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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
第二十四話 神殺し、再び(49)
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互角? いや、少し撃ち負けた? 規模が大きすぎてよくわからない。
ルイスも同じだった。よろめきながら状況をうかがっていたが、やはり判断がついていなかった。
しかしすぐにやるべきことはわかっていた。
だからルイスはアルフレッドよりも早く踏ん張り、そして叫んだ。
「すぐに次が来るぞ! 次弾準備!」
この指示にもナチャは即答した。
(言われなくても!)
先と同じく、言われるよりも早く作業を開始していた。
繭が練られ、先と同じ規模の巨大光弾が完成する。
そして双方は再び同じタイミングでそれを放った。
そこから先の展開も同じであった。
精霊達の戦いも再び引き分けに終わり、巨大光弾は同じようにぶつかり合った。
空が銀色の稲妻で埋め尽くされ、白く塗りつぶされる。
生じた衝撃波が木々を揺らす。
アルフレッドには全ての結果が同じに感じられた。
だが、ルイスとナチャだけは違うところに注目していた。
見ているところは同じであり、先に心の声を上げたのはルイスであった。
(状況は?!)
何について聞かれているのかをわかっているゆえに、ナチャは再び即答した。
(魔法使いが十人ほど倒れた! でも、このくらいならまだ同じ出力でいける!)
魂を主原料とする精霊に光の魔力を生み出す機能は無い。
魔力を生み出しているのは魔法使いの人間であり、腹部にある臓器から生産されている。
ナチャは魔法使い達のその臓器に管を接続し、魔力を吸い上げているのだ。
しかし当然であるが、過剰に吸い上げれば異常が発生する。
あまりにも大きな負荷をかけると、休眠状態になってしまうのだ。
この世界の人間は体を動かすのに魔力を利用している。ゆえにその供給が停止すればまともに動けなくなってしまう。
ゆえに加減をしたいのだが、撃ち合いで負けてしまっては意味が無い。
今のところは互角。だが、相手が最大の出力なのかどうかはわからない。
こちらはギリギリ。ゆえにルイスはこれ以上の攻撃が来ないことを祈っていた。
対し、ヨグ=ソトースの心境は違っていた。
情報戦ではヨグ=ソトースに分があった。
ヨグ=ソトースはルイス達が最大の出力を出していることを把握していた。
しかしそれは利点にはならなかった。ヨグ=ソトースも加減などしていなかったからだ。
そして同じなのはそれだけでは無かった。
ヨグ=ソトースは誰にも聞こえぬように少量で、かつ聞こえてもわからぬように暗号化した上で思考を走らせていた。
(精霊使いと魔法使いの損耗率はほぼ同等、か)
しかし状況は互角では無い事をヨグ=ソトースは把握していた。
(だが、やつらの立て直しが完全に完了すればこの損耗率は大きく引き離されるだろう)
ゆえにヨグ=ソトースの表情は真の意味で冷たかった。
目も鼻も無いのっぺらぼうの顔が冷気を放っているように感じられる。
ルイスも同じだった。よろめきながら状況をうかがっていたが、やはり判断がついていなかった。
しかしすぐにやるべきことはわかっていた。
だからルイスはアルフレッドよりも早く踏ん張り、そして叫んだ。
「すぐに次が来るぞ! 次弾準備!」
この指示にもナチャは即答した。
(言われなくても!)
先と同じく、言われるよりも早く作業を開始していた。
繭が練られ、先と同じ規模の巨大光弾が完成する。
そして双方は再び同じタイミングでそれを放った。
そこから先の展開も同じであった。
精霊達の戦いも再び引き分けに終わり、巨大光弾は同じようにぶつかり合った。
空が銀色の稲妻で埋め尽くされ、白く塗りつぶされる。
生じた衝撃波が木々を揺らす。
アルフレッドには全ての結果が同じに感じられた。
だが、ルイスとナチャだけは違うところに注目していた。
見ているところは同じであり、先に心の声を上げたのはルイスであった。
(状況は?!)
何について聞かれているのかをわかっているゆえに、ナチャは再び即答した。
(魔法使いが十人ほど倒れた! でも、このくらいならまだ同じ出力でいける!)
魂を主原料とする精霊に光の魔力を生み出す機能は無い。
魔力を生み出しているのは魔法使いの人間であり、腹部にある臓器から生産されている。
ナチャは魔法使い達のその臓器に管を接続し、魔力を吸い上げているのだ。
しかし当然であるが、過剰に吸い上げれば異常が発生する。
あまりにも大きな負荷をかけると、休眠状態になってしまうのだ。
この世界の人間は体を動かすのに魔力を利用している。ゆえにその供給が停止すればまともに動けなくなってしまう。
ゆえに加減をしたいのだが、撃ち合いで負けてしまっては意味が無い。
今のところは互角。だが、相手が最大の出力なのかどうかはわからない。
こちらはギリギリ。ゆえにルイスはこれ以上の攻撃が来ないことを祈っていた。
対し、ヨグ=ソトースの心境は違っていた。
情報戦ではヨグ=ソトースに分があった。
ヨグ=ソトースはルイス達が最大の出力を出していることを把握していた。
しかしそれは利点にはならなかった。ヨグ=ソトースも加減などしていなかったからだ。
そして同じなのはそれだけでは無かった。
ヨグ=ソトースは誰にも聞こえぬように少量で、かつ聞こえてもわからぬように暗号化した上で思考を走らせていた。
(精霊使いと魔法使いの損耗率はほぼ同等、か)
しかし状況は互角では無い事をヨグ=ソトースは把握していた。
(だが、やつらの立て直しが完全に完了すればこの損耗率は大きく引き離されるだろう)
ゆえにヨグ=ソトースの表情は真の意味で冷たかった。
目も鼻も無いのっぺらぼうの顔が冷気を放っているように感じられる。
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