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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
第二十五話 愛を讃えよ(37)
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慌てて右手で爆発魔法を放つ。
しかしやはり少し反応が遅れたことが仇となった。
放った爆発魔法が目の前で撃ち落とされ、炸裂する。
そして生じた衝撃波で右腕がねじれ歪み、破損する。
左腕だけでは! そんな思いがヘルハルトの中より生まれるより早く、思念が響いた。
“我らを!”
後方から精霊達がヘルハルトの右肩に飛びつき、その身を捧げる。
瞬間、
“!?”
ヘルハルトは違和感を感じた。
いま右肩から取り込まれたのは炎の戦士では無い、それが感覚でわかった。
その違和感を確かめるより早く、右腕が修復される。
さらにそれだけでは無く、肩から新たな腕が生え始めた。
だが、この修復速度をもってしてもシャロンの攻撃速度のほうが速い。
が、直後、
“私達が!”
と、思念が響き、ヘルハルトの真横を通りぬけて精霊達が突っ込んでいった。
その精霊達はやはり炎の戦士では無かった。
大人の女性の外観をした精霊。
これに対し、ヘルハルトは高速演算による早口で響かせた。
“お前達の仕事は後方支援だろう! 戦わなくていい! 下がれ!”
しかし女性達は聞く耳を持たなかった。
爆発魔法を両手で抱えたまま、次々とシャロンとキーラに向かって特攻していく。
しかし誰一人として二人に届かない。宝石銃と爆発魔法で次々と撃墜されていく。
その爆発音の中、これまでに無い異質な思念が響いた。
“母さん!”
ヘルハルトが視線を向けると、そこには小さな精霊がいた。
だからヘルハルトは声を上げた。
“子供?! 非戦闘員まで出てきているのか!? やめろ! お前達までこんな地獄に付き合う必要は無い!”
負けたとしても、素直に降伏して新しい神の木の管理者に従う意思を見せれば、そのまま生き残れる可能性はある。
ヘルハルトはそう叫んだのだが、やはり誰の耳にも届いていないようであった。
だからヘルハルトは彼女達を止めることをあきらめた。
代わりに、言うべきことがあった。
ヘルハルトはそれを全員に響くように叫んだ。
“わかった! もう何も言うまい! 共に行こう!”
その声には希望の色が濃く滲んでいた。
なぜなら、ヘルハルトの視界の奥にあるものが映っていたからだ。
◆◆◆
ヘルハルトの希望となった物の存在は、すぐにルイスも感知した。
それはルイスにとっては希望では無く、驚異だった。
ゆえに、
「な、なんだと?! このタイミングで!?」
ルイスは思わず振り返り、声を上げた。
この状況まで隠して温存していた?
いや、それはおかしい。温存する理由が無い。
増援が来る方向の先に我々が知らない敵の拠点があり、そこで作られた戦力が遅れて到着した、と考えるのが妥当だろう。
ルイスがそう思った直後、感知能力者達が次々と声を上げ始めた。
「て、敵です! 後方から敵の増援!」
「速い!」
「ドラゴンの群れです!」
どう対処する? その疑問に対しての答えが浮かび上がるのにはさほどの時間も要さなかった。
ルイス達の選択肢が少ないからだ。切れるカードがあまり手元に無い。
その少ないカードの内容を、ルイスは声に出した。
「戦力を二つに分ける! 修復したばかりの巨大ドラゴンと精霊使い達を迎撃に向かわせろ!」
それくらいしか選択肢が無いことは皆も分かっていた。ゆえに全員が即座に反応した。
負傷して後方に下がっていたサイラスもであった。負傷した体を引きずって、敵の増援のほうに走り始めた。
そしてルイスの声が響き終わって間も無く、アルフレッドの心の声が届いた。
(ルイスさん、見つけました! 炎の戦士達に燃料を補給している敵の魔法使い達の居場所です! 大神官もいる! こいつらで間違いない! 敵の補給が激しくなったおかげでようやく見つけられました!)
ならばどうするべきか、それも続けてアルフレッドは響かせた。
(俺が奇襲をかけます! この場を離れる許可をください!)
しかしそれはあまりに無謀な提案に見えた。
が、その無謀さもかえりみない一人の声が直後に響いた。
(わたしも行きます!)
絶対についていく、という意思を感じさせるベアトリスの声。
だが、二人ではやはり少なすぎた。
だからルイスは声と心を大きく周囲に響かせた。
(「誰か! この二人の援護ができる勇気ある者はいないか!」)
数秒の後、男の心の声が返ってきた。
(我々が行きます!)
その声には、部隊の詳細についての情報も含まれていた。
が、ルイスはあえて確認するように心を響かせた。
(バークの部下だった戦士達か!)
そうです、と、男は即座に答えた。
バークの戦士達はこの森に慣れている。足も速い。アルフレッドとも連携できるだろう。これ以上無い提案に感じられた。
だからルイスも即答した。
(わかった、許可する! すぐに行ってくれ!)
