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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む
第二十四話 神殺し、再び(25)
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そして振り返ったアルフレッドの瞳に映った人物は感じ取った通りの男であった。
だからアルフレッドはその男の名を叫んだ。
「デュランさん!」
それはあまりにも心強い、あまりにも頼もしい男であった。
見た目は既に異形。
精霊使いから分け与えられた魂を髪の毛のようにして長く引きずりながら、走ってきている。
髪の毛は長いだけで無く、大きい。
獲物を求める触手のように枝分かれしながら広範囲に広がっている。
まるで巨大な茂み、いや、森を引きずって走ってきているように見える。
しかし神々しい。
発光しているからだ。デュランが後光を背負っているように見える。魔力が満ちている。
その光は眩く周りを照らしているが、前から見ればデュランの輪郭は影になっている。
しかしその影は間も無く消えた。
肩にかついでいた大剣を正面に構えたからだ。
無骨な刃が光を反射し、デュランの姿を鈍く照らす。
直後に刃は髪と同じ色に染まった。
刀身に魔力が満ち、白い刃と化す。
そのままアルフレッドと合流するかと思えたが違った。
デュランは走る方向を少し変えながら、大剣を振り上げた。
大剣を上段に構え直しながら足を止める。
いや、それは構え直しでは無かった。
大剣の位置は上段では止まらず、背の後ろにまで振り下ろされた。
急停止した勢いはまだ消えていない。足裏は地面の上を滑っている。
その滑りのせいで足だけが前に出始める。
大剣の重さに引っ張られ、背中が大きく反る。
しかしそれは全て計算の上での動きだった。
初手は最大威力の一撃を、その思考の末に思いついた動きであった。
木々に邪魔されてはならない。ゆえに型は縦の一文字に限定される。
ならば単純。背中を弓に見立てて限界まで引き絞ればいい。
それに踏み込みの勢いを乗せるだけ。
だからデュランは足が滑っているうちに、
「シャラァ!」
独特の気勢と共に上体を起こし、大剣を前に振り下ろした。
気勢と共に魔力が押し出され、刃の軌跡と同じ形に放たれる。
ゆえに繰り出されたのは銀色の巨大な三日月。
三日月の軌道は浅い斜め上。
木の上にいる敵を狙った軌道。
左右に張りめぐらされている枝を次々と斬り飛ばしながら迫る。
速いが、縦に細い直線的な攻撃。
ゆえに最寄りの軌道上にいた敵は余裕で回避行動を取ったが、
「っ!」
攻撃の軌道は直後に大きく変化した。
太い枝にぶつかり続けたことで、三日月が砕けたのだ。
ガラスが粉々に砕けるように、小さな三日月の嵐と化す。
だからアルフレッドはその男の名を叫んだ。
「デュランさん!」
それはあまりにも心強い、あまりにも頼もしい男であった。
見た目は既に異形。
精霊使いから分け与えられた魂を髪の毛のようにして長く引きずりながら、走ってきている。
髪の毛は長いだけで無く、大きい。
獲物を求める触手のように枝分かれしながら広範囲に広がっている。
まるで巨大な茂み、いや、森を引きずって走ってきているように見える。
しかし神々しい。
発光しているからだ。デュランが後光を背負っているように見える。魔力が満ちている。
その光は眩く周りを照らしているが、前から見ればデュランの輪郭は影になっている。
しかしその影は間も無く消えた。
肩にかついでいた大剣を正面に構えたからだ。
無骨な刃が光を反射し、デュランの姿を鈍く照らす。
直後に刃は髪と同じ色に染まった。
刀身に魔力が満ち、白い刃と化す。
そのままアルフレッドと合流するかと思えたが違った。
デュランは走る方向を少し変えながら、大剣を振り上げた。
大剣を上段に構え直しながら足を止める。
いや、それは構え直しでは無かった。
大剣の位置は上段では止まらず、背の後ろにまで振り下ろされた。
急停止した勢いはまだ消えていない。足裏は地面の上を滑っている。
その滑りのせいで足だけが前に出始める。
大剣の重さに引っ張られ、背中が大きく反る。
しかしそれは全て計算の上での動きだった。
初手は最大威力の一撃を、その思考の末に思いついた動きであった。
木々に邪魔されてはならない。ゆえに型は縦の一文字に限定される。
ならば単純。背中を弓に見立てて限界まで引き絞ればいい。
それに踏み込みの勢いを乗せるだけ。
だからデュランは足が滑っているうちに、
「シャラァ!」
独特の気勢と共に上体を起こし、大剣を前に振り下ろした。
気勢と共に魔力が押し出され、刃の軌跡と同じ形に放たれる。
ゆえに繰り出されたのは銀色の巨大な三日月。
三日月の軌道は浅い斜め上。
木の上にいる敵を狙った軌道。
左右に張りめぐらされている枝を次々と斬り飛ばしながら迫る。
速いが、縦に細い直線的な攻撃。
ゆえに最寄りの軌道上にいた敵は余裕で回避行動を取ったが、
「っ!」
攻撃の軌道は直後に大きく変化した。
太い枝にぶつかり続けたことで、三日月が砕けたのだ。
ガラスが粉々に砕けるように、小さな三日月の嵐と化す。
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