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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
第二十五話 愛を讃えよ(8)
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クトゥグアとナイアラが見下ろす中で、両軍は近づいて行った。
神の木に至る道はゆるやかに曲がりくねっていて長い。ゆえにルイス達の歩みはゆっくりとしたものであった。
しかしルイスは前進速度の犠牲も躊躇せずに、左右に広がる森の中まで深く、幅広く部隊を展開していた。
道の上だけを進めば隊列が長い一本線になってしまう。そうなると挟撃に弱くなる上に、後ろが詰まっているゆえに後退すらできなくなるからだ。
対し、敵の前進は速かった。
道の上だけを進んでいるからでは無い。数が少ないからだ。
少数精鋭であることが感じ取れる動き。
これに対し、最初に警告の思念を響かせたのはデュランであった。
(こいつら……これまでの連中とは明らかに違う)
何が違うのか、それはすぐに他の感知能力者達も感じ取れた。
人間くさいからだ。
狂気はまったく感じ取れない。
むしろ心地良くすらある。
互いに声を掛け合い、励まし合うことで、数の不利による士気の低下が起きないようにしている。
そして敵はその声を響かせながら、デュラン達の前に姿を現した。
人の形をした異形の群れ。半透明であり、透けて見える。
数はやはり多くない。広い道では無いにもかかわらず、隊列にはかなり隙間がある。
起動試験を兼ねた出陣の雄叫びでは激しくその身を燃え上がらせていたが、今は違っていた。
燃料を節約するために、動くためだけの熱量しか発していない。
しかしそれでも周囲の空気は揺れ、火の粉が舞っている。
その揺れは徐々に大きく、激しくなり始めた。
あふれる火の粉が増え、密度を増していく。
そして後方が見えなくなるほどになった直後、先頭にいた一体の異形が雄たけびのような思念を響かせた。
「いざ、行かん! 戦士の楽園へ!」
その言葉に、
「!?」
デュランは目を見開いた。
なぜなら、忘れがたい記憶の中でまったく同じ言葉が響いていたからだ。
その場面と共にデュランは思い出した。
故郷の村が魔王軍に襲われた場面。
その記憶の映像の中で、村の戦士達は同じ言葉を響かせて魔王軍に向かって突撃していった。
勇敢に戦って死んだ戦士は天上の楽園へ昇る、そんな言い伝えが故郷にはあった。
感知能力者であれば死後の魂がどうなるかは知っている。
遺族などに受け入れられなければ野生の存在としてさまようことになり、ほとんどが飢えた獣のような怪物になれ果てる。
そして普通は天上にまでは昇れない。だが、手段が無いわけではない。
己が魂をチリよりも小さく粉々に砕くのだ。空気よりも軽くなるように。
だが、それは自我の消滅を意味する。
つまり死を覚悟した言葉なのだ。
そして異形の群れは映像の中の戦士達と同じように、迷いの無い突撃を開始した。
鋭く大地を蹴り、走り始める。
いや、足を使ったのは最初の数歩だけであった。
その助走と共に異形の体は再び燃え上がり、そして浮き上がった。
炎を推進力にして、地面の上を滑空する。
その異様な突撃に対し、隊長格の一人は即座に声を上げた。
「来るぞ! 撃しろ!」
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