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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十二話 Deus Vult(主はそれを望まれた)(16)

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 その返事を合図にベアトリスは加速した。
 完全な全力疾走でバークの前を走る。
 その走りに、バークは息を乱すことなくついていった。
 ベアトリスが目の前を走ってくれているおかげであった。
 ベアトリスが壁になってくれているおかげで、風による抵抗がほとんど無くなっているからだ。
 そしてベアトリスはバークがついて来れていることを確認しながら、ねじれた巨人に意識を向けていた。
 もう巨大光弾は撃ってこないはず、そう踏んでいた。
 この距離だと光弾が着弾する前に私達がアルフレッドのところに辿り着ける。
 アルフレッドが巻き添えになる可能性があるから撃ってこないはず。その証拠に港町の乱戦に対してはいまだに一発も撃っていない。
 そのベアトリスの予想は直後に正解であることが明らかになった。

(やっぱり!)
 
 背中の両腕から放たれたのはドラゴンだけであった。
 ドラゴンとの距離に注意しながら走り続ける。
 すると間も無く、潮の香りが鼻の中で目立つほどに濃くなってきた。
 その中には血の匂いも混じっていた。
 戦いの気配が濃くなり、戦闘音が耳に響き始める。
 そして直後、それはついに視界に入った。
 剣と刃がぶつかり合い、魔法と銃弾が交錯する戦場。
 その戦場に向かって宣戦布告するようにベアトリスは声を上げた。

「このまま突撃します!」

 同意見であったゆえに、バークも直後に声を上げた。

「賛成だ! 足を止めずに押し通るぞ!」

   ◆◆◆

(……っ)

 ベアトリスを止められなかったことに対し、ナイアーラトテップは誰にも聞こえない舌打ちをしていた。
 しかし問題は無い、そう思っていた。
 そして興奮していた。
 なぜなら、

(……勝てる! 勝てるぞ!)

 アザトースに対して優勢に立っているからだ。
 アザトースを倒せばあとはどうとでもなる。 
 ベアトリスも他の邪魔者もすべて蹴散らし、アルフレッドの船を護送する。それで何もかも上手く終わる。
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