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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(63)

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 見ると、既に攻撃態勢。
 姿勢を低くし、地面に突き刺した二刀を引きずりながら突進してきている。
 あの刃を至近距離で振り抜かれたら終わる。
 ゆえにヨグ=ソトースは大神官の体を動かした。
 爆発魔法を放つために右腕を突き出す。
 が、

「!?」

 その腕は、奇妙な曲がり方をしていた。

(折れている!?)

 ということに、ヨグ=ソトースは見てからようやく気付いた。
 これでは撃てない。
 その事実から生じた焦りの中で高速演算を再開。
 複数の思考を同時に走らせる。
 が、

 ―肉体の状態の確認を忘れていた。どうしてこんな愚かしいミスを?
 ――衝撃波で我が体が揺らされ、思考を散らされたからだ。
 ―――ああ、本当に愚かだ。原因の追究なんて今はどうでもいい。今はこんなことを考えている場合では無い。

 先の衝撃で傷ついたヨグ=ソトースの思考力はまだ回復しておらず、複数の思考を同時に走らせても上手くいかない。
 が、それでもある一つの思考がまともな答えを導き出した。
 ヨグ=ソトースはその答えに即座に従って動いた。
 大神官の体から離れ、暗号化された思考を響かせながらアルフレッドに向かって突撃する。
 
(アレさえ使わせてしまえば!)

 地面を削って石つぶてを繰り出すあの攻撃を遠距離で使わせてしまえばいい、その答えを実現できそうな行動は一つしか思いつかなかった。
 それがヨグ=ソトース自らの捨て身の突撃。 
 そのためにヨグ=ソトースは回復し始めた思考力を削り、全ての魂の力を攻撃力に変換し始めた。
 ヨグ=ソトースの体が崩れ、全ての部品が人魂と目玉に作り変えられていく。
 それを見たアルフレッドは刃を地面から抜き放った。
 居合の要領で繰り出された刃が土砂を巻き上げながら十字を描く。
 そして放たれたのは石つぶてが混じった光の濁流。
 異形の群れとなったヨグ=ソトースを石つぶてが撃ち抜き、光の嵐が押し流す。
 その破壊の光景の中で、あるものがアルフレッドの目に映った。
 それはまだ異形に変化する前の魂に見えた。
 これは? その答えは瞬時にわかった。 
 無防備? 狙える? という二つの言葉が直後に脳裏に走る。
 その言葉に突き動かされるように、アルフレッドは反射的に動いた。
 踏み込み、手を伸ばし、その魂をつかみ取る。
 瞬間、その魂はそれを待っていたかのように、アルフレッドに攻撃を開始した。
 掴んでいる手に根を生やすように浸食していく。

「っ!」

 その攻撃と痛みに対し、アルフレッドは蝶の精霊を展開して魂を包み込んだ。
 蝶が魂の活動をおさえこむ。
 が、破壊はしなかった。
 なぜなら、

(やはり、これは――)

 が、その答えを最後まで響かせることはできなかった。
 多数の敵の攻撃意識が自身に向いたことを感じ取ったアルフレッドは即座に地を蹴った。
 木の裏に隠れた直後に、銃声が響き、光弾が木に炸裂する。
 その攻撃の中でアルフレッドは蝶を放ち、前の様子をうかがった。
 見ると、大神官がひきずられて運ばれているのが見えた。
 それを見てアルフレッドはようやく気付いた。
 自分はまんまと敵のワナにかかったのだと。
 あのタイミングでこれが無防備に現れたのは、考えてみれば都合が良すぎると。
 この魂を――アリスの魂を時間稼ぎのオトリにされた、そう思えた。
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