530 / 545
最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(22)
しおりを挟む
爆音と共に散った白い羽と赤い花びらは混じり合い、空中でのたうつ紅白の大蛇となっていった。
同時に放たれた衝撃波という激流に乗って、紅白の蛇は四方八方に散らばり、周囲の木々に噛みついていく。
衝撃波はその蛇すらも吹き飛ばす勢いで広がっていった。
枝葉を吹き飛ばし、木々をなぎ倒す音すら飲み込みながら広がっていく。
まるで破壊の音そのものが突風となったかのよう。
「っ!」
間も無く、その衝撃はルイスの体に圧迫感をともなう振動となって伝わった。
(二人は?!)
どうなった!? その心の声すら爆発のすさまじさに圧迫される。
二人は爆心地にもっとも近い位置にいたはずだ。
無事でいてくれ、そんな思いを込めていまだに白さが抜けぬ爆心地のほうに視線を向けた。
感知能力のアンテナをとがらせ、二人の気配を探す。
すると、白の中に二つの影が浮かんでいるのを感じた。
きっと、いや、間違い無い、この二人だ、ルイスがそう断じた直後、さらなる気配を感じ取った。
二つの気配が森の中を走っている。吹き飛ばされているシャロンとキーラのほうに向かっている。
それがよく知っている者の気配であることがわかった瞬間、その二つの気配のうちの一方が木を登り、枝を蹴って上に跳躍した。
そして枝葉の中から姿を現したのはサイラスだった。
雲を掴もうとしているかのように手を伸ばしている。
否、その指先が示す先にあるのは雲では無かった。
吹き飛んでくるシャロンに向かって懸命に手を伸ばす。
その手にシャロンも応えた。シャロンも手を伸ばした。
そして二人はからみ合うように中空でぶつかり合った。サイラスはしっかりと受け止めた。
その様子をもう一つの気配であるフレディは下から見ていた。
サイラスがシャロンを心配して追いかけたから、フレディはサイラスのことを気にかけて走ってきた、ただそれだけだった。
だが気付けば、フレディは落ちてくるキーラに合わせて足を動かしていた。
シャロンよりも落ちてくるのが遅いのは軌道が違うからだ。
キーラはシャロンよりも高く山なりの軌道で吹き飛ばされたのだ。
ゆえに危険。少しでも衝撃を殺してやらないと落下死する可能性が高い。
サイラス様と同じようにできるだろうか、フレディの脳裏にそんな言葉が走る。
やり方はわかっていた。
この義手を使うようになってから、体の中の魔力の流れをより鮮明に感じ取ることができるようになった。足のつま先まで、はっきりと感じ取れる。
ならばできるはずだ。同じようにやればいいだけのはずだ。足に意識を、魔力を集中させろ。
木を壁と思うな。地面だと思え。
フレディはそのように自己洗脳しながら木に足をかけ、
「うおおおらああぁっ!」
気勢を発しながら垂直に駆け上がった。
途中から三角飛びの要領でより高い木に蹴り移る。
木から木へ、そして枝から枝へ。
あとは速度を殺さずに、タイミングを合わせながらできるだけ高く上へ飛び上がるだけ。
失敗の恐怖心は無かった。ただ必死だった。
今だ! 今か?! 二つの言葉が頭の中でぶつかり合いつつも、フレディは枝を蹴って飛び上がった。
完璧だった。引き寄せられているかのようにキーラが近づいてくる。
ゆえにフレディはしっかりとキーラを空中で受け止めたが、
「がっは!」
その衝撃に、肺の中の空気がすべて押し出された。
空気以外の何かも少し出た感覚。
その感覚と共に、フレディは気を失いかけた。
このまま気を失ってしまってもいいのではないか? 着地の問題はキーラが魔法でなんとかしてくれるだろうと、フレディは一瞬思った。
が、
(……キーラ!? 気絶している?!)
フレディまで寝ることは許されない状況であった。
同時に放たれた衝撃波という激流に乗って、紅白の蛇は四方八方に散らばり、周囲の木々に噛みついていく。
衝撃波はその蛇すらも吹き飛ばす勢いで広がっていった。
枝葉を吹き飛ばし、木々をなぎ倒す音すら飲み込みながら広がっていく。
まるで破壊の音そのものが突風となったかのよう。
「っ!」
間も無く、その衝撃はルイスの体に圧迫感をともなう振動となって伝わった。
(二人は?!)
どうなった!? その心の声すら爆発のすさまじさに圧迫される。
二人は爆心地にもっとも近い位置にいたはずだ。
無事でいてくれ、そんな思いを込めていまだに白さが抜けぬ爆心地のほうに視線を向けた。
感知能力のアンテナをとがらせ、二人の気配を探す。
すると、白の中に二つの影が浮かんでいるのを感じた。
きっと、いや、間違い無い、この二人だ、ルイスがそう断じた直後、さらなる気配を感じ取った。
二つの気配が森の中を走っている。吹き飛ばされているシャロンとキーラのほうに向かっている。
それがよく知っている者の気配であることがわかった瞬間、その二つの気配のうちの一方が木を登り、枝を蹴って上に跳躍した。
そして枝葉の中から姿を現したのはサイラスだった。
雲を掴もうとしているかのように手を伸ばしている。
否、その指先が示す先にあるのは雲では無かった。
吹き飛んでくるシャロンに向かって懸命に手を伸ばす。
その手にシャロンも応えた。シャロンも手を伸ばした。
そして二人はからみ合うように中空でぶつかり合った。サイラスはしっかりと受け止めた。
その様子をもう一つの気配であるフレディは下から見ていた。
サイラスがシャロンを心配して追いかけたから、フレディはサイラスのことを気にかけて走ってきた、ただそれだけだった。
だが気付けば、フレディは落ちてくるキーラに合わせて足を動かしていた。
シャロンよりも落ちてくるのが遅いのは軌道が違うからだ。
キーラはシャロンよりも高く山なりの軌道で吹き飛ばされたのだ。
ゆえに危険。少しでも衝撃を殺してやらないと落下死する可能性が高い。
サイラス様と同じようにできるだろうか、フレディの脳裏にそんな言葉が走る。
やり方はわかっていた。
この義手を使うようになってから、体の中の魔力の流れをより鮮明に感じ取ることができるようになった。足のつま先まで、はっきりと感じ取れる。
ならばできるはずだ。同じようにやればいいだけのはずだ。足に意識を、魔力を集中させろ。
木を壁と思うな。地面だと思え。
フレディはそのように自己洗脳しながら木に足をかけ、
「うおおおらああぁっ!」
気勢を発しながら垂直に駆け上がった。
途中から三角飛びの要領でより高い木に蹴り移る。
木から木へ、そして枝から枝へ。
あとは速度を殺さずに、タイミングを合わせながらできるだけ高く上へ飛び上がるだけ。
失敗の恐怖心は無かった。ただ必死だった。
今だ! 今か?! 二つの言葉が頭の中でぶつかり合いつつも、フレディは枝を蹴って飛び上がった。
完璧だった。引き寄せられているかのようにキーラが近づいてくる。
ゆえにフレディはしっかりとキーラを空中で受け止めたが、
「がっは!」
その衝撃に、肺の中の空気がすべて押し出された。
空気以外の何かも少し出た感覚。
その感覚と共に、フレディは気を失いかけた。
このまま気を失ってしまってもいいのではないか? 着地の問題はキーラが魔法でなんとかしてくれるだろうと、フレディは一瞬思った。
が、
(……キーラ!? 気絶している?!)
フレディまで寝ることは許されない状況であった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる