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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(8)

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 渦巻く槍の先端が押し合い、力をためたバネのように縮む。
 互角。そう見えた。
 だが、バネには限界を超えた力がかかっていた。
 バネは間も無く悲鳴を上げた。

「!」

 その声無き悲鳴を見たデュランは目を見開いた。
 ぶつかり合っている先端部がひしゃげ、そこから細切れに千切れ始めたからだ。
 このままだと渦の魔力が無秩序に開放されてしまう。大量の魔力が四方八方に飛び散ることになる。
 精霊体であるヘルハルトは光の魔力に対しての抵抗力が高いが、生身の自分はそうでは無い。
 この盾で受け止められるか? という考えは理性が否定していた。
 ならばなんとかして受け流すしか――デュランがそう考えた瞬間、

(そのまま!)(まだ動かないで!)
 
 シャロンとキーラの心の声が響いた。
 何をそのままにしろというのか、なぜまだ動いてはダメなのか、言葉無くとも伝わっていた。
 だからデュランはこの窮地の状況の中で待った。二人を信じた。
 直後、デュランの後方、左右真横から二人は現れた。
 二人とも手を突き出していた。
 左から現れたシャロンは右手を、右から現れたキーラは左手を。
 輝くその手をデュランの盾に添える。
 輝きが伝搬するように大盾の輝きが増した、そう見えた次の瞬間、盾の表面に分厚い防御魔法が形成された。
 ぶつかり合っていた渦が崩壊したのはそれとほぼ同時だった。
 あふれる光に視界が白く染められる中、大盾とその後ろにいる三人だけは影に包まれ守られていた。
 だが、影が色と形を保っていられたのは数瞬の刹那であった。
 白は瞬く間に影を歪ませ、轟音と共に塗りつぶした。

   ◆◆◆

「っ!」

 突如響いた轟音に、ルイスは反射的に振り返った。
 シャロン達の方を向いていなかった理由は、敵の増援に挟撃されているからだ。
 そして爆発のような魔力の奔流は、ルイスの肌に響くほどの規模であった。
 巨大光弾のぶつかり合いによって描かれたあの光景と同じ、白い稲妻の拡散が森の中で起きた、それがはっきりと理解できた。
 シャロン達は無事なのか? それを調べるためにルイスが感知を研ぎ澄ませ始めた直後、

「!?」

 真上を通過する大きな存在に、ルイスは思わず見上げた。
 ドラゴンの群れが頭上を通過していくのが見える。
 我々を無視してどこへ何をしに向かっているのか、それは考えるまでも無かった。
 だからルイスは叫んだ。

「敵はできるだけ無視してシャロン達の援護に向かえ! 乱戦で我々の足を止めることが敵の狙いだぞ!」
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