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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十二話 Deus Vult(主はそれを望まれた)(9)
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二体の怪物が、数多くの触腕が撃ち合いを始める。
次々と鳴り響く轟音が空気を。空を震わせる。
爆炎の赤が夕焼けのように広がっていく。
「「……!!」」
その凄まじさにベアトリスとナチャは意識を奪われた。
直後、そんな二人を叱咤するようにアリスの声が響いた。
「二人とも驚いている場合じゃ無いわ! あれを見て!」
アリスが示した方向に意識を向けると、そこには海岸に上陸したドラゴン達の姿があった。
ねじれた巨人が背中の腕から産み出した精霊だ。
アルフレッドを捕獲しようとしている部隊を撃滅するために放たれたと思われる戦力。
その数は多い。このまま放っておけば決着は見えている。
ゆえにアリスは叫んだ。
「行くしかない! 何があっても!」
その叫びにベアトリスは即座に応え、止めていた足を再び前に出した。
ここは高台。前方は崖。
しかし今のベアトリスの脳内に回り込むという選択肢は存在しなかった。
アルフレッドもここを通った。
というよりも飛び降りた。
だからベアトリスもそうした。
地を蹴り、崖から飛び出す。
そして体が落下による浮遊感に包まれると同時に、ベアトリスは輝く槍の先端を崖に突き立てた。
がりがりと崖を浅く削りながら減速する。
両足裏にも魔力を帯びさせて崖に張り付かせている。
少しでも気を抜けば足裏が浮いてしまいそうなほどの急斜面。
だからベアトリスは祈った。
どうか、無視してくれますように、と。
そう願うベアトリスの意識は、ねじれた巨人の背中に向けられていた。
先ほどまではドラゴンしか展開していなかった背中の手に、巨大な光弾が生み出されている。
その狙いがこちらに向けられている気がする。
どうか、違いますように、ベアトリスはそう願った。
が
「!?」
その願いは届かなかった。
発射された光弾の軌道は、明らかにこちらに向いていた。
直後にナチャが声を上げた。
「どうやら、楽に行かせてはくれないようだ!」
叫びながらムカデの精霊を大量展開。光弾に向かって放つ。
引っ張っているドラゴンを足止めして時間を稼ぐ作戦。
同時にベアトリスも蝶の精霊を展開。
崖下に先行させ、地形を調べさせる。
知りたい情報は間も無く手に入った。
直後に姿勢を変更。
減速のための槍を抜き、崖下に身投げするように上半身を前に倒す。
そしてベアトリスは崖の上をまるで地面のように走り始めた。
次々と鳴り響く轟音が空気を。空を震わせる。
爆炎の赤が夕焼けのように広がっていく。
「「……!!」」
その凄まじさにベアトリスとナチャは意識を奪われた。
直後、そんな二人を叱咤するようにアリスの声が響いた。
「二人とも驚いている場合じゃ無いわ! あれを見て!」
アリスが示した方向に意識を向けると、そこには海岸に上陸したドラゴン達の姿があった。
ねじれた巨人が背中の腕から産み出した精霊だ。
アルフレッドを捕獲しようとしている部隊を撃滅するために放たれたと思われる戦力。
その数は多い。このまま放っておけば決着は見えている。
ゆえにアリスは叫んだ。
「行くしかない! 何があっても!」
その叫びにベアトリスは即座に応え、止めていた足を再び前に出した。
ここは高台。前方は崖。
しかし今のベアトリスの脳内に回り込むという選択肢は存在しなかった。
アルフレッドもここを通った。
というよりも飛び降りた。
だからベアトリスもそうした。
地を蹴り、崖から飛び出す。
そして体が落下による浮遊感に包まれると同時に、ベアトリスは輝く槍の先端を崖に突き立てた。
がりがりと崖を浅く削りながら減速する。
両足裏にも魔力を帯びさせて崖に張り付かせている。
少しでも気を抜けば足裏が浮いてしまいそうなほどの急斜面。
だからベアトリスは祈った。
どうか、無視してくれますように、と。
そう願うベアトリスの意識は、ねじれた巨人の背中に向けられていた。
先ほどまではドラゴンしか展開していなかった背中の手に、巨大な光弾が生み出されている。
その狙いがこちらに向けられている気がする。
どうか、違いますように、ベアトリスはそう願った。
が
「!?」
その願いは届かなかった。
発射された光弾の軌道は、明らかにこちらに向いていた。
直後にナチャが声を上げた。
「どうやら、楽に行かせてはくれないようだ!」
叫びながらムカデの精霊を大量展開。光弾に向かって放つ。
引っ張っているドラゴンを足止めして時間を稼ぐ作戦。
同時にベアトリスも蝶の精霊を展開。
崖下に先行させ、地形を調べさせる。
知りたい情報は間も無く手に入った。
直後に姿勢を変更。
減速のための槍を抜き、崖下に身投げするように上半身を前に倒す。
そしてベアトリスは崖の上をまるで地面のように走り始めた。
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