Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

文字の大きさ
上 下
370 / 545
第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(1)

しおりを挟む
   ◆◆◆

 偶然と気まぐれと運命の収束点

   ◆◆◆

 生物が長い時と共にその形を変えていったように、魂の在り方も太古の時代では違っていた。
 されど自然の摂理は今と何も変わらない。強い生物が支配していた。
 魂においてもそれは同じだった。現代において神と呼ばれるような圧倒的な存在がいた。
 しかしその者達は現代では残っていない。
 みな絶滅してしまった。
 地球上の生物のほとんどが死に絶える大絶滅と呼ばれる現象。それが地球上では何度も起きていた。
 初の大絶滅の原因は惑星同士の衝突によるものだった。
 しかし次の大絶滅を引き起こしたのは地球上の生物、植物の先祖だった。
 光合成を行う細菌が圧倒的多数となってしまったことが原因だ。
 地球上の二酸化炭素が激減したことで、それに依存していた生物が死に絶え、その死に絶えた生物達が生み出していたものが地球上から消えた。
 その連鎖によって空気の組成が変わり、引き起こされた環境変化によって植物の先祖も自滅した。
 そして生物は一からやり直すこととなった。
 生物はそのような大絶滅を、やり直しを何度か繰り返した。
 みな本能的であった。
 望むがままに食べ、好き勝手に増える、ただそれだけであった。
 周りのことを意識できるものはいなかった。全体を管理する能力のある生物など存在しなかった。
 だがある時、危機感を覚えたものがいた。
 それは上から眺めていた。ある大絶滅を空から見下ろしていた。当時の神と呼ばれる存在だった。
 だからぼんやりと思った。
 今回は自分は巻き込まれなかったが、次はどうだろうか、と。
 だから思った。
 これまでとは違う能力を持った生物が必要だと。
 大きいのでも、筋力が強いのでも、魔法力が強いのでも無い、これまでとはまったく違う可能性を持った存在が必要だと。
 そう思ったそれは行動を開始した。
 その者に名は無い。名前という概念がまだ存在しない。そんな思考と言語能力を有する生物が存在しない。
 しかし今の知恵ある生物がその者のことを知れば、きっとこう名付けるだろう。
「大工の神」と。
 そして長い時を経て人類は誕生した。
 だが大工の神はもういない。次の大絶滅を生き残ることが出来なかった。誰もその存在を知ることは無い。
 されど、もしも大工の神が生き残っていて、今の人類を見ればきっとこう思うだろう。
 この者達ならばもしかしたら、と。
 どんな試練でも乗り越えてくれるかもしれない、と。
 きっとそう思うだろう。
 しかし一度の大絶滅を乗り越えた大工の神ですら知らないことがあった。見落としていたことがあった。
 ある隕石と共に、部外者がやってきていたことだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...