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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(42)

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 そして二人は同時に十字を描いた。
 アリスが描いた軌跡の交差点から、黒があふれる。
 川となり、荒れ狂い、黒い濁流となって押し迫る。
 しかしアルフレッドに襲い掛かろうとしているものはこれだけでは無かった。
 アリスの護衛である精霊使いが、新たな凶鳥を投げ放っていた。
 だが、アルフレッドはそちらに意識を割いていなかった。
 気づいていないわけでは無い。
 その必要が無かったからだ。信用していたからだ。
 直後、その信用に応えるように、木の上から一つの影が舞い降りた。
 アルフレッドを包んでいる光がその影を照らす。
 そして明らかになったのはルイスの姿。
 ルイスは飛び降りてきた勢いと共に、凶鳥に向かって剣を振り下ろした。
 それはただの剣では無かった。
 ナチャが使役するムカデの精霊が幾重にも巻き付いた剣。
 人の腕ほどの太さがあるそのムカデ達は、振り下ろす動きと連動して巻き付きをほどき、網のように広がって凶鳥を包み込んだ。
 牙が、数えきれないほどの足が、深々と凶鳥の体に突き刺さる。
 そして凶鳥が断末魔の悲鳴を上げるかのように背と首を伸ばした瞬間、アルフレッドは黒い津波とぶつかり合った。
 アルフレッドの体は光のつむじ風に包まれていた。
 蝶もまとわりついていた。風に乗ってアルフレッドのそばを飛び回っていた。
 放った光の嵐の中に蝶と共に身を起き、共に駆ける、まさに纏いの名の通りの技。
 押し迫る黒い濁流を光の刃がかきわける。
 されど、その黒もまた名の通りの代物であった。
 光の刃によって引き裂かれても、すぐに別のものに再構築され、攻撃を再開する。
 イカの触腕、トビウオのようなもの、ウミウシのような何か、そして人魂など、ありとあらゆる異形が絶え間無くアルフレッドを攻撃する。
 まさに無間地獄の名の通り。
 しかしアルフレッドはこの性質を見切っていた。
 アリスが練る精霊の構造とその性質をすみやかに解析し、対処できる技を刹那の後手で練ったのだ。
 そして思いついたのが光の刃と精霊の二段構え。
 限界まで振動させた魔力の嵐で濁流を細切れにし、小さく切り刻まれた黒を蝶の精霊が処理する。
 蝶は相手の形に合わせて変形し、時にサメの顎になり、時にカニのハサミになって、それぞれに黒を砕き刻んだ。

「!」

 読まれた、突破される、手ごたえからそれを感じ取ったアリスが目を見開く。
 同じ技で迎え討つ――そう考えたアリスは魔力を刃に再充填しようとしたが、

「っ!」

 間に合わない、それが計算できたゆえに瞳の色は焦りに変わった。
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