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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(7)
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破壊の音と共に白い景色が続く。
この白い嵐が過ぎ去るころには全て終わっている、そう思えた。
が、
「!」
瞬間、ナイアラの表情は驚愕の色に染まり始めた。
終わってない、その事実を感じ取ったからだ。
直後にその事実は目の前に現れた。白の中から飛び出してきた。
その体には赤い線の数がさらに増えていた。
ベアトリスは嵐の中でも引かず、強引に突破してきたのだ。
そして攻撃態勢に入っている。
対し、ナイアラは先の技を繰り出した姿勢のまま。刃を突き出した態勢のまま。
(しまった、防御が――)
間に合わない。その言葉がナイアラの脳内で完成されるより早く、ベアトリスは槍を振るった。
型はベアトリスから見て左から右に抜けるなぎ払い。
目標は右側頭部。気絶狙い。
打ち込むには危険な個所。
強く打ちすぎれば死に至る箇所。
ゆえに、ベアトリスの表情は緊張に歪んでいた。
危ない、加減を少しでも間違えれば、そんな思いがベアトリスの脳裏を何度も走っていた。
しかしべアトリスの理性はその思いに抗うために何度も同じ声を上げていた。
こんな好機はもう二度と作れないかもしれない、と。
ベアトリスはその声に後押しされながら、
(これでっ!)
お願い、決まって、そんな思いと共に槍を振り抜いた。
赤い線から同じ色の飛沫を散らせながら一閃。
槍を持つ手に鈍い衝撃が走る。
その衝撃と共にアルフレッドの体は派手に吹き飛んだ。
「っ!!」
それを見たベアトリスの表情が歪む。
そして瞬間、脳裏にいくつかの言葉が走った。
こんなに吹き飛ぶほど力はいれていない、手ごたえがおかしい、つまり――
(防がれた?!)
認めたくないその言葉は、皮肉にも強く鮮明に脳裏を駆け抜けた。
どうやって防がれたのか、その映像も同時に脳裏に流れていた。
直撃の直前、ナイアラは首をすくめながら右肩を上げたのだ。
結果、槍は右肩上部に炸裂し、肩の上をなぞる軌道になった。
肩によって軌道を上に押し上げられ、受け流されたのだ。
同時に首をすくめていたことで頭部が下がっていた。ゆえに槍は頭頂部付近を撫でるような当たり方になってしまったのだ。
吹き飛んだのはナイアラが自ら地を蹴ったから。衝撃を少しでも緩和させるためだ。
しかし一つの疑問があった。
その疑問をベアトリスは言葉にした。
(いやでも、あの手ごたえは、あの感触は――……そうか!)
理解すると同時に、ベアトリスは吹き飛んだアルフレッドを追いかける形で地を蹴った。
その理解は直後に正解であることが明らかになった。
受け身を取ったアルフレッドが歪んだ表情で右肩を押さえているからだ。
この白い嵐が過ぎ去るころには全て終わっている、そう思えた。
が、
「!」
瞬間、ナイアラの表情は驚愕の色に染まり始めた。
終わってない、その事実を感じ取ったからだ。
直後にその事実は目の前に現れた。白の中から飛び出してきた。
その体には赤い線の数がさらに増えていた。
ベアトリスは嵐の中でも引かず、強引に突破してきたのだ。
そして攻撃態勢に入っている。
対し、ナイアラは先の技を繰り出した姿勢のまま。刃を突き出した態勢のまま。
(しまった、防御が――)
間に合わない。その言葉がナイアラの脳内で完成されるより早く、ベアトリスは槍を振るった。
型はベアトリスから見て左から右に抜けるなぎ払い。
目標は右側頭部。気絶狙い。
打ち込むには危険な個所。
強く打ちすぎれば死に至る箇所。
ゆえに、ベアトリスの表情は緊張に歪んでいた。
危ない、加減を少しでも間違えれば、そんな思いがベアトリスの脳裏を何度も走っていた。
しかしべアトリスの理性はその思いに抗うために何度も同じ声を上げていた。
こんな好機はもう二度と作れないかもしれない、と。
ベアトリスはその声に後押しされながら、
(これでっ!)
お願い、決まって、そんな思いと共に槍を振り抜いた。
赤い線から同じ色の飛沫を散らせながら一閃。
槍を持つ手に鈍い衝撃が走る。
その衝撃と共にアルフレッドの体は派手に吹き飛んだ。
「っ!!」
それを見たベアトリスの表情が歪む。
そして瞬間、脳裏にいくつかの言葉が走った。
こんなに吹き飛ぶほど力はいれていない、手ごたえがおかしい、つまり――
(防がれた?!)
認めたくないその言葉は、皮肉にも強く鮮明に脳裏を駆け抜けた。
どうやって防がれたのか、その映像も同時に脳裏に流れていた。
直撃の直前、ナイアラは首をすくめながら右肩を上げたのだ。
結果、槍は右肩上部に炸裂し、肩の上をなぞる軌道になった。
肩によって軌道を上に押し上げられ、受け流されたのだ。
同時に首をすくめていたことで頭部が下がっていた。ゆえに槍は頭頂部付近を撫でるような当たり方になってしまったのだ。
吹き飛んだのはナイアラが自ら地を蹴ったから。衝撃を少しでも緩和させるためだ。
しかし一つの疑問があった。
その疑問をベアトリスは言葉にした。
(いやでも、あの手ごたえは、あの感触は――……そうか!)
理解すると同時に、ベアトリスは吹き飛んだアルフレッドを追いかける形で地を蹴った。
その理解は直後に正解であることが明らかになった。
受け身を取ったアルフレッドが歪んだ表情で右肩を押さえているからだ。
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