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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(37)

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 だん、という地を蹴る音と共に間合いが詰まる。
 その音と同時にアリスは上半身を大きく下げ、同時に腰を落とした。
 地を這うような低姿勢でアルフレッドに迫る。
 踏み込み速度は突進切りのように鋭い。
 しかしアルフレッドは感じ取った。
 この踏み込みから繰り出されるのは、

(飛び道具!)

 であることを。
 刃が届く間合いになる直前に急停止して十字を描くことを。
 密着に近い間合いで光の嵐を放たれたら防御は困難。
 だからアルフレッドは、

(止める!)

 アリスの急停止のタイミングに合わせて踏み込んだ。
 振り上げられ始めたアリスの二刀を打ち止めるために二刀を振り下ろす。
 そして二人の四刀は十字が完成する直前に組み合った。
 少し漏れ出した細い魔力が、蛇のようにのたうちながらアルフレッドの肩を撫でる。
 その痛み意識を割く余裕はアルフレッドには無かった。
 アルフレッドの意識は完全にアリスとからみ合っていた。
 意識を交錯させ、互いに次の手を探り合う。
 先にその思考を完結させたのはアリスだった。
 アルフレッドは瞬時にそれを読み取り、叫んだ。

(次も同じ手!)

 アリスの次の動きは一歩さがりながらの十文字。
 ならば次もその動きに合わせる、アルフレッドはそんな思考を走らせた。
 もう明らかになっている。予想される武器の重量と打ち込みの重さから計算出来ている。筋力に関しては大きくこちらが勝っている。
 その有利を押し付け続けて押し切る、その思考が交錯した瞬間、

「!」

 それはできないことをアルフレッドは感じ取った。
 槍持ちじゃないほうの護衛がこちらに向かって光弾を放とうとしているのを。
 しかも感じ取れたのはそれだけでは無かった。
 そいつの意識もからみついてきたのだ。
 三人の思考が深く交錯している状況。 
 光弾を構えているやつはこちらの動きを待っている。意識を集中させてこちらに注目している。
 踏み込みに合わせて横から偏差射撃を狙っている。
 完全に二対一の形であり、
 
(二人の思考に確実に勝てる一手が無い!)

 数だけで無く状況でも不利な読み合いに理想の答えなど見つかるはずも無かった。
 だからアルフレッドは安全策しか選べなかった。
 アリスの少し下がる動きに合わせて、強く後方に地を蹴る。
 横から狙ってるやつの照準を大きく振って外すために、いま出せる最大の脚力でアルフレッドは地を蹴った。
 が、

「っ!」

 そいつの偏差射撃はまるで機械のように完璧であった。
 放たれた光弾を片手の刃で叩き払う。
 その防御の最中にアリスの十字は完成し、アルフレッドに迫ってきていた。
 回避は間に合わない。ゆえに手は一つしか思いつかなかった。

(相殺するしか無い!)
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