応! や、了解! など、それぞれの返答が混じって響いたのと同時に、アルフレッド達は動き始めた。
それを感じ取ったルイスはすぐに意識を別の方向に向けた。
シャロンとキーラのところで何かが起きようとしている、そう感じられたからだ。
しかしやはり少し反応が遅れたことが仇となった。
放った爆発魔法が目の前で撃ち落とされ、炸裂する。
そして生じた衝撃波で右腕がねじれ歪み、破損する。
左腕だけでは! そんな思いがヘルハルトの中より生まれるより早く、思念が響いた。
“我らを!”
後方から精霊達がヘルハルトの右肩に飛びつき、その身を捧げる。
瞬間、
“!?”
ヘルハルトは違和感を感じた。
いま右肩から取り込まれたのは炎の戦士では無い、それが感覚でわかった。
その違和感を確かめるより早く、右腕が修復される。
さらにそれだけでは無く、肩から新たな腕が生え始めた。
だが、この修復速度をもってしてもシャロンの攻撃速度のほうが速い。
が、直後、
“私達が!”
と、思念が響き、ヘルハルトの真横を通りぬけて精霊達が突っ込んでいった。
その精霊達はやはり炎の戦士では無かった。
大人の女性の外観をした精霊。
これに対し、ヘルハルトは高速演算による早口で響かせた。
“お前達の仕事は後方支援だろう! 戦わなくていい! 下がれ!”
しかし女性達は聞く耳を持たなかった。
爆発魔法を両手で抱えたまま、次々とシャロンとキーラに向かって特攻していく。
しかし誰一人として二人に届かない。宝石銃と爆発魔法で次々と撃墜されていく。
その爆発音の中、これまでに無い異質な思念が響いた。
“母さん!”
ヘルハルトが視線を向けると、そこには小さな精霊がいた。
だからヘルハルトは声を上げた。
“子供?! 非戦闘員まで出てきているのか!? やめろ! お前達までこんな地獄に付き合う必要は無い!”
負けたとしても、素直に降伏して新しい神の木の管理者に従う意思を見せれば、そのまま生き残れる可能性はある。
ヘルハルトはそう叫んだのだが、やはり誰の耳にも届いていないようであった。
だからヘルハルトは彼女達を止めることをあきらめた。
代わりに、言うべきことがあった。
ヘルハルトはそれを全員に響くように叫んだ。
“わかった! もう何も言うまい! 共に行こう!”
その声には希望の色が濃く滲んでいた。
なぜなら、ヘルハルトの視界の奥にあるものが映っていたからだ。
◆◆◆
ヘルハルトの希望となった物の存在は、すぐにルイスも感知した。
それはルイスにとっては希望では無く、驚異だった。
ゆえに、
「な、なんだと?! このタイミングで!?」
ルイスは思わず振り返り、声を上げた。
この状況まで隠して温存していた?
いや、それはおかしい。温存する理由が無い。
増援が来る方向の先に我々が知らない敵の拠点があり、そこで作られた戦力が遅れて到着した、と考えるのが妥当だろう。
ルイスがそう思った直後、感知能力者達が次々と声を上げ始めた。
「て、敵です! 後方から敵の増援!」
「速い!」
「ドラゴンの群れです!」
どう対処する? その疑問に対しての答えが浮かび上がるのにはさほどの時間も要さなかった。
ルイス達の選択肢が少ないからだ。切れるカードがあまり手元に無い。
その少ないカードの内容を、ルイスは声に出した。
「戦力を二つに分ける! 修復したばかりの巨大ドラゴンと精霊使い達を迎撃に向かわせろ!」
それくらいしか選択肢が無いことは皆も分かっていた。ゆえに全員が即座に反応した。
負傷して後方に下がっていたサイラスもであった。負傷した体を引きずって、敵の増援のほうに走り始めた。
そしてルイスの声が響き終わって間も無く、アルフレッドの心の声が届いた。
(ルイスさん、見つけました! 炎の戦士達に燃料を補給している敵の魔法使い達の居場所です! 大神官もいる! こいつらで間違いない! 敵の補給が激しくなったおかげでようやく見つけられました!)
ならばどうするべきか、それも続けてアルフレッドは響かせた。
(俺が奇襲をかけます! この場を離れる許可をください!)
しかしそれはあまりに無謀な提案に見えた。
が、その無謀さもかえりみない一人の声が直後に響いた。
(わたしも行きます!)
絶対についていく、という意思を感じさせるベアトリスの声。
だが、二人ではやはり少なすぎた。
だからルイスは声と心を大きく周囲に響かせた。
(「誰か! この二人の援護ができる勇気ある者はいないか!」)
数秒の後、男の心の声が返ってきた。
(我々が行きます!)
その声には、部隊の詳細についての情報も含まれていた。
が、ルイスはあえて確認するように心を響かせた。
(バークの部下だった戦士達か!)
そうです、と、男は即座に答えた。
バークの戦士達はこの森に慣れている。足も速い。アルフレッドとも連携できるだろう。これ以上無い提案に感じられた。
だからルイスも即答した。
(わかった、許可する! すぐに行ってくれ!)
応! や、了解! など、それぞれの返答が混じって響いたのと同時に、アルフレッド達は動き始めた。
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