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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(14)

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   ◆◆◆

「……! ……なさい!」

 ぼんやりとした意識の中で声が聞こえた。
 誰かが叫んでいる。
 呼ばれている、そんな気がする。
 うるさいな、もう少し休ませて、おぼろげな意識の中でシャロンはそう思った。
 が、
 
「立ちなさい! ……お願いだから立って、シャロン!」

 悲痛さすら感じられるキーラのその声に、シャロンは飛び起きた。
 しかし目が覚めて最初に目に入ったのはキーラでは無かった。
 空を覆いそうなほどの巨人がいた。見上げるほどに巨大だった。
 だから一瞬わからなかった。それがヘルハルトだと。
 それからようやく、キーラの存在に気付いた。
 キーラは傷だらけだった。
 衣服はボロボロになっており、かつての魔王である威圧感はもはや感じられない。
 破れ目から覗く肌には、光魔法が炸裂したと思われる傷や火傷が見える。
 しかしキーラはなんともないかのように戦っていた。
 爆発魔法を放ち、光弾を放ち、精霊を放ち、時に光の盾で受ける。
 だが回避行動は無い。
 なぜか、考えるまでも無かった。
 気絶していた自分をかばってくれているからだ、その事に気付いたのと同時にシャロンの体は動いた。
 キーラの前に立ち、今度は自分が身代わりとなる。
 そして迎撃を開始してからようやく、シャロンはデュランの存在に気付いた。
 デュランは少し離れたところに、よりヘルハルトに近い位置にいた。
 すぐに存在に気付けなかったのも無理は無かった。
 目ではその姿を確認することが難しいからだ。
 すさまじい量の光の弾幕がデュランに降り注いでいる。かなりの攻撃がデュランに集中している。
 だからずっと真っ白だ。デュランの姿は影も見えない。影すら白く塗りつぶされている。
 その中に時々赤色と爆発音が混じる。爆発魔法も弾幕の中に混じっている。
 だからようやく気付いた。キーラは自分だけじゃ無く、デュランまで守っていたことを。
 今もデュランのほうに精霊を投げている。対処の難しい爆発魔法を処理させている。
 だが完璧じゃ無い。撃ち漏らすことも多い。
 だからデュランは光の中でお手玉されているかのように飛び跳ねている。白の中からそれを感じる。
 飛び跳ねながら声を上げている。ずっと口を開けてる。叫んでいる。

「―――ッ!!」

 しかしその叫びはシャロンの耳には届かない。
 光魔法の炸裂音と爆発音しか聞こえない。
 だが心の声は届いていた。白の中から心の叫び声が響いていた。

 右足にまた被弾した! 内出血がひどい! 魔力をもっと回して補え!
 左から攻撃が来る! 盾を――
 くそ、重い! 腕への魔力供給もさっきからずっと足りてないぞ!

 高速演算中で無ければ理解できないほどの速さの早口言葉で聞こえてくる。
 自分の心を、劣勢を隠そうともしていない。
 そんな余裕が無いのだ。
 そして奇妙であった。
 背負っている精霊に苛立ちをぶつけているように聞こえた。最初は。しかし違った。
 自分の意識についてこれない体を叱咤しているのだ。自分で自分に怒っているのだ。
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