391 / 545
第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(22)
しおりを挟む
叫びと共にナイアラは感情を放った。
それは圧倒的な優位の確信と殺意。
その重い威圧感と共に、ナイアラはアルフレッドを動かした。
二刀が十字を描き、幾重にも重なって光があふれる。
“灰染め墨流蝶・百鬼夜行ッ!”
技の名と共に場が灰色に染まる。
放たれたのは先と同じ圧倒的な灰色の濁流。
光の刃と異形の群れが混ざり合いながら波打ち、のたうちながら敵を引き裂かんと迫る。
これを迎え討つは青。
バークが放った青い爆発魔法。
青い爆炎が迫る灰色を吹き飛ばす。
(こいつやはり!)
その一発でナイアラは新たな確信を得た。
爆発魔法の成形が歪なのだ。
今のバークはまともに爆発魔法を生み出すことすら出来ないのだ。
だからあんな、捨て身の体当たりやゼロ距離爆破を仕掛けてきたのだ。
(ならば!)
こちらが取るべき手はこのまま高火力技の連打! 今のバークならばそれだけで安全に押し切れる!
その確信と共にナイアラは再び場を灰色に染めた。
青い爆炎に押し返されようとも、何度も染め直す。
青色が押され始め、灰色がバークに少しずつ迫る。
相手は力尽きかけている、もうじき終わる、そう思ったナイアラはアルフレッドの口を使って声を上げた。
「どうやら、貴様がここに来たのは無駄だったようだな!」
この言葉に対し、バークは答えた。
「そうでもないさ」
それは爆発音の中でもはっきりと聞こえた。
心の声がまったく同じ文面で一緒に響いていたからだ。
そしてそれは負け惜しみには聞こえなかった。
ゆえに耳を、心を傾けてしまった。
バークは同じ口調で、はっきりと言葉を続けた。
「確かに、いまの私ではお前をどうすることもできない。得意の爆発魔法を安定させることもできない、お前が言った通りのただの死にぞこないだ」
それは内容に反して力強い口調だった。
バークは力強い口調のまま言った。
「だが、死にぞこないでもこの『頼まれごと』はやれると思った。ゆっくりとやればちゃんとした爆発魔法はまだ作れるんだ。だから私はここに戻って来た」
聞いているうちに、ナイアラの中から勝利の確信は消えていた。
代わりに湧き上がってきたのは嫌な予感。
この状況でバークが力強い口調で話せる理由、それは一つしか思いつかなかった。
直後にバークはそれを言葉にした。
「私の仕事は終わった。だから――」
そこまで言ったところで、バークは軽く咳き込み、吐血した。
肺から逆流してきた血が赤い線となって口から垂れさがる。
バークはその血を拭わず、吐き出すように叫んだ。
「だから、あとは任せたぞ! 『アリス』!」
それは圧倒的な優位の確信と殺意。
その重い威圧感と共に、ナイアラはアルフレッドを動かした。
二刀が十字を描き、幾重にも重なって光があふれる。
“灰染め墨流蝶・百鬼夜行ッ!”
技の名と共に場が灰色に染まる。
放たれたのは先と同じ圧倒的な灰色の濁流。
光の刃と異形の群れが混ざり合いながら波打ち、のたうちながら敵を引き裂かんと迫る。
これを迎え討つは青。
バークが放った青い爆発魔法。
青い爆炎が迫る灰色を吹き飛ばす。
(こいつやはり!)
その一発でナイアラは新たな確信を得た。
爆発魔法の成形が歪なのだ。
今のバークはまともに爆発魔法を生み出すことすら出来ないのだ。
だからあんな、捨て身の体当たりやゼロ距離爆破を仕掛けてきたのだ。
(ならば!)
こちらが取るべき手はこのまま高火力技の連打! 今のバークならばそれだけで安全に押し切れる!
その確信と共にナイアラは再び場を灰色に染めた。
青い爆炎に押し返されようとも、何度も染め直す。
青色が押され始め、灰色がバークに少しずつ迫る。
相手は力尽きかけている、もうじき終わる、そう思ったナイアラはアルフレッドの口を使って声を上げた。
「どうやら、貴様がここに来たのは無駄だったようだな!」
この言葉に対し、バークは答えた。
「そうでもないさ」
それは爆発音の中でもはっきりと聞こえた。
心の声がまったく同じ文面で一緒に響いていたからだ。
そしてそれは負け惜しみには聞こえなかった。
ゆえに耳を、心を傾けてしまった。
バークは同じ口調で、はっきりと言葉を続けた。
「確かに、いまの私ではお前をどうすることもできない。得意の爆発魔法を安定させることもできない、お前が言った通りのただの死にぞこないだ」
それは内容に反して力強い口調だった。
バークは力強い口調のまま言った。
「だが、死にぞこないでもこの『頼まれごと』はやれると思った。ゆっくりとやればちゃんとした爆発魔法はまだ作れるんだ。だから私はここに戻って来た」
聞いているうちに、ナイアラの中から勝利の確信は消えていた。
代わりに湧き上がってきたのは嫌な予感。
この状況でバークが力強い口調で話せる理由、それは一つしか思いつかなかった。
直後にバークはそれを言葉にした。
「私の仕事は終わった。だから――」
そこまで言ったところで、バークは軽く咳き込み、吐血した。
肺から逆流してきた血が赤い線となって口から垂れさがる。
バークはその血を拭わず、吐き出すように叫んだ。
「だから、あとは任せたぞ! 『アリス』!」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
ラグナ・リインカーネイション
九条 蓮
ファンタジー
高校二年生の海堂翼は、夏休みに幼馴染と彼女の姉と共に江の島に遊びに行く途中、トラックの事故に巻き込まれてしまい命を落としてしまう。
だが彼は異世界ルナティールに転生し、ロベルト・エルヴェシウスとして生を受け騎士団員として第二の人生を歩んでいた。
やがてロベルトは18歳の誕生日を迎え、父から貰ったプレゼントの力に導かれてこの世界の女神アリシアと出会う。
彼女曰く、自分は邪悪なる者に力を奪われてしまい、このままでは厄災が訪れてしまうとのこと。
そしてアリシアはロベルトに「ラグナ」と呼ばれる力を最期に託し、邪悪なる者から力を取り戻してほしいとお願いして力尽きた。
「邪悪なる者」とは何者か、「厄災」とは何か。
今ここに、ラグナと呼ばれる神の力を持つ転生者たちの、旅路の記録をここに残そう。
現在なろうにおいても掲載中です。
ある程度したら不定期更新に切り替えます。
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
〈本編完結〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません
詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編として出来るだけ端折って早々に完結予定でしたが、予想外に多くの方に読んでいただき、書いてるうちにエピソードも増えてしまった為長編に変更致しましたm(_ _)m
ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいです💦
*主人公視点完結致しました。
*他者視点準備中です。
*思いがけず沢山の感想をいただき、返信が滞っております。随時させていただく予定ですが、返信のしようがないコメント/ご指摘等にはお礼のみとさせていただきます。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。
周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。
見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。
脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。
「マリーローズ?」
そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。
目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。
だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。
あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
「ふざけんな___!!!」
と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
錬金術師カレンはもう妥協しません
山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」
前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。
病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。
自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。
それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。
依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。
王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。
前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。
ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。
仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。
錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。
※小説家になろうにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる