Iron Maiden Queen

第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(4)

　叫びと共に振るわれた二刀が十字に交差。
　直後に銀色の十字が交差点からねじれ、渦となる。
　その渦の中に飛び込むようにアルフレッドは踏み込んだ。
　渦が乱れ、光の刃の濁流と化す。
　されどアルフレッドの体は傷つかない。
　刃の濁流がまとわりついているが、その身に赤い線は引かれない。
　まさにカマイタチを身にまとった状態。
　その刃の鎧を押し当てようとするかのようにさらに踏み込む。
　これに対し、ベアトリスは逃げの一手。
　ベアトリスは迎撃しようと思えば出来る。
　剛の一撃で身にまとっている鎧ごと吹き飛ばすことができる。
　しかしそうすれば確実にアルフレッドも無事では済まない。
　ナイアラはその思考を読んでいた。
　ゆえにナイアラは笑った。

（わざわざ忠告してやったというのに、距離を取ったな！　愚か者め！）

　その愚かさと共に死ね、そんなナイアラの思念と共にアルフレッドの技が響いた。

“白中白・穿破一閃ッ！（はくちゅうはく・せんぱいっせん）”

　穿ち（うがち）、破る、その名が示す通りにアルフレッドは動いた。
　踏み込みながら二刀を突き出す。
　前に伸びるその刃に吸い込まれるように、カマイタチが収束する。
　アルフレッドが身にまとっていた白い刃が二刀にまとわりつく。
　まるで白い渦が二刀を包んだかのように。
　そして腕が伸び切り、二刀が止まる。
　その瞬間、ナイアラは魔力を爆発させた。
　二刀が眩く輝き、魔力がほとばしる。
　その軌跡は線。
　突き出された勢いのままに魔力が伸びる。
　その伸びる線をなぞるように、追いかけるように渦は前に進みながら収束した。
　後光を背負うように身にまとっていた白が一点に収束し、全てを塗りつぶすように広がった、ベアトリスからはそう見えた。
　その広がった白の中心にあるのは、より眩しい白。
　その全ての白がベアトリスに同時に襲い掛かった。