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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(6)

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 何を試すつもりなのか、それは思念で伝えられた。

「!」

 その内容に思わずベアトリスは身構えた。
 簡単な対処法はあった。
 初動を潰すというものだ。
 潰すだけでは無い。逆に相手の力を利用して反撃できる。
 が、

「……っ!」

 ベアトリスにはできなかった。動けなかった。
 それを確認したナイアラはその技の名を高らかに叫んだ。  

「ではいくぞ! 重ね大十文字十三連ッ!!」

 ベアトリスの目の前で十字が次々と描かれ始める。
 これはこんな近距離で使う技では無い。
 十三枚の十字が重なる前に槍をねじこみ、魔力を放出する。それだけで対処できる。相手が描いた十字を逆に利用して大規模の嵐を放てる。
 しかしそれをやると確実にアルフレッドが死ぬ。
 だからベアトリスにはできない。
 ゆえにナイアラは、

「フフ、フハハハハ!」

 高らかに笑いながら十三の十字を描き切った。
 間も無く重なり、歪み、渦を描きながら広がって嵐と化す。
 それはまさに白い津波。
 これに対し、ベアトリスは逃げずに踏み込んだ。一筋の影を残して飛び込んだ。一瞬だがそう見えた。
 そして間も無く音が響き始めた。
 それは白と白のぶつかり合いによる炸裂音。
 その炸裂音と共に、白い津波の中に数瞬だけ影が滲んだ。
 刃を避けつつ、槍を振るうベアトリスの影。
 引かずに凌ぎきる、そんな意思が感じ取れる形の影。
 その意思を感じ取っていたナイアラは心の叫びを響かせた。

(必死に抵抗しているな、ベアトリス!)

 同じ高速演算を行っていなければ聞き取ることができない早口言葉。
 その早口言葉の裏に、もう一つの言葉が響いていた。
 だがそれが限界か? と。
 そしてナイアラは続けて叫んだ。

(ならばダメ押しといかせてもらおう!)

 次の瞬間、アルフレッドの技の名が白の中に響いた。

“白中白・白露ッ!(はくちゅうはく・しらつゆ)”

 その名と共に白い津波の中に円が浮かんだ。
 それは防御魔法の輪郭。銀色の円。
 その円の輪郭がはっきりとした直後、円の中心から新たな輝きが生まれた。
 防御魔法を突き破ってきた二刀、その先端からあふれる魔力の輝き。
 その輝きが強まると同時に円は輪郭を失った。
 中心の二刀に吸い込まれ、収束する。
 そしてその収束は間も無く限界を迎え、爆発するように開放された。
 白が広がり、白が重なり、場を色濃い白で塗り直す。
 その白に抗うように、一瞬だけベアトリスの影が浮かんだ。
 影は瞬時に白で塗りつぶされ、そして滲んだ赤も直後に白く覆い隠された。
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