Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(17)

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 黒いムカデは螺旋階段を昇るように回りながら這い上がり、二人の後頭部に噛みついた。
 
「っ!」「これは?!」

 そして流れ込んできた感覚に、二人の体は跳ね上がった。
 怒りが、憎悪が沸き上がってくる。
 感情の起源を強固にするための記憶も流れ込んできていた。
 それはルイスの記憶であった。
 古い古い、太古の時代の記憶。
 かつて人間達が神の奴隷とされていた時代のもの。
 その悲痛な記憶によって憎悪が掻き立てられる。
 そのドス黒い感覚によって、二人の体は力を取り戻した。 
 そして二人が並んで立ち、互いをかばい合いながら全力の攻撃を再開すると、

「っ?! うぐ!」
「何を!? うあぁ!」

 周囲から普通では無い悲鳴が上がり始めた。
 見ると、天使を背負った兵士達が味方を攻撃し始めていた。
 その狂気がシャロンとキーラに襲い掛かるのに時間はかからなかった。
 二人は反撃せずにその狂気を避けた。
 反撃していいのか? そんな思いが少しだけあった。
 だからシャロンは兵士の攻撃を避けながら声を上げた。

「ルイス!?」

 わたしには倒す以外の手段が思いつかない、あなたには手があるか、そんな思いと共にシャロンは呼び声を響かせた。
 その声が響くよりも前からすでに、ルイスは調査を開始していた。
 天使は繋がっているだけでは無い。既に脳の中まで侵されている。
 精霊を使えば排除は可能だろう。
 しかし問題はその後だ。
 人格の基礎となる記憶などを侵されていることは既に確定。だからこちらの呼びかけに一切の反応を示さない。だからただ排除するだけでは空っぽの人間になってしまう。
 その点に関しては適当に記憶をでっちあげて再構築すれば一応の治療は可能だ。
 しかしこの侵略の根はより深いところまで伸びてしまっているように感じられる。生命維持に関わる部分まで掌握されている可能性が高い。いや、高いというよりは確定と考えるべきだろう。
 だからただ排除するだけでは死ぬ。運が良くても動けない廃人になるのがオチだろう。
 ならば手段は一つしか無い。アルフレッドがやったように、壊しながら直すしか無い。
 だがそれは無理だ。直すには大量の精霊を、魂を消費することになる。
 そんな余裕は無い。今の手持ち分は味方を精神汚染から守るためのムカデに使うべきだ。
 ここまで考えるのに一秒もかからなかった。
 だからルイスは即答したように見えた。
 
「そいつらはもう無理だ! 救えない!」

 その返事と同時に、シャロンは右手を赤く輝かせた。
 爆発魔法で天使ごと吹き飛ばす。
 その爆発音を合図にしたかのようにルイスは周囲に向かって声を響かせた。

「ムカデを受け取った精霊使いは私の近くに集まれ!」
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