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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
最終話 主が戻る 人よ思い出せ 古き恐れを(3)
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一合交えるたびに、少しずつ食われている。
だからなんだ、と、ヘルハルトの理性は否定しようとした。
再生は十分すぎるほどに間に合っている。後方からの補給も贅沢なほどにきている。
食われるぶんよりも増えるほうが大きい。
それは事実であった。
ヘルハルトの巨体はさらにその体格を増しつつあった。
しかしその事実をもってしてもヘルハルトの心は余裕を取り戻すことは無かった。
だからヘルハルトは早く終わらせようとした。
大剣を六本に増やし、さらに手数を増やす。
速度も上げる。体内の魔力消費量を増やし、剣閃をさらに鋭くする。
そのあまりの攻撃の激しさに、デュランは防戦一方となった。
だが、にもかかわらずヘルハルトの体は食われ続けた。
鋼の刃で防御されるだけでむしり取られる。
この手数と速度をもってしても崩せないのか?! そんな言葉がヘルハルトの心に走る。
その言葉に突き動かされるように、ヘルハルトはからめ手を繰り出した。
腹の口を赤く輝かせて炎を噴き出させる。
ゼロ距離で放たれたその赤い波をデュランは大盾で受けた。
そうするだろうと思っていた。盾に頼るだろうと。
だからヘルハルトはその防御を確認してから後方に地を蹴った。
これからやりたいことには少しの時間が必要だったからだ。
跳び下がりながら、大剣を持つ六本の腕すべてを上段に構える。
六枚の刃を真上に掲げながら重ね、一つに融合させていく。
直後にデュランが赤い波を強引に突破してきたが、その行為を止めることは間に合わなかった。
六本の剣は一つの巨大な剣に。
長い柄を六つの手で握り支えながら、ヘルハルトはそれを横に一閃。
その一撃はあまりにも巨大であり、現実感が無かった。
目障りな小動物をなぎ払おうとしている、そんな光景に見えた。
しかしそれでもデュランは足を止めなかった。
踏み込みながら迫る巨大な刃に向かって鋼の刃を振り下ろす。
デュランの視点からすればそれは、迫る光の壁に剣を叩きつけたかのような行為であった。
あまりにも圧倒的すぎた。
ゆえにデュランの剣はあっさりと弾かれた。
すぐさま左手の大盾を前に出し、迫る光の壁に押し当てる。
だがそれも防御以外の意味は成さなかった。デュランの体は軽々と吹き飛ばされた。
「「デュラン!」」
シャロンとキーラが無事を願って叫ぶ。
だが、二人の脳裏には「死」の一文字しか無かった。そんな絶望的な吹き飛びかたであった。
だからなんだ、と、ヘルハルトの理性は否定しようとした。
再生は十分すぎるほどに間に合っている。後方からの補給も贅沢なほどにきている。
食われるぶんよりも増えるほうが大きい。
それは事実であった。
ヘルハルトの巨体はさらにその体格を増しつつあった。
しかしその事実をもってしてもヘルハルトの心は余裕を取り戻すことは無かった。
だからヘルハルトは早く終わらせようとした。
大剣を六本に増やし、さらに手数を増やす。
速度も上げる。体内の魔力消費量を増やし、剣閃をさらに鋭くする。
そのあまりの攻撃の激しさに、デュランは防戦一方となった。
だが、にもかかわらずヘルハルトの体は食われ続けた。
鋼の刃で防御されるだけでむしり取られる。
この手数と速度をもってしても崩せないのか?! そんな言葉がヘルハルトの心に走る。
その言葉に突き動かされるように、ヘルハルトはからめ手を繰り出した。
腹の口を赤く輝かせて炎を噴き出させる。
ゼロ距離で放たれたその赤い波をデュランは大盾で受けた。
そうするだろうと思っていた。盾に頼るだろうと。
だからヘルハルトはその防御を確認してから後方に地を蹴った。
これからやりたいことには少しの時間が必要だったからだ。
跳び下がりながら、大剣を持つ六本の腕すべてを上段に構える。
六枚の刃を真上に掲げながら重ね、一つに融合させていく。
直後にデュランが赤い波を強引に突破してきたが、その行為を止めることは間に合わなかった。
六本の剣は一つの巨大な剣に。
長い柄を六つの手で握り支えながら、ヘルハルトはそれを横に一閃。
その一撃はあまりにも巨大であり、現実感が無かった。
目障りな小動物をなぎ払おうとしている、そんな光景に見えた。
しかしそれでもデュランは足を止めなかった。
踏み込みながら迫る巨大な刃に向かって鋼の刃を振り下ろす。
デュランの視点からすればそれは、迫る光の壁に剣を叩きつけたかのような行為であった。
あまりにも圧倒的すぎた。
ゆえにデュランの剣はあっさりと弾かれた。
すぐさま左手の大盾を前に出し、迫る光の壁に押し当てる。
だがそれも防御以外の意味は成さなかった。デュランの体は軽々と吹き飛ばされた。
「「デュラン!」」
シャロンとキーラが無事を願って叫ぶ。
だが、二人の脳裏には「死」の一文字しか無かった。そんな絶望的な吹き飛びかたであった。
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