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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十五話 愛を讃えよ(34)

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 これが決闘の契約となり、合図となった。
 引き寄せ合う磁石のように全員が走り出し、距離が縮まる。
 そして最初にぶつかり合ったのは、声を響かせた戦士とシャロンであった。
 決闘を申し込んだ者と受けた者同士、最初にぶつかり合うのは当然のならわし、そう示すかのように。
 先に仕掛けたのはシャロンであった。
 右手に赤い球を生み出し、放つ。
 炎の大男の目の前で破裂するように作られた爆発魔法。
 放たれた赤い球は設計通りに爆発したのだが、

「!?」

 炎の大男はかつて見たことの無いやり方で避けた。
 自らバラバラになったのだ。
 上半身と下半身、そして両腕を切り離したのだ。
 爆発で吹き飛ばせたのは置き去りにされた下半身のみ。
 分離した上半身は爆風にあおられて上へ、両腕は左右へ。
 このうち両腕はすぐに制御を取り戻し、シャロンのほうへ進路を取り直して襲い掛かかった。
 両腕は分離した直後に変形していた。
 その身は巨大なウミヘビのように、手にあった大剣は長くて鋭い赤いツノのように。
 シャロンを挟みこむ形で、左右の斜め前から身をくねらせながら突っ込んでくる。
 これに対し、

(人間には真似できない面白い攻撃ね、だけど――)

 シャロンは正直な感想を述べた後、

「甘いわ!」

 その程度では無駄だと吐き捨てた。
 シャロンの左手には既に宝石銃が握られていた。
 なぎ払うように銃を左から右へ振りながら、引き金を二度引く。
 銃口から銀色の稲妻が二本伸び走り、突っ込んできた両腕を吹き飛ばす。
 さらに上に向けてもう一発。
 上空から襲い掛かってきていた上半身を押し返す。
 この迎撃と共に、シャロンは心の声を響かせていた。
 その内容は甘いと言った理由であった。
 奇をてらった攻撃を仕掛けるのであれば、両腕と上半身が完璧な同時攻撃になるように調整すべきだった、と。
 バラバラに攻撃しては意味が無い、シャロンはそんな思いを響かせながら赤い球を生み出し、上へ放った。
 上半身は羽を生やして回避しようとしたが、既に手遅れだった。
 爆発と共に霧散し、爆炎が周囲を赤く照らす。
 その赤を受けてより濃くなった赤色がシャロンの前方から迫っていた。
 数は三。
 真正面から渦巻く槍と化した戦士が突っ込んできている。
 その左右から、逃げ場を塞ぐ形で火炎放射の波が迫っている。
 これに対し、シャロンは、

(この攻撃は悪くない)

 などと、余裕の思考を走らせた。
 しかしその内容自体は正直であり、真実であった。
 先のような雑な攻撃では迎撃できない。
 だからシャロンは銃を握る左手に意識を集中させた。
 針のように鋭く、光のように速く、かつ繊細に。
 この戦いで初めて、というほどに。
 そんな思考を複数同時に走らせる。
 正面から迫る脅威を退けるのに必要な魔力量を計算。
 時が止まっているかのように感じるほどに速い思考。
 緩慢な感覚の中で、左腕から左手に流れる魔力の動き、一つ一つを詳細に把握し、制御する。
 計算した魔力量を銃口から全て吐き出すのに、何度引き金を引かねばならないのかを計算。
 それは間も無く完了し、シャロンは実行に移した。
 どくん、と、心臓が大きく脈打つ。
 それを合図に内臓が活発化。
 生産された魔力が左腕に流れ込む。
 その光景はまるで天の川。
 小さな星々が筋肉の中で爆発し、眩く消える。
 その爆発によって、筋肉は異常な加速をもって動き始めた。
 引き金にかけられた指が高速で動き出す。
 その指の部分だけ時間の流れが速くなっているかのような動き。
 常人の目には残像が見えるほど。
 その人外の連射をもって放たれた銀色の稲妻は、もはや連射とは呼べない代物だった。
 数秒間、稲妻が銃口から続けて垂れ流された、そうとしか見えなかった。

“?!”  

 そして次の瞬間、驚愕の思念が炎の大男達から響き出した。
 見たことも無い光景であり、現実感が無かったからだ。
 渦巻く槍となって突進していた男は瞬く間に吹き飛ばされた。
 信じられないことに、火炎放射も同様だった。
 まるで濁流が壁に当たって跳ね返ったかのように、炎の波は押し返されていた。
 その波が大男達の目の前にまで帰ってきた瞬間、

““っ!!””

 複数の爆発音と共に、大男達は炎ごと消し飛んだ。
 キーラが放った爆発魔法であった。
 シャロンは射撃の直前にキーラに心で伝えていたのだ。
 自分が止めるから追撃してくれ、と。
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