Iron Maiden Queen

最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(4)

　森の中に吸い込まれたかのような吹き飛び。
　木に叩きつけられて内臓破裂で死亡、その結果しか予想できない。木にぶつからない確率は絶望的に低い。
　だからシャロンとキーラには祈ることも出来なかった。
　が、吹き飛ぶデュランの心には死の影などどこにもなかった。
　直撃の瞬間、痛みで揺れた以外には動揺すら無かった。
　デュランの心は異常なほどに冷静だった。
　しかし頭は対照的に熱くなっていた。限界に近い速度で思考を行っていた。　
　だからデュランは吹き飛ばされた直後に自身の状態を高速演算で確認できていた。
　
（計算通りに衝撃を散らすことができた。いずれの骨にも関節にも異常は無い）

　剣を当て、盾で受け、足で飛び下がる、その全てを最適なタイミングで行い、かつ反動を利用することでデュランは直撃の衝撃を散らしつつ緩和していた。
　そしてその確認が完了した瞬間、デュランは体を捻った。
　裏拳の要領で大盾を後方に繰り出す。
　その動きに合わせて、背中にいる戦士長も後方に防御魔法を展開。
　直後、迫っていた木に二つの盾が激突。
　金属音と光の粒子が散り、反動で吹き飛び方向が変わる。
　その変化までデュランは計算できていた。
　だからデュランは上半身を前に倒し、縦に体を回転させ始めた。
　回転斬りの要領で大剣を振り降ろす。
　この動きにも戦士長は合わせた。
　繰り出された鋼の刃と光の刃が、目の前にまで迫っていた太枝を切り落とす。
　枝葉が落ち、視界が開けると、そこにはもう次の木が迫っていた。
　だが激突の角度が浅い。
　盾を使うまでも、戦士長に頼るまでも無い事がわかるまで、今のデュランには数瞬の時間も必要無かった。
　鋭く腰を捻り、体を横に回転させる。。
　その回転の力を利用して、デュランは回し蹴りの要領で足裏を木に叩きつけた。
　反動で激突を回避し、すれ違う。
　直後、今度は地面が迫ってきた。
　着地点の地形は不安定。速度もある。足で着地するのは危険。
　だからデュランは大盾を足元に添えた。
　雪遊びに使う「そり」の要領で、大盾の上に乗りながら着地し、地面の上を滑る。
　が、そりは何かにぶつかり、大きくバランスを崩した。
　地中浅く埋まっていた木の根であった。
　これはどうしようも無い。見えないのだから予測の立てようが無い。
　しかしデュランの高速演算は瞬時に対応した。
　大盾の上から放り出されることがわかっていたかのように、流れるような動作で地面の上を一回転して受け身。
　死を確信された吹き飛びからの芸術的な着地であった。
　が、それを賞賛する時間も余裕も無かった。
　だから戦士長は即座に警告の思念を発した。

“続けて来るぞ！”

　デュランはそれもわかっていた。感じ取っていた。
　だからデュランは力強く即答した。

「わかってる！　準備しろ！」