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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
第二十五話 愛を讃えよ(36)
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しかし何もしないわけにはいかない! そんな意識から二人の体は勝手に動いた。
爆発魔法の最大連射で魚群を吹き飛ばしながら前進する。
魚群をかき分けながら、時々飛び出してくる炎の戦士を消し飛ばしながらひたすら前へ。
どこを見ても魚群しか見えない。
まるで海の中にいるかのような感覚に襲われる。
その感覚が数秒続いた後、ようやくシャロンとキーラは群れを突破した。
そして二人の目に映ったのは、
「「!」」
立ち上がるヘルハルトの姿だった。
しかしふらついている。弱々しい。
体格も細く小さくなっている。背の高さも縮んでいる。
縮んでもシャロンの五倍はあるが、それでも弱々しさのほうが目立つ。
だからシャロンとキーラは迷う事無く攻撃を仕掛けた。
踏み込みながら爆発魔法を最大連射。
ヘルハルトも爆発魔法で迎撃を試みる。
しかしその腕に銃身は無い。人間と同じように、手の平から産み出して放つ。
さらに動いているのは右腕のみ。
左腕はまだ機能が回復していないらしく、だらんと垂れ下がったまま。
足を止めての撃ち合いでは勝敗は明らか。
ゆえにヘルハルトは人間らしく組み立てられた二本の足で後方に跳び引いた。
だがやはり姿勢制御が安定していない。
跳び引いたというよりは、爆発魔法で吹き飛ばされていると言ったほうが正しい有様。
ゆえにヘルハルトの心は自然と弱気で響いた。
“ぐうぅっ! このままでは……!!”
このままでは負ける。誰の目から見てもそれは明らかだったが、ヘルハルトは何かに抵抗するようにそれを最後までは言葉にしなかった。
そして何かへの抵抗心は別の言葉を早口でつむがせた。
その文言の一言目は「負けたくない」であった。
だがこの状況を返すには足りないものが多すぎる。
火力がいる。速さもだ。手数だけじゃない、運動性能もぜんぜん足りない。瞬発力に旋回、何もかもだ。
それらの言葉が早口で流れた瞬間、
“我らを!”
ヘルハルトの背後から声が響いた。
振り返ると、数多くの炎戦士達の姿があった。
次々とヘルハルトの背中に貼りつき、吸収されていく。
筋肉が盛り上がるように体がふくらみ、左腕が太く完成する。
しかしその再生の際に、ヘルハルトの動きが少しだけ鈍った。
それを見逃すシャロンでは無かった。
だがそれはヘルハルトを守ろうとする炎の戦士達も同じであった。
だから双方は直後に同時に叫んだ。
「往生際の悪さもここまでよ!」
“やらせるかぁ!”
シャロンとキーラが爆発魔法を放ち、赤い球を腹に抱えた炎の戦士達が壁を作る。
爆発魔法が、赤い球が連鎖的に弾け、衝撃波の嵐を生み出す。
その衝撃波に押されながらヘルハルトは思った。
あの時を思い出す。皆と一緒に魔王軍と戦ったあの時を、と
瞬間、
“!?”
ヘルハルトの心に見知らぬ記憶が流れた。
悪い仲間達と酒盛りをする誰かの記憶。
いや、これは自分?
さらに混乱させるかのように映像は続いた。
草と呼ばれる毒を売る誰かの記憶が流れる。
いや、これも自分か?
しかしこんなものは知らない。
自分はあの時、魔王軍との戦いの中で終わったはず。
村から出た覚えなど無い。
ならばこれは何だ?
その問いについて考える時間は無かった。
服が破れるのも無視して、衝撃波を強引に突破してきたシャロンとキーラの姿がもう目の前であった。
爆発魔法の最大連射で魚群を吹き飛ばしながら前進する。
魚群をかき分けながら、時々飛び出してくる炎の戦士を消し飛ばしながらひたすら前へ。
どこを見ても魚群しか見えない。
まるで海の中にいるかのような感覚に襲われる。
その感覚が数秒続いた後、ようやくシャロンとキーラは群れを突破した。
そして二人の目に映ったのは、
「「!」」
立ち上がるヘルハルトの姿だった。
しかしふらついている。弱々しい。
体格も細く小さくなっている。背の高さも縮んでいる。
縮んでもシャロンの五倍はあるが、それでも弱々しさのほうが目立つ。
だからシャロンとキーラは迷う事無く攻撃を仕掛けた。
踏み込みながら爆発魔法を最大連射。
ヘルハルトも爆発魔法で迎撃を試みる。
しかしその腕に銃身は無い。人間と同じように、手の平から産み出して放つ。
さらに動いているのは右腕のみ。
左腕はまだ機能が回復していないらしく、だらんと垂れ下がったまま。
足を止めての撃ち合いでは勝敗は明らか。
ゆえにヘルハルトは人間らしく組み立てられた二本の足で後方に跳び引いた。
だがやはり姿勢制御が安定していない。
跳び引いたというよりは、爆発魔法で吹き飛ばされていると言ったほうが正しい有様。
ゆえにヘルハルトの心は自然と弱気で響いた。
“ぐうぅっ! このままでは……!!”
このままでは負ける。誰の目から見てもそれは明らかだったが、ヘルハルトは何かに抵抗するようにそれを最後までは言葉にしなかった。
そして何かへの抵抗心は別の言葉を早口でつむがせた。
その文言の一言目は「負けたくない」であった。
だがこの状況を返すには足りないものが多すぎる。
火力がいる。速さもだ。手数だけじゃない、運動性能もぜんぜん足りない。瞬発力に旋回、何もかもだ。
それらの言葉が早口で流れた瞬間、
“我らを!”
ヘルハルトの背後から声が響いた。
振り返ると、数多くの炎戦士達の姿があった。
次々とヘルハルトの背中に貼りつき、吸収されていく。
筋肉が盛り上がるように体がふくらみ、左腕が太く完成する。
しかしその再生の際に、ヘルハルトの動きが少しだけ鈍った。
それを見逃すシャロンでは無かった。
だがそれはヘルハルトを守ろうとする炎の戦士達も同じであった。
だから双方は直後に同時に叫んだ。
「往生際の悪さもここまでよ!」
“やらせるかぁ!”
シャロンとキーラが爆発魔法を放ち、赤い球を腹に抱えた炎の戦士達が壁を作る。
爆発魔法が、赤い球が連鎖的に弾け、衝撃波の嵐を生み出す。
その衝撃波に押されながらヘルハルトは思った。
あの時を思い出す。皆と一緒に魔王軍と戦ったあの時を、と
瞬間、
“!?”
ヘルハルトの心に見知らぬ記憶が流れた。
悪い仲間達と酒盛りをする誰かの記憶。
いや、これは自分?
さらに混乱させるかのように映像は続いた。
草と呼ばれる毒を売る誰かの記憶が流れる。
いや、これも自分か?
しかしこんなものは知らない。
自分はあの時、魔王軍との戦いの中で終わったはず。
村から出た覚えなど無い。
ならばこれは何だ?
その問いについて考える時間は無かった。
服が破れるのも無視して、衝撃波を強引に突破してきたシャロンとキーラの姿がもう目の前であった。
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