526 / 545
最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(18)
しおりを挟む
そしてルイスは味方の集合を待ちながらデュランを見た。
最初に抱いた印象はシャロンと同じであった。
凄まじい、その一言だけであった。
明らかにデュランに攻撃が集中している。一人の戦士に対してぶつけるには過剰すぎる火力。間違い無くヘルハルトはデュランを強く意識している。
精神汚染の影響は感じられない。ヘルハルトを倒す、ただその一心だけで精神汚染を耐えている。ムカデを投げる必要が無いほどの闘志を感じる。
攻撃の多くをデュランが受けてくれているおかげで全体の被害が減っている。
デュランに降り注いでいる雨のような光弾と精霊が精神汚染と共に他の者達を狙うようになったら、この場にいる者達はすぐに壊滅してしまうだろう。
デュランに時間を稼いでもらっている間に態勢を整えなくてはならない。
(だが、これは――)
この状況は危うい。すでに崖っぷちであるとルイスは感じた。
あの攻撃の中でデュランがまだ生き残っていられているこの状況は、一言で言えば奇跡だ。
そしてこの奇跡の残り時間は短い。このまま何もしなければデュランは間も無く死んでしまうだろう。
早く何とかしないと――ルイスが焦りの感情を強く抱いた瞬間、後方から声が響いた。
「ルイス!」
突然響いたサイラスの声に、ルイスは喜んで振り返った。
「来てくれたのか! 助かる!」
が、サイラスはルイスの呼び声に応じてこの場に参上したわけでは無かった。
「残念だが、来たというよりは押しこまれただけだ! 後方の部隊は敵の増援に完全に浸透されてる! もうすぐここにも来るぞ!」
サイラスはその残念な知らせを叫んだあと、別の人物のほうに視線を移動させながら次の声を上げた。
「それとここに来た理由はもう一つ! シャロン!」
シャロンが振り返ったのを見てから、サイラスは右手にあるものを放り投げた。
投げられた棒状のものをシャロンが受け取ると、その手の中には宝石剣が輝いていた。
「それを返したほうがいいと思ったからだ! では、俺は後方の援護に戻らせて――」
そしてサイラスは後方に戻ろうとしたが、ルイスはその腕を掴み止めて口を開いた。
「いや、サイラス、君はここにいてくれ! 優秀な精霊使いが一人でも多く必要だからだ!」
後方も切羽詰まっているが、ここも相当に厳しい状況であることを察したサイラスはルイスに従い、尋ねた。
「わかった! 何をすればいい!」
「設計図を渡す! その設計図の精霊を周囲の仲間達にばらまいてくれ! それとデュランの援護も頼む!」
「どっちが優先だ!」
「わからない! とにかくどちらも何もかもギリギリの状況だ!」
最優先の仕事が二つあるという、本当に最悪でギリギリな状況であった。
最初に抱いた印象はシャロンと同じであった。
凄まじい、その一言だけであった。
明らかにデュランに攻撃が集中している。一人の戦士に対してぶつけるには過剰すぎる火力。間違い無くヘルハルトはデュランを強く意識している。
精神汚染の影響は感じられない。ヘルハルトを倒す、ただその一心だけで精神汚染を耐えている。ムカデを投げる必要が無いほどの闘志を感じる。
攻撃の多くをデュランが受けてくれているおかげで全体の被害が減っている。
デュランに降り注いでいる雨のような光弾と精霊が精神汚染と共に他の者達を狙うようになったら、この場にいる者達はすぐに壊滅してしまうだろう。
デュランに時間を稼いでもらっている間に態勢を整えなくてはならない。
(だが、これは――)
この状況は危うい。すでに崖っぷちであるとルイスは感じた。
あの攻撃の中でデュランがまだ生き残っていられているこの状況は、一言で言えば奇跡だ。
そしてこの奇跡の残り時間は短い。このまま何もしなければデュランは間も無く死んでしまうだろう。
早く何とかしないと――ルイスが焦りの感情を強く抱いた瞬間、後方から声が響いた。
「ルイス!」
突然響いたサイラスの声に、ルイスは喜んで振り返った。
「来てくれたのか! 助かる!」
が、サイラスはルイスの呼び声に応じてこの場に参上したわけでは無かった。
「残念だが、来たというよりは押しこまれただけだ! 後方の部隊は敵の増援に完全に浸透されてる! もうすぐここにも来るぞ!」
サイラスはその残念な知らせを叫んだあと、別の人物のほうに視線を移動させながら次の声を上げた。
「それとここに来た理由はもう一つ! シャロン!」
シャロンが振り返ったのを見てから、サイラスは右手にあるものを放り投げた。
投げられた棒状のものをシャロンが受け取ると、その手の中には宝石剣が輝いていた。
「それを返したほうがいいと思ったからだ! では、俺は後方の援護に戻らせて――」
そしてサイラスは後方に戻ろうとしたが、ルイスはその腕を掴み止めて口を開いた。
「いや、サイラス、君はここにいてくれ! 優秀な精霊使いが一人でも多く必要だからだ!」
後方も切羽詰まっているが、ここも相当に厳しい状況であることを察したサイラスはルイスに従い、尋ねた。
「わかった! 何をすればいい!」
「設計図を渡す! その設計図の精霊を周囲の仲間達にばらまいてくれ! それとデュランの援護も頼む!」
「どっちが優先だ!」
「わからない! とにかくどちらも何もかもギリギリの状況だ!」
最優先の仕事が二つあるという、本当に最悪でギリギリな状況であった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
Re:征服者〜1000年後の世界で豚公子に転生した元皇帝が再び大陸を支配する〜
鴉真似≪アマネ≫
ファンタジー
大陸統一。誰もが無理だと、諦めていたことである。
その偉業を、たった1代で成し遂げた1人の男がいた。
幾多の悲しみを背負い、夥しい屍を踏み越えた最も偉大な男。
大統帝アレクサンダリア1世。
そんな彼の最後はあっけないものだった。
『余の治世はこれにて幕を閉じる……これより、新時代の幕開けだ』
『クラウディアよ……余は立派にやれたかだろうか』
『これで全てが終わる……長かった』
だが、彼は新たな肉体を得て、再びこの世へ舞い戻ることとなる。
嫌われ者の少年、豚公子と罵られる少年レオンハルトへと転生する。
舞台は1000年後。時期は人生最大の敗北喫した直後。
『ざまあ見ろ!』
『この豚が!』
『学園の恥! いや、皇国の恥!』
大陸を統べた男は再び、乱れた世界に牙を剝く。
これはかつて大陸を手中に収めた男が紡ぐ、新たな神話である。
※個人的には7話辺りから面白くなるかと思います。
※題名が回収されるのは3章後半になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる