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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(9)

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   ◆◆◆

 一方――

「近い! みんな警戒しろ!」

 敵陣奥深くまで切り込んだアルフレッド達はついに大神官の気配を捕まえていた。
 警戒の指示を出すと同時に、正確な位置情報を全員に送る。
 直後、並走するへアトリスが声を上げた。

「逃げてる! でもこっちのほうが速い!」 

 ベアトリスは相手の逃走速度から予想される接敵時間を計算しようとした。
 が、

「「!」」 

 次の瞬間にその必要は無くなった。
 その理由をベアトリスが声に出した。

「立ち止まった?!」

 向こうも戦う覚悟を決めたようであった。
 が、

「「「!?」」」

 覚悟を決めたのは大神官一人では無かった。
 それをアルフレッドは声に出した。

「何か上から降りて来るぞ!」

 雲のようなものが空から降りてきている、いや、落ちてきている。そう感じられた。
 しかしその感覚はすぐに変わった。
 雲では無く何かの集合体、それがわかるようになった。
 そしてそれが目でも確認できるほどに近くと、さらに新たなことがわかった。
 誰か、いや、何か二つのものが集合体を率いている。
 片方はアルフレッドがよく知る存在であった。
 だからアルフレッドの口は勝手に開いていた。

「あいつは!」

 それはベアトリスにとって憎き存在であったがゆえに、ベアトリスは思わずその名を漏らした。

「ナイアラ……っ!」

 それが大神官の前に降り立つのと、アルフレッド達が辿り着くのは同時であった。
 アルフレッドは二刀を構えながらナイアラを睨みつけた。
 が、ナイアラはまるで友人であるかのように思念を響かせた。

“息災かな? また会えて嬉しいぞアルフレッド”

 親しげだが、人ならざる異形の声。
 ゆえに逆に不気味さが強くなる。
 だが、直後に響いた新たな声は、ナイアラとは違ってはるかに人間らしい声であった。

“まったく困るなあ……君はいつも良く活躍してくれるね、アルフレッド”
 
 ナイアラの隣にいる人物が響かせた思念は、明らかに女の声であった。
 異性の心をわしづかみにするような声。
 体型は女性の特徴をはっきりと有している。
 顔は誰の目から見ても美形。しかし少しだけ男らしさがある。
 服も精霊で表現されており、それもやや男性より。
 ゆえに、男装の麗人のよう。
 そしてそれは再び美しい声を響かせた。

“おっといけない。私は君のことをよく知っているが君は違うね。ならばまずは、はじめましてと言うべきだったね”

 まるで相手を子供扱いしているような、遊んでいるような声。
 だが不快感は無い。
 それどころかますます心が惹きつけられる。
 クトゥグアはその魔性の声をアルフレッドに向かって響かせた。

“はじめましてアルフレッド。私の名はクトゥグア。どうぞよろしく……”

 声を響かせながらクトゥグアと名乗ったそれは、存在しないドレスの両端を持ち上げる仕草をしながらお辞儀をした。
 そしてクトゥグアが頭を上げ始めた瞬間、アルフレッドは警戒の声を上げた。

「来るぞ!」

 それは正解であり、ゆえに頭を上げたクトゥグアは言った。

”そしてさようなら”
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