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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(2)
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思ったよりは粘れている、善戦している、ねじれた巨人はそう思った。
あくまでも粘れているだけ。進行が遅くなっているだけで、結果は予想通りの方向に進んでいる。
しかしなぜだ? なぜ粘れている?
理由はすぐにわかった。見た通りだった。
相手の戦い方が雑になっているからだ。
もとから雑だったが、今はさらにひどくなっている。
(いや、それは――)
なにか違う。ねじれた巨人はそう思った。
しかし近い。そう感じた。
だからすぐに答えに気づくことが出来た。
(そうか、これは――)
雑になっているのでは無く、劣化しているのだ。
こいつはまだ準備ができていないのだ。
地上の環境に完全には適応できていないのだ。だからその巨体の大部分を海中に沈ませたまま戦っているのだ。
もしかしたら、それでも苦しいのかもしれない。水圧差にも適応できていない可能性がある。
無理も無い。あれほどの規模なのだから。
自分はもとは地上の者だ。だから適応できている。その技術を持っている。
奴も技術自体は持っているかもしれない。しかし理由がなんであれ間に合わなかったのだ。
それでも、我に対抗するためにその劣化する姿を見せるしか無かったのだろう。
ならば希望が見えてくる。我と奴の間にある差は思ったより大きく無いのかもしれない。
(しかし――)
それが分かったところで、それを利用して上手く立ち回ったとしても、この戦いの結末はもう変わらないだろう。
重要なことは、この粘りで稼げる時間をどのように使うかだ。
だからねじれた巨人はこの戦いのあとのことについて思考を巡らせ始めた。
負けた場合の備えは既に用意してあった。
今の時代は裏の手が多すぎる。展開される物量と情報戦がここまで激化すると完璧な筋書きなど描けない。そんなものはおとぎ話に出てくる万能なる神の領域だ。
ゆえに「全てを賭ける」などという思考はありえない。
ナイアラだけでは無い。全員がそうしている。何事にも保険をかけている。
ゆえに大勝利をおさめて覇権を手にしたとしても、それは一時のものだ。問題は手に入れたあとだ。
ナイアラはそんな考え方の上に思考を積み重ねていった。
船によるアルフレッドの離脱という選択肢はまだ残っている。
むしろそちらの可能性はより色濃いものとなった。
防御に徹すればより粘れる。この巨体を盾にすることは可能。アルフレッドや手下の人形どもを船で逃がす手は狙うべきだろう。
(だがそうするには――)
排除すべき邪魔者がいる、そんなことを考えながらねじれた巨人は意識をベアトリスのほうに向けた。
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