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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十二話 Deus Vult(主はそれを望まれた)(22)
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ベアトリスと視線を交えながらアルフレッドは命令の内容を考えていた。
それを感じ取っていたベアトリスは声を上げた。
「仕掛けてくる!」
どう仕掛けてくるのか、ベアトリスは声を上げながら心で伝えた。
アルフレッドは次のように考えていた。
お前達二人にはただのドラゴンの攻撃では通じない。
もっと広く柔軟で、おびただしい攻撃でなくてはならないだろう。
では――こういうのはどうだろう?
アルフレッドが何を思いついたのか、それは直後に目で理解できる形で始まった。
ドラゴンが形を失い、どろどろに溶け始める。
液体となって薄く広がり、地面の染みになるように溶け込む、そう見えた。
しかしそうはならなかった。
直後にそのどろどろは意思を持ったかのようにうごめき始めた。
地面の上に薄く広がりながら波立つ。
まるでそこに小さな海ができたかのように。
その印象は正解であった。
うごめく波の中に、のたうちまわるイカの足が何本も見える。
見たことの無いおぞましい風貌をした魚も水面から飛び跳ねている。
確かにこれはおぞましいほどにおびただしい、バークがそう思った直後、
「行け」
アルフレッドは静かに命じた。
小さな海は激しくその命令に応えた。
荒くのたうちながらベアトリスとバークのほうに向かっていく。
かなり速い。ベアトリスはそう思った。
バークもそう思ったが、感じたのはそれだけでは無かった。
これは厄介だ、そう思っていた。
なぜなら、兵士も突撃してきているからだ。
武装は剣や槍など様々だが、問題はそこでは無い。
かなりの重装備。
弱い爆発魔法では吹き飛ばせない。だから厄介だ。
敵の狙いは単純。包囲攻撃による圧殺だろう。だからドラゴンを溶かして手数を増やした。
しかしいくら数が増えようと、所詮は重さの無い魂の集まり。
爆発魔法を高速連射できる自分の敵では無い。
だが、重く硬い奴が混じるとなると話は別。
重い奴に接近されると、形成に時間のかかる大きい爆発魔法を使わざるを得なくなるだろう。
そうなるとあのうごめくものにやられる可能性が高くなる。
ならばどうするべきか。
解決できる手はある。すぐに一つ思いついた。
至極単純な手。
しかしこの戦いにはベアトリスもいる。足を長く止められるわけにもいかない。
だからバークは声を上げた。
「少し荒くいくが、問題は無いか?! ベアトリス!」
叫びながらバークはその内容を心の声で伝えた。
ベアトリスはその内容に対して即答した。
「いつでも!」
それを感じ取っていたベアトリスは声を上げた。
「仕掛けてくる!」
どう仕掛けてくるのか、ベアトリスは声を上げながら心で伝えた。
アルフレッドは次のように考えていた。
お前達二人にはただのドラゴンの攻撃では通じない。
もっと広く柔軟で、おびただしい攻撃でなくてはならないだろう。
では――こういうのはどうだろう?
アルフレッドが何を思いついたのか、それは直後に目で理解できる形で始まった。
ドラゴンが形を失い、どろどろに溶け始める。
液体となって薄く広がり、地面の染みになるように溶け込む、そう見えた。
しかしそうはならなかった。
直後にそのどろどろは意思を持ったかのようにうごめき始めた。
地面の上に薄く広がりながら波立つ。
まるでそこに小さな海ができたかのように。
その印象は正解であった。
うごめく波の中に、のたうちまわるイカの足が何本も見える。
見たことの無いおぞましい風貌をした魚も水面から飛び跳ねている。
確かにこれはおぞましいほどにおびただしい、バークがそう思った直後、
「行け」
アルフレッドは静かに命じた。
小さな海は激しくその命令に応えた。
荒くのたうちながらベアトリスとバークのほうに向かっていく。
かなり速い。ベアトリスはそう思った。
バークもそう思ったが、感じたのはそれだけでは無かった。
これは厄介だ、そう思っていた。
なぜなら、兵士も突撃してきているからだ。
武装は剣や槍など様々だが、問題はそこでは無い。
かなりの重装備。
弱い爆発魔法では吹き飛ばせない。だから厄介だ。
敵の狙いは単純。包囲攻撃による圧殺だろう。だからドラゴンを溶かして手数を増やした。
しかしいくら数が増えようと、所詮は重さの無い魂の集まり。
爆発魔法を高速連射できる自分の敵では無い。
だが、重く硬い奴が混じるとなると話は別。
重い奴に接近されると、形成に時間のかかる大きい爆発魔法を使わざるを得なくなるだろう。
そうなるとあのうごめくものにやられる可能性が高くなる。
ならばどうするべきか。
解決できる手はある。すぐに一つ思いついた。
至極単純な手。
しかしこの戦いにはベアトリスもいる。足を長く止められるわけにもいかない。
だからバークは声を上げた。
「少し荒くいくが、問題は無いか?! ベアトリス!」
叫びながらバークはその内容を心の声で伝えた。
ベアトリスはその内容に対して即答した。
「いつでも!」
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