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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(10)
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奴はまたすぐに隠れようとするはずだ、ナイアラはそう思っていた。
が、
「!?」
直後に新たな爆発音が響いた。
ほぼ同時に目撃したという報告が届いた。
発見されたから抵抗した?
(いや、)
違う。目撃の報告は爆発音の後だった。
見つかる直前に先手を取ったのだろうか?
そんなことを考えているうちに爆発音が再び響いた。
しかも一発では無い。
何発も連射している。手当たり次第に攻撃しているという感じだ。
街そのものを破壊し尽くすような勢い。
ゆえに発見の報告が次々と届く。
もう隠れるつもりは無い?
自身に攻撃を集中させてベアトリスの安全を確保しようとしている?
それならば好都合。
(だが――)
何か違和感がある。ナイアラはそう感じた。
(やつの目的はそれだけでは無いような――)
どうしてそう感じる? 高速演算によってナイアラは自身の心の中を整理検索し、その答えを探した。
そしてそれは間も無く見つかった。
(そうか! 船か!)
爆発音が、発見の報告が船のほうに近づいているのだ。
奴はベアトリスを守るついでに船も破壊しようとしているのだ。
もしかしたら、隠れた目的は狙撃では無く、船の破壊工作のためだったのかもしれない。
ならば声を上げないわけにはいかなかった。
「奴を船のところに辿り着かせるな!」
これは頼りない部下どもだけに任せてはおけない、そう思ったナイアラは叫ぶと同時に走り出そうとした。
が、直後、
「あなたは行かせないし、逃がさないよ!」
ナイアラの前にベアトリスが立ちふさがった。
これに対し、ナイアラは怒りを隠すこと無く叫んだ。
「鬱陶しいぞ! ベアトリスッ!」
◆◆◆
「……っ!」
銃声と共に弾丸がバークの体をかすめる。
直後、かすめた弾丸とすれ違うように放っておいた爆発魔法が銃兵に炸裂。
その爆風を目くらましとして利用しつつ、別の路地に入る。
だが敵の足音が離れない。
完全に感知されている。再び隠れることは不可能。
ゆえにバークは走りながら牽制と目くらましの爆発魔法を投げ続けた。
はっきり言ってマズい状況であった。
しかしやむを得なかった。あそこで手を出していなければベアトリスはやられていた。
だから後悔も迷いも無い。
しかし問題はこの後。
船の破壊自体は自分の爆発魔法ならば容易に可能。
だが、船の周囲に遮蔽物が無いのだ。
そして全ての船に銃兵達が配置されている。それを感じる。
確実に銃撃されるだろう。
しかしこうなった以上、突撃するしかない。
銃撃に対して防御魔法は刹那の盾にしかならない。
しかし手はある。
爆発魔法を連射し続け、衝撃波の壁を作り続けるのだ。
それでも弾丸を弾き返せるとは思えないが、防御魔法よりは信頼できる。
バークはそう考えながら両手の中に爆発魔法を生み出し、最後の路地に走り込んだ。
が、
「!?」
直後に新たな爆発音が響いた。
ほぼ同時に目撃したという報告が届いた。
発見されたから抵抗した?
(いや、)
違う。目撃の報告は爆発音の後だった。
見つかる直前に先手を取ったのだろうか?
そんなことを考えているうちに爆発音が再び響いた。
しかも一発では無い。
何発も連射している。手当たり次第に攻撃しているという感じだ。
街そのものを破壊し尽くすような勢い。
ゆえに発見の報告が次々と届く。
もう隠れるつもりは無い?
自身に攻撃を集中させてベアトリスの安全を確保しようとしている?
それならば好都合。
(だが――)
何か違和感がある。ナイアラはそう感じた。
(やつの目的はそれだけでは無いような――)
どうしてそう感じる? 高速演算によってナイアラは自身の心の中を整理検索し、その答えを探した。
そしてそれは間も無く見つかった。
(そうか! 船か!)
爆発音が、発見の報告が船のほうに近づいているのだ。
奴はベアトリスを守るついでに船も破壊しようとしているのだ。
もしかしたら、隠れた目的は狙撃では無く、船の破壊工作のためだったのかもしれない。
ならば声を上げないわけにはいかなかった。
「奴を船のところに辿り着かせるな!」
これは頼りない部下どもだけに任せてはおけない、そう思ったナイアラは叫ぶと同時に走り出そうとした。
が、直後、
「あなたは行かせないし、逃がさないよ!」
ナイアラの前にベアトリスが立ちふさがった。
これに対し、ナイアラは怒りを隠すこと無く叫んだ。
「鬱陶しいぞ! ベアトリスッ!」
◆◆◆
「……っ!」
銃声と共に弾丸がバークの体をかすめる。
直後、かすめた弾丸とすれ違うように放っておいた爆発魔法が銃兵に炸裂。
その爆風を目くらましとして利用しつつ、別の路地に入る。
だが敵の足音が離れない。
完全に感知されている。再び隠れることは不可能。
ゆえにバークは走りながら牽制と目くらましの爆発魔法を投げ続けた。
はっきり言ってマズい状況であった。
しかしやむを得なかった。あそこで手を出していなければベアトリスはやられていた。
だから後悔も迷いも無い。
しかし問題はこの後。
船の破壊自体は自分の爆発魔法ならば容易に可能。
だが、船の周囲に遮蔽物が無いのだ。
そして全ての船に銃兵達が配置されている。それを感じる。
確実に銃撃されるだろう。
しかしこうなった以上、突撃するしかない。
銃撃に対して防御魔法は刹那の盾にしかならない。
しかし手はある。
爆発魔法を連射し続け、衝撃波の壁を作り続けるのだ。
それでも弾丸を弾き返せるとは思えないが、防御魔法よりは信頼できる。
バークはそう考えながら両手の中に爆発魔法を生み出し、最後の路地に走り込んだ。
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