噛みついていく。
 衝撃波はその蛇すらも吹き飛ばす勢いで広がっていった。
 枝葉を吹き飛ばし、木々をなぎ倒す音すら飲み込みながら広がっていく。
 まるで破壊の音そのものが突風となったかのよう。

「っ!」

 間も無く、その衝撃はルイスの体に圧迫感をともなう振動となって伝わった。

(二人は?!)

 どうなった!? その心の声すら爆発のすさまじさに圧迫される。
 二人は爆心地にもっとも近い位置にいたはずだ。
 無事でいてくれ、そんな思いを込めていまだに白さが抜けぬ爆心地のほうに視線を向けた。
 感知能力のアンテナをとがらせ、二人の気配を探す。
 すると、白の中に二つの影が浮かんでいるのを感じた。
 きっと、いや、間違い無い、この二人だ、ルイスがそう断じた直後、さらなる気配を感じ取った。
 二つの気配が森の中を走っている。吹き飛ばされているシャロンとキーラのほうに向かっている。
 それがよく知っている者の気配であることがわかった瞬間、その二つの気配のうちの一方が木を登り、枝を蹴って上に跳躍した。
 そして枝葉の中から姿を現したのはサイラスだった。
 雲を掴もうとしているかのように手を伸ばしている。
 否、その指先が示す先にあるのは雲では無かった。
 吹き飛んでくるシャロンに向かって懸命に手を伸ばす。
 その手にシャロンも応えた。シャロンも手を伸ばした。
 そして二人はからみ合うように中空でぶつかり合った。サイラスはしっかりと受け止めた。
 その様子をもう一つの気配であるフレディは下から見ていた。
 サイラスがシャロンを心配して追いかけたから、フレディはサイラスのことを気にかけて走ってきた、ただそれだけだった。
 だが気付けば、フレディは落ちてくるキーラに合わせて足を動かしていた。
 シャロンよりも落ちてくるのが遅いのは軌道が違うからだ。
 キーラはシャロンよりも高く山なりの軌道で吹き飛ばされたのだ。
 ゆえに危険。少しでも衝撃を殺してやらないと落下死する可能性が高い。
 サイラス様と同じようにできるだろうか、フレディの脳裏にそんな言葉が走る。
 やり方はわかっていた。
 この義手を使うようになってから、体の中の魔力の流れをより鮮明に感じ取ることができるようになった。足のつま先まで、はっきりと感じ取れる。
 ならばできるはずだ。同じようにやればいいだけのはずだ。足に意識を、魔力を集中させろ。
 木を壁と思うな。地面だと思え。
 フレディはそのように自己洗脳しながら木に足をかけ、

「うおおおらああぁっ!」

 気勢を発しながら垂直に駆け上がった。
 途中から三角飛びの要領でより高い木に蹴り移る。
 木から木へ、そして枝から枝へ。
 あとは速度を殺さずに、タイミングを合わせながらできるだけ高く上へ飛び上がるだけ。
 失敗の恐怖心は無かった。ただ必死だった。
 今だ! 今か?! 二つの言葉が頭の中でぶつかり合いつつも、フレディは枝を蹴って飛び上がった。
 完璧だった。引き寄せられているかのようにキーラが近づいてくる。
 ゆえにフレディはしっかりとキーラを空中で受け止めたが、

「がっは!」
 
 その衝撃に、肺の中の空気がすべて押し出された。
 空気以外の何かも少し出た感覚。
 その感覚と共に、フレディは気を失いかけた。
 このまま気を失ってしまってもいいのではないか? 着地の問題はキーラが魔法でなんとかしてくれるだろうと、フレディは一瞬思った。
 が、

(……キーラ!? 気絶している?!) 

 フレディまで寝ることは許されない状況であった。
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