Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十五話 愛を讃えよ(30)

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 叫んだ直後に銃口は赤く輝いた。
 言葉の通り、赤く光ったようにしか見えなかった。
 高速演算ができる者だけがそれを見ることができた。
 銃口から発射されたのは、赤くまっすぐな熱線だった。
 花火のように火花を大量に散らしながら伸びる熱線。
 そして花火よりも眩い(まばゆい)。
 赤色を銀色が包んでいる。
 よく目を凝らせば、その理由は一目瞭然であった。
 熱線に見えているそれは、薄赤い光弾の群れであった。
 大量の爆発魔法。
 あまりにも多いため一筋の熱線に見える。
 ヘルハルトは銃口を振り、その熱線で切り裂くように三つの巨大光弾をなぎ払った。
 爆発魔法が大量に弾けた音と同時に巨大光弾が破裂し、空が白く染まる。
 衝撃波が森をなぎ倒す勢いで吹き荒れる。
 相殺した? 誰かが衝撃と轟音の中でそんな淡い期待を抱いた。
 が、ルイスの目はその期待を裏切るものを既に捕えていた。
 白い空に、赤い線が浮き上がったのだ。
 大爆発の衝撃波によって爆発魔法は散らされた。
 が、また集合したのだ。
 なぜそんなことが出来る?
 その疑問の答えは直後に誰かが心の声で響かせた。
 それは精霊使いの声だった。
 一部の精霊使いには見えていた。あれがただの爆発魔法では無いことが。
 それらは羽のついた丸型の精霊であった。
 精霊が爆発魔法を体内に抱えて飛行しているのだ。
 ゆえに熱線は多少の追尾性を有していた。
 熱線は緩やかに曲がり、巨大ドラゴンの一頭に迫った。
 ドラゴンは指示通り回避行動を取っていたが、追尾性を振り切れるほどでは無かった。
 間も無くドラゴンは熱線に捕まり、

“――ッ!”
 
 悲鳴だったのか、それとも爆発音による空耳なのか分からぬ轟音と共に霧散した。
 
「……っ!」

 この時、ルイスの顔には焦りの色が濃く浮かんでいた。
 なぜなら、あの熱線が何度も連射できる代物であるならば、こちらには打つ手が無いからだ。
 だから何の指示も出せなかった。
 巨人の銃身が再び輝き始めた瞬間、焦りの色は絶望に変わる。
 ゆえに、ルイスだけで無く、皆が沈黙した。
 この数秒の沈黙の間に、双方の思考が交錯した。
 ヘルハルトは次の攻め手を選びかねていた。

(炎の魔力の消費が激しい攻撃だとは知っていたが、今の一発だけで七割も消費しただと……強力だったが、いくらなんでも燃料を食いすぎだ!)

 選択肢はいくつかあった。

(補給を待つか? いや、相手が次の巨大光弾を生み出すほうが明らかに早い……ならば、)
 
 このヘルハルトの思考をルイスは感じ取れてはいなかったが、二人の選択肢は繋がりつつあった。
 ルイスの思考は様子見からの後手であったが、不利は無かった。
 
(……次の熱線を準備しない? すぐには撃てない? ならば、)

 そして次の瞬間、二人の思考と声は重なって繋がった。

「次の巨大光弾の準備をしろ!」
“目の前でおめおめと、やらせるか!”
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