Iron Maiden Queen

最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十五話 愛を讃えよ(12)

　人間と同じように、炎の戦士の体が糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
　これでベアトリスに向けられている敵意は消えた。今のところは。
　だが、前には進めなかった。
　火事がますます燃え広がっている。
　その熱波に足が押され始めた直後、ナチャの声が響いた。

“光弾で炎を消し飛ばす！　みんな下がって！”

　頭の中に響いたその内容に、ベアトリスは即座に後方に地を蹴った。
　巨大光弾が放たれ、森の中に落ちる。
　瞬間、

「っ！！」

　目を閉じているにもかかわらず、ベアトリスの視界は白く染まった。
　轟音が耳を、衝撃波が体を打つ。
　同時に、爆発に巻き込まれた敵達の断末魔の念が伝わってくる。
　その悲鳴が響き終わってからベアトリスは目を開けた。
　白い景色はまだ続いていた。
　しかし光魔法の白では無い。
　日光の白。
　木々がなぎ倒されたことで、先よりも多くの光が差し込んでいた。
　そしてその白に新たな音が響いた。
　数多くの銃声。
　中央の部隊からの射撃。
　敵の断末魔が再び響く。
　その射撃によって敵意が中央の部隊の方に向いたのをベアトリスは感じ取った。
　だが、その敵意が届くことは無かった。
　シャロンとキーラのものと思われる爆発音に、近づいた全ての敵意は吹き飛ばされていた。
　そして中央への敵意が大人しくなったのと同時に、ルイスの声が響いた。

「このまま森をなぎ倒しながら前進するぞ！　撃ちまくれ、ナチャ！」

　ナチャはすぐにその声に応え、再び森にあの爆音と破壊の音が響き渡った。
　その音を聞きながら、ルイスは奥にいる巨人を見つめた。
　まだ近づいてくる気配は無い。
　理由はわかってる。感じる。
　あの巨人はまだ準備中だ。何かの改造を受けているのが伝わってくる。
　やつの準備が終わる前に、周囲のザコ達を可能な限り倒しておきたい、そう思った瞬間に待っていた声が届いた。

「指示通り、新たなドラゴンの生産が完了しました！　いつでも撃てます！」

　これに、ルイスは即座に言葉を返した。

「すぐに始めろ！　邪魔な炎と森を吹き飛ばせ！」