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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(29)

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   ◆◆◆

 退却したベアトリスとアルフレッドは、追いかけてきていたバークの部隊と合流することができた。
 話し合った結果、シャロンの軍隊と協力すべきだという結論に至る。
 そしてベアトリス達が帰還する間に、前線では既に大規模な戦闘が始まっていた。
 ゆえにシャロンとは出会えなかった。彼女は既に最前線で戦っていた。
 だがルイスには会うことができたため、重要な目的は無事に達成された。
 アルフレッドは手に入れた情報をルイスに渡し、重症のバークは手厚い治療を受けることができた。
 バークは移動中に何度も高熱を出しており危険な状態であったが、ルイスの処置によりようやくその容態は安定した。
 そしてアルフレッドが持ってきた情報の内容は衝撃的なものであった。
 その情報を整理するのにルイスは一晩を費やすことになった。眠ることなどできるはずも無かった。
 作戦会議を行うための大きなテント、その中のテーブルの上に置かれた世界地図の前でルイスは一晩中作業をしていた。

(まず、いま我々が相対している敵、その総大将である神の名はアザトース……)

 頭の中で知ったばかりのその名を響かせながら、ルイスは地図の上に一つの小石を置いた。
 位置は森の南の海。
 アザトースはもっとも古き海の神であり、もっとも強大な力を持つ王。
 ゆえに制圧している広さも最大。
 小さな島国は既に乗っ取られており、独自の宗教まで存在するという。
 初めての相手にしてはあまりにも強大な相手。
 いや、初めてでは無かった。
 だからルイスはすぐに頭の中で訂正するように次の名を挙げた。

(そして、魔王軍を一時的に乗っ取ったのがクトゥグア)

 名を頭の中で響かせながらルイスは次の小石を置いた。
 位置はかつての魔王軍の領地の北、そこに広がる冷たい海を支配する王がクトゥグア。
 極寒な領地とは対照的に、クトゥグアは炎の神だという。
 海底にある火山を根城としており、その風貌は常に燃え盛っているという。
 こいつとの戦いにはなんとか勝利したが、あきらめたとは思えない。
 情報によると、こいつは魔王軍の腐敗にも一役買っていたようだ。
 「草」と呼ばれる麻薬の流通など、手広くやっていたらしい。
 そんな長期的な作戦を実行するやつがあきらめるはずが無い。
 北には念のために軍隊の一部を残しているが、その規模は十分とは言えない。
 すぐに雲水にこの情報を伝えるべきだろう。
 なにか強烈な対価を要求されるかもしれないが、いまの状況では背に腹は変えられない。
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