Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十五話 愛を讃えよ(14)

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   ◆◆◆

 巨大ドラゴン三頭の火力によって、ルイス達の足取りはより速く前へ進むようになった。
 だが、

(状況は五分、いや、少しだけだがこちら側が優勢か? ……だが、あの巨人の戦闘能力次第では簡単に逆転される可能性がある)

 ルイスはまだ甘えた行動が許される戦況では無いと考えていた。
 あれが予想通りのものであるなら、巨大な炎の戦士であるならば、かなりの脅威である。
 だからルイスは、

(まだ何かごちゃごちゃと改造のためにいじっているようだが、今のうちにできるだけ距離をつめておくべきだろう)

 神の木の制圧に向けて、丁寧な前進を意識し続けていた。
 神の木が厄介な理由は、精霊を生み出し続けることができることだ。
 木と土地に蓄えられている栄養分が尽きるまで展開できる。そしてその量はこの戦いでは無限といっていい量だろう。
 だが、炎は別だ。神の木に炎の魔力を生み出す能力は無い。丁寧に炎の戦士を倒し続ければ燃料切れを狙えるかもしれない。
 しかし神の木の継続戦闘能力を考慮すれば、持久戦は論外だろう。先にこちらの銃弾が尽きて一気に不利になるのがオチだ。
 それは敵もわかっている。だから敵は手堅い守りの陣形を敷いている。散発的な炎による攻撃でこちらの足を止めようとしている。そしてあの巨人は最後の砦といったところだろう。

(敵の巨人が前にでてきた場合はナチャを、巨大ドラゴンを最初にぶつける。もしも破壊されても作り直しが可能だからだ。シャロンとキーラをどう使うかは、その戦いの結果次第、といったところか)

 ルイスがそこまで先の展開について思考を巡らせた直後、

「!」

 異様な気配の接近が感じ取れた。
 熊、いや、それよりも二回りは大きい気配。小型のドラゴンと同等。
 しかし明らかにドラゴンでは無い。炎の戦士の気配にとてもよく似ている。
 間も無く、それは森の上から飛び越えるように現れた。
 その見た目を簡単に表すならば、巨体の炎の戦士。
 背丈が倍の、筋骨隆々の大男に見える。
 ゆえに目立つ。
 目立つゆえに銃口がその巨体へと向けられ始めた瞬間、その大男は思念を高らかに響かせた。

“我が名はアゼルフス!”

 この突然の名乗り上げに対し、

「!?」

 最も驚いたのはデュランであった。
 それは知っている名だった。
 もうこの世にいないはずの名であった。
 その名にデュランの意識が釘付けになった直後、アゼルフスと名乗ったその大男は再び思念を響かせた。

“強き者達よ、我に死という名の名誉を与えてみせよ!”

 そしてそう叫ぶと同時に、今は無きかつての故郷の族長と同じ名を持つその大男は、デュラン達に向かって突進を開始した。
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