388 / 545
第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(19)
しおりを挟む
直後に放たれたアルフレッドの一撃は一筋の閃光にしか見えなかった。
首を狙った一撃だった。脳裏に焼け付いた映像からそれがわかった。
ベアトリスの目と理性はその速さに追いつけなかった。情報と結果を遅れて知る形となっていた。
ゆえに対処できたのは本能だけであった。
アルフレッドの魔力の流れから狙いを察し、本能は最善と思える形で対処した。
だからベアトリスの首は繋がっていた。
本能はベアトリスの右腕を動かし、折れた槍で振り下ろされたアルフレッドの刃を受け止めた。
しかし力が入らない姿勢。対するアルフレッドは体重を簡単に乗せられる振り下ろし。
ゆえに止められない。止められるわけが無い。
折れた槍を振り下ろされる刃にぶつけただけ。そのまま押し切られる。
だから本能は頭も同時に動かした。
折れた槍と刃がぶつかり合った個所に、頭を押し当てたのだ。
上から押される槍を頭で下から支える形。
この形であれば押されるにしても頭が連動する。
あとは首のほうに刃をずらされないように、槍を握る手と頭を支える首に力を入れるだけ。
だが、奇跡のようなこの防御でも無事では済まなかった。
刃はそのまま振り下ろされ、
「っ!」
ベアトリスの頭は勢いよく地面に叩きつけられた。
「……!!」
そして揺れる視界の中で、緩慢な感覚の中でベアトリスは感じ取った。
脳内の重要な経路が一時的な機能不全に陥ったことを。
意識が途切れる! ベアトリスは虫と精霊を使ってそれに抗ったが、
「……」
間に合わなかった。
ベアトリスの瞳から光が消える。
それを感じ取ったアルフレッドは叫んだ。
「終わりだッ!!」
叫びながら左手の刃を構える。
瞬間、
「!?」
背後に誰かが力強く着地した音が響き渡った。
その音に、ナイアラの体は反射的に硬直した。
屋根上、または二階から飛び込んできた? そう考えられる着地音。
誰かはすぐにわかった。
(バーク……!)
またか、また邪魔をするのか。ナイアラは隠しもせずに怒りの言葉を響かせたが、その裏では冷静に思考を重ねていた。
約四歩の距離。
バークの姿勢は右手を前に置きながら体を真横に向けた半身の構え。
その右手に魔法の球は無い。
ならば、後ろ手に隠されている左手には?
その答えはすぐに判明した。上空にいるドラゴンから報告が入った。
その手にはあった。爆発魔法が。
そしてやはりバークの心は読めない。
しかしバークにもこちらの心は読めていないはずだ。
ならばこれは速さ比べということか?
同時に動いてどちらが先に一撃を叩き込むかという勝負ということか?
それならばこちらが有利だ。
こちらは精霊の群れを背負っているのだから。
少し触手を伸ばすだけで触れることができる。こちらのほうが手数は多い。
ならば、予定を変える必要は無い。
このまま左の刃を振り下ろし、ベアトリスにトドメを指す。
そして右の刃をバークに向かって使う。
当然、精霊も同時に攻撃する。
そして強力な爆発魔法は使えないはず。ベアトリスまで巻き添えにしてしまう。だからわざわざ降りてきたのだ。
ならばたとえ爆発魔法と相討ちになるとしても、こちらが派手に吹き飛ぶことは無いはず。ベアトリスに致命傷を負わせられる可能性は十分に高い。
やはり、こちらが圧倒的に有利!
それを確信したナイアラはアルフレッドの体を動かした。
首を狙った一撃だった。脳裏に焼け付いた映像からそれがわかった。
ベアトリスの目と理性はその速さに追いつけなかった。情報と結果を遅れて知る形となっていた。
ゆえに対処できたのは本能だけであった。
アルフレッドの魔力の流れから狙いを察し、本能は最善と思える形で対処した。
だからベアトリスの首は繋がっていた。
本能はベアトリスの右腕を動かし、折れた槍で振り下ろされたアルフレッドの刃を受け止めた。
しかし力が入らない姿勢。対するアルフレッドは体重を簡単に乗せられる振り下ろし。
ゆえに止められない。止められるわけが無い。
折れた槍を振り下ろされる刃にぶつけただけ。そのまま押し切られる。
だから本能は頭も同時に動かした。
折れた槍と刃がぶつかり合った個所に、頭を押し当てたのだ。
上から押される槍を頭で下から支える形。
この形であれば押されるにしても頭が連動する。
あとは首のほうに刃をずらされないように、槍を握る手と頭を支える首に力を入れるだけ。
だが、奇跡のようなこの防御でも無事では済まなかった。
刃はそのまま振り下ろされ、
「っ!」
ベアトリスの頭は勢いよく地面に叩きつけられた。
「……!!」
そして揺れる視界の中で、緩慢な感覚の中でベアトリスは感じ取った。
脳内の重要な経路が一時的な機能不全に陥ったことを。
意識が途切れる! ベアトリスは虫と精霊を使ってそれに抗ったが、
「……」
間に合わなかった。
ベアトリスの瞳から光が消える。
それを感じ取ったアルフレッドは叫んだ。
「終わりだッ!!」
叫びながら左手の刃を構える。
瞬間、
「!?」
背後に誰かが力強く着地した音が響き渡った。
その音に、ナイアラの体は反射的に硬直した。
屋根上、または二階から飛び込んできた? そう考えられる着地音。
誰かはすぐにわかった。
(バーク……!)
またか、また邪魔をするのか。ナイアラは隠しもせずに怒りの言葉を響かせたが、その裏では冷静に思考を重ねていた。
約四歩の距離。
バークの姿勢は右手を前に置きながら体を真横に向けた半身の構え。
その右手に魔法の球は無い。
ならば、後ろ手に隠されている左手には?
その答えはすぐに判明した。上空にいるドラゴンから報告が入った。
その手にはあった。爆発魔法が。
そしてやはりバークの心は読めない。
しかしバークにもこちらの心は読めていないはずだ。
ならばこれは速さ比べということか?
同時に動いてどちらが先に一撃を叩き込むかという勝負ということか?
それならばこちらが有利だ。
こちらは精霊の群れを背負っているのだから。
少し触手を伸ばすだけで触れることができる。こちらのほうが手数は多い。
ならば、予定を変える必要は無い。
このまま左の刃を振り下ろし、ベアトリスにトドメを指す。
そして右の刃をバークに向かって使う。
当然、精霊も同時に攻撃する。
そして強力な爆発魔法は使えないはず。ベアトリスまで巻き添えにしてしまう。だからわざわざ降りてきたのだ。
ならばたとえ爆発魔法と相討ちになるとしても、こちらが派手に吹き飛ぶことは無いはず。ベアトリスに致命傷を負わせられる可能性は十分に高い。
やはり、こちらが圧倒的に有利!
それを確信したナイアラはアルフレッドの体を動かした。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる