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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(30)
しおりを挟む(現在明確に我々と敵対状態にあるのはこの二神だけのようだが……)
近くにもうひとつ注意すべき存在がいる。
その存在の名を脳裏に浮かばせながらルイスは新たな小石を地図の上に置いた。
場所は和の国の南東に広がる海。
支配者の名はヤマタノオロチ。
しかしこいつは正確には海の王では無い。
こいつの根城は地下。
黄泉比良坂(よもつひらさか)と呼ばれるあの世への入口の先、そこに広がる巨大洞窟がこいつの城だ。
そしてこいつは我々が魔王軍と戦っている間に和の国に攻撃を仕掛けていた。
結果は和の国の神々の勝利に終わった。
だが、こいつもあきらめたとは思えない。
現状はこいつの対処に戦力を割く余裕は無い。
こいつの攻撃意識が我々のほうに向かないことと、和の国の神々にまだ余力があることを祈るばかりだ。
そして、この三つの神がほぼ同時期に侵攻を開始したのは偶然では無い。
人間の魂が大量に、かつ安定して手に入るようになれば戦力は大きく増大する。
ゆえに他者に出し抜かれては困るというわけだ。
だから互いに様子をうかがいながら仕掛けるタイミングを探っていたのだ。
同時期に仕掛けることで人間同士が協力しづらくもなる。
(……侵攻の機をうかがっていたのはこの三つの神だけでは無い可能性が高いだろうな)
ナイアラから手に入れた情報の中には、まだ数多くの神の名が記されていた。
今回直接戦うことは無いだろうが、遠方の有力者も同じタイミングで既に仕掛けている可能性が高い。
そしてその中でも段違いに強い神が一つ存在する。
いまは休眠状態にあるがその力はアザトースと互角、ナイアラはそのように評価している。
その名はクトゥルフ。
はるか西の海底に沈んでいる「ルルイエ」と呼ばれる都市で眠っているという。
こいつはかつて世界規模の大戦の原因となった存在らしい。
……長く生きている自分だが、そんな戦争は知らない。ナチャもだ。
それもそのはず、その戦争は人類が誕生する以前のものであると、ナイアラから手に入れた歴史表に記載されている。
だからクトゥルフは「旧支配者」などとも呼ばれているようだ。
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