Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十二話 Deus Vult(主はそれを望まれた)(17)

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 ナイアーラトテップはねじれた頭でそんなことを考えながら、状況をもう一度見直した。
 こちらの精霊はアザトースの精霊を圧倒している。
 押し返し、やつの体に食らいついている。
 やつに何かしらの対抗手段が無ければ、このまま押し切れる。
 その事実はナイアーラトテップをさらに興奮させた。
 ナイアラはその興奮のままに心の中で叫んだ。

(技術の差は歴然! 見ればわかるほどに! 私は勝つべくして勝つのだ!)

 見ればわかる、それは確かにその通りであった。
 アザトースが生み出す精霊の造形は明らかに雑。戦いに特化した形にはまったく見えない。
 その雑さには理由があるとナイアラは考えていた。
 速さのためだ、ナイアラはそう思っていた。
 性能を犠牲にして生産速度を上げているのだ。
 しかしその犠牲を伴う生産速度をもってしても足りない。ナイアラのほうがやや速い。
 ゆえに歴然。技術差は圧倒的。
 だからナイアラは再び叫んだ。
 それは勝利を目前にした雄叫びであった。

“これは当然の結果!”

 もうナイアラは心の声を隠そうともしていなかった。
 ナイアラはそのまま叫び続けた。心の声を大きく響かせ続けた。

“私は今日まで積み上げてきたのだ! 犠牲を惜しむことも、失敗を恐れることも無く、努力を重ね続けてきたのだ!”

 ナイアラには欠点があった。
 それは利点の裏。虫の基本形が小さすぎるという点だ。バークも有する同じ欠点であった。
 ナイアラの場合は基本となる個々が大工と同等の大きさ。
 ゆえに、巨大なドラゴンなどを作るには大量の虫と時間が必要だった。
 ナイアラはその欠点を克服するために努力と試行錯誤を重ねた。
 幸いなことに参考にできるものはあった。
 爆発的な増殖力を有する微生物、菌などだ。
 個々は人の目には映らないほどに小さいが、数日で認識できるほどに増殖する。
 しかしそれを参考にしてもまだ遅かった。その数百倍の速度が必要だった。
 ナイアラはあきらめなかった。
 ひたすらに効率化と技術の革新を重ねた。
 そして気の遠くなるほどの時間を経て、ナイアラはついに今の力を手に入れた。
 その努力の結果がアザトースを圧倒している。
 ならば興奮しないわけが無かった。

“お前を潰したら次は本体だ! 貴様の肉の器を破壊して全てを終わらせてやる!”

 それはもはや勝利宣言と呼べる雄叫びであった。
 が、直後、

“君の気持ちはとてもよくわかるよ、ナイアラ。私も昔はそうだった”

 劣勢にもかかわらず、アザトースはいつもの調子で声を響かせた。
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