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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(19)

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 直後に放たれたアルフレッドの一撃は一筋の閃光にしか見えなかった。
 首を狙った一撃だった。脳裏に焼け付いた映像からそれがわかった。
 ベアトリスの目と理性はその速さに追いつけなかった。情報と結果を遅れて知る形となっていた。
 ゆえに対処できたのは本能だけであった。
 アルフレッドの魔力の流れから狙いを察し、本能は最善と思える形で対処した。
 だからベアトリスの首は繋がっていた。
 本能はベアトリスの右腕を動かし、折れた槍で振り下ろされたアルフレッドの刃を受け止めた。
 しかし力が入らない姿勢。対するアルフレッドは体重を簡単に乗せられる振り下ろし。
 ゆえに止められない。止められるわけが無い。
 折れた槍を振り下ろされる刃にぶつけただけ。そのまま押し切られる。
 だから本能は頭も同時に動かした。
 折れた槍と刃がぶつかり合った個所に、頭を押し当てたのだ。
 上から押される槍を頭で下から支える形。
 この形であれば押されるにしても頭が連動する。
 あとは首のほうに刃をずらされないように、槍を握る手と頭を支える首に力を入れるだけ。
 だが、奇跡のようなこの防御でも無事では済まなかった。
 刃はそのまま振り下ろされ、

「っ!」

 ベアトリスの頭は勢いよく地面に叩きつけられた。

「……!!」

 そして揺れる視界の中で、緩慢な感覚の中でベアトリスは感じ取った。
 脳内の重要な経路が一時的な機能不全に陥ったことを。
 意識が途切れる! ベアトリスは虫と精霊を使ってそれに抗ったが、

「……」

 間に合わなかった。
 ベアトリスの瞳から光が消える。
 それを感じ取ったアルフレッドは叫んだ。

「終わりだッ!!」

 叫びながら左手の刃を構える。
 瞬間、

「!?」

 背後に誰かが力強く着地した音が響き渡った。
 その音に、ナイアラの体は反射的に硬直した。
 屋根上、または二階から飛び込んできた? そう考えられる着地音。
 誰かはすぐにわかった。

(バーク……!)
 
 またか、また邪魔をするのか。ナイアラは隠しもせずに怒りの言葉を響かせたが、その裏では冷静に思考を重ねていた。
 約四歩の距離。
 バークの姿勢は右手を前に置きながら体を真横に向けた半身の構え。
 その右手に魔法の球は無い。
 ならば、後ろ手に隠されている左手には?
 その答えはすぐに判明した。上空にいるドラゴンから報告が入った。
 その手にはあった。爆発魔法が。
 そしてやはりバークの心は読めない。
 しかしバークにもこちらの心は読めていないはずだ。
 ならばこれは速さ比べということか?
 同時に動いてどちらが先に一撃を叩き込むかという勝負ということか?
 それならばこちらが有利だ。
 こちらは精霊の群れを背負っているのだから。
 少し触手を伸ばすだけで触れることができる。こちらのほうが手数は多い。
 ならば、予定を変える必要は無い。
 このまま左の刃を振り下ろし、ベアトリスにトドメを指す。
 そして右の刃をバークに向かって使う。
 当然、精霊も同時に攻撃する。
 そして強力な爆発魔法は使えないはず。ベアトリスまで巻き添えにしてしまう。だからわざわざ降りてきたのだ。
 ならばたとえ爆発魔法と相討ちになるとしても、こちらが派手に吹き飛ぶことは無いはず。ベアトリスに致命傷を負わせられる可能性は十分に高い。
 やはり、こちらが圧倒的に有利!
 それを確信したナイアラはアルフレッドの体を動かした。
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