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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(20)

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 直撃を受けた大盾兵は紫色に染まったまま地面の上を転げまわっていた。
 周りの者達がその紫色を消そうと近寄る。
 しかしそれを許さぬかのように、待っていたかのように次の爆発魔法が飛来した。
 爆音と共に視界が紫色に染まる。
 間を置かずに続けて通常の炎魔法。
 なぎ払うように放射された炎が周りを紫色で埋め尽くす。
 直後にルイスが声を上げた。

「精霊を突撃させろ! 防御のことを考えて出し惜しむな!」

 精霊使いはその指示に即応し、待機させていた精霊を一気に放出した。
 オオカミや熊型の精霊が茂みの中を駆け、鷹のような鳥形の精霊が木々の隙間を縫って飛行する。
 が、

「「「!」」」
 
 正面から突っ込んだ精霊はことごとく焼き払われた。
 純粋な魂で作った精霊が燃やされた、その事実に精霊使い達は驚いた。
 シャロンやキーラが電撃魔法の糸で編んで作った人形とは違う。電撃魔法の耐熱性は並だが、純粋な魂は耐熱性が高い。
 人間は体内で炎魔法を熱エネルギーとして利用している。ゆえに魂のような熱耐性の高い素材が無ければ脳などの脆弱な器官を守れないのだ。
 純粋な魂で作った精霊が燃やされた、その事実が先のアルフレッドの思念の証明となった。
 ならば正面から押すだけでは駄目だ、全方向から攻めなければ、そう考えた精霊使い達は大神官を包囲するように精霊に指示を出した。
 精霊はその指示に従い、場は乱戦の様相が濃くなった。
 大神官の周囲には大量の護衛がついている。
 護衛の大盾兵と狂人が精霊の突撃を体で止め、イカのような触手が地を走る精霊をからめとる。
 大神官はその護衛達の隙間を縫うように、『かすめるほどの距離感で』炎を四方八方に放射。

(……?)
 
 その迎撃にアルフレッドは違和感を抱いた。
 なぜ熱波にひるまない?
 あの距離感では火傷だらけになっているはずだ。
 だからアルフレッドは意識を集中させた。
 画像の処理能力を上げ、護衛の様子をうかがう。
 すぐに違和感の正体は明らかになった。

(火傷をしていない!?)

 大神官の護衛は無傷であった。
 
(まさか、こいつは……!)

 確信の証拠を得るために、計算能力を上げながら大神官に視線と処理能力を集中させる。
 やはり大神官の攻撃に手加減は無い。
 四方八方に炎を放射している。
 森林火災になれば自滅の危険性がある。しかし今の大神官の攻撃にはそれを考慮している気配が無い。
 周囲の護衛も同じだ。火災を警戒しているようには見えない。
 さらに、『大神官と護衛の意識が読めない』。
 だからアルフレッドは気づいた。証拠も手に入った。
 アルフレッドは心の声で大きくそれを響かせた。

(こいつ、バークさんと同じ能力を持っているのか!)
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