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最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(9)

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“唐突だが、ぶしつけな話を始めてもいいかな? 断られても勝手に始めるがね”

 選択肢の無いぶしつけな切り出しに、一同は一瞬とまどった。
 その刹那の動揺が消え、全員が心を構え直した直後、ヨグ=ソトースは尋ねた。

“諸君らはどんなことに感動する?”

 しかしヨグ=ソトースは他人の意見など求めていなかった。
 だからヨグ=ソトースは間を置かずに語り始めた。

“私はいろいろあるが……一番興奮するのは戦いだ。しかし戦いならなんでもいいというわけでは無い。なにより重要な要素は――”

 そう言った直後、ヨグ=ソトースの何も無い顔面に口が現れた。
 口は大きく弧を描き、狂気じみた笑みの形をなした。
 そしてヨグ=ソトースはその表情にふさわしい狂気じみた声を響かせた。

“勝利だ! やはり勝たなくては気持ちよくなれない! 苦戦からの逆転、接戦からの辛勝、駆逐し蹂躙する圧勝! どれも素晴らしい! 勝利こそ最高の美酒だ! そう思わないか?!”

 その声に誰も返答はしなかった。答える気分にはなれなかった。
 しかしヨグ=ソトースはやはり他人の意見なぞどうでもいいと思っていた。
 だからヨグ=ソトースは表情を無に戻し、再び思念を響かせた。

“だから私は考えたのだ。どうすれば勝てるか、どうやって勝てばより気持ちよくなれるかを”

 そう言ったあと、ヨグ=ソトースは意識をシャロンとキーラのほうに向けた。目は無いが見ている、そう感じられた。
 そしてヨグ=ソトースは二人を同時に見つめながら思念を響かせた。

“粘り勝ちは難しいように思えた。シャロンとキーラが強すぎるからな。少しずつ拠点を削られて終わり、守りに入ったら負ける、そう思った”

 それはルイスが描き、全員が共有している人類の勝利への道筋だった。

“だから最初にやるべきことは単純だった。できるだけ早くその二人を潰せれば、勝利は一気に近づく”

 それはルイスがあってはならないと考えている人類の敗北への道筋であった。

“だが諸君らもそれをわかってるはずだ。全力で守ろうとするはず。ならばこちらも全力を出さねばならない。そう思ったのだ。だから――”

 ヨグ=ソトースは再び狂気の笑みの顔を形作りながら、叫んだ。

“だから私は興奮しているんだよ! こんなに早く山場が来るなんて! 最高の瞬間を思い描いてその時を待つのもいいが、おあずけを食らってるような気分でもあるからな。しかし今回は待たなくていい! 最高だ!”

 もう待ちきれない、その思いを全身で表現するかのように、ヨグ=ソトースは体を震わせた。
 そしてヨグ=ソトースは興奮のままに開戦を宣言した。

“さあ決戦だ! 時と場所は今ここでだ! 最高の戦いにしようじゃないか!”
